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60歳の母、小笠原諸島で初1人旅をする

落ち着いた状態でこの記事は文章にしたいって思って、ここ何日かずっと推敲していました。

3,000文字の長めの記事ですが、もし良かったら読んでいただけると嬉しいです。

本題に入ります。


時は遡ること、お盆の前。

いつ帰省をするのか、という話をしていた時だったと思う。

母から送られてきたLINEを見て、私は目を丸くした。

「5泊6日で小笠原諸島に行くことになりました」

え、まじ…?

驚きすぎて、言葉を失った。

「一応、旅行会社のツアーだけど、予約は今のところ、私だけらしいけどね ☺️ 初めての船旅 & ひとり旅だから、どうなることやら😆」

え、待て待て、母氏。

唐突すぎやしないか。

ニコニコの顔文字を使ってる場合ではない。

うちの母、今年、還暦。60歳。

人生で初めての船旅。

人生で初めての1人旅。

家に置いていく父もどーするの?

いやいやいや、どっちもどっちで心配しかない。

「あすは1人旅にも慣れているし、また必要なものとか教えてね!」

止めるわけではない。

というより、私も海外1人旅やら、一人暮らしやら、散々自由にさせてもらっているので、全く止められる立場ではないけれど、

「教えるのは構わないけど、本当に大丈夫…?」

としか言えなかった。


お盆に実家に帰った折、母から旅行の詳細を聞いた。

日程は、5泊6日。

東京と小笠原諸島を結ぶ船は、週に1往復。

そのため、必然的に1週間滞在をする必要がある。

乗船時間は、片道24時間。

5泊6日のうち、最初と最後の1日は船泊になる。

そして、真ん中の4日は、
小笠原諸島の島々を回るというコース。

一応ツアーなので、現地では都度地元のガイドさんも同行してくれるらしいけど、
添乗員さんもいないので、自力で船に乗り、島に辿り着かないといけない。

「ハードすぎる」

というのが率直な私の感想だった。

私ですら、今までの1人旅でも6泊7日が最長。

もちろん楽しかったけれど、1週間となれば、かなり体力を使うし、緊張もするし、翌日は丸1日ホームステイ先で寝込んでいた記憶がある。

母も登山が好きだし、パートで働いたりもしているから、体力はそこそこあるだろうけれど、

「20歳の私の体力」と「60歳の母の体力」

いくらなんても同じにはできない。

1人旅って結構大変だよ…?

楽しんで行ってらっしゃいとは思うけど、本当に大丈夫…?

不安そうに尋ねると、母は言った。

「今がさ、1番若いから。死ぬまでに行きたいところには行っておこうと思ったんだよね」

小さい頃から自分の親の姿を見ていると、

「親はいつまでも若いもの」

と錯覚してしまうのは私だけだろうか?

「今でも気持ちは20代」って、たまに冗談を言ってるのは聞くけれど、

そうは言っても、身体は衰える。

私が生まれた時は30代だった親も、もう60代なんだよなって。

親が死ぬことを想像したくはないけれど、もし親に何かあったら、自分の力で生きていかないといけない年齢に私もなったんだよなって。

母は続ける。

「近場なら、もう少し歳を取ってからでも行けると思う。でも、東京と言えど、小笠原諸島に行くには往復で48時間の船旅だし、足腰がしっかりしているうちに行きたいって思ったんだよね」

その他、母自身で、小笠原諸島や船についても、旅行会社に問い合わせたり、インターネットで自分で調べたりしていることは話していてわかった。

まあ、確かに不安だし、通信機器も疎いし、おっちょこちょいな母ではあるけれど、

人当たりは良いので、困っても周りの人が助けてくれそうな気もする。

それに、決して多くはないパートの給料を少しずつ貯めたのなら、思いっきり楽しんできて欲しい。

「船の中ではネットが繋がらないらしくて、揺れがひどくて読書も難しいらしいから、Amazonプライムをスマホで見たいんだけど、使い方、教えてくれる?」

こうして、ようやく私は納得した。

「わかった。普通に映画を見ていたら、音も漏れるだろうからイヤホンも買ったほうが良いね。あと、私がロシアに行った時はシベリア鉄道の車中泊でスマホの充電はできなかったから、念のため、モバイルバッテリーも買おう」

•••

そして、後日。

母と一緒に買い出しに出かけた。

予定通り、100円ショップやスリーコインズ、家電量販店などを一緒にまわり、イヤホンとモバイルバッテリーを購入し、それぞれの充電方法も伝えた。

また、それ以外にも、荷物を減らし方や、取り出しやすいパッキングの方法など、可能な限り、私が自身の1人旅の経験から学んだことを伝えた。

•••

10月。

母は1人小笠原諸島へと旅立った。

実際に旅行中に送られてきた写真がこちら↓

加工無しでこの青さ🌊
カツオドリ。本州では見られないそう。
ウミガメを飼育している海洋センターに行ったらしい
歯ブラシでお腹を擦ってもらって気持ちよさそう😪
天の川

さすがにここには載せないけれど、

このほかにも、現地のガイドさんや他の旅行者の方々に撮ってもらったらしい、とても楽しそうな母の写真もいくつか送られてきた。

親切な人たちに巡り会えたんだな、と感謝した。

そして、天の川の写真を目にした時は、

私も思わず、「行ってみたい!!」と思った。

往復48時間の船旅も大変だったみたいだけど、パーソナルスペースは確保できるように、カプセルホテルのような部屋を選んだので、それなりに快適に過ごせたみたい。

こうして、5泊6日を小笠和諸島で過ごした母は、無事に帰宅した。

ちなみに、お留守番をしていた父も、母のことが羨ましいというよりは、束の間の一人暮らしをそれなりに楽しんでいたらしい。

お互いマイペースに楽しく過ごしているなら、娘としては何より。


翌週、母がおみやげを渡したいと言うので、一緒に都内でランチをした。

旅行から帰ってきた母の顔は、とても活き活きとしていた。

お互い午後から用事があったので、食べてすぐに解散になったけれど、

とにかく楽しかったんだな、っていうのはよくわかった。

•••

これは娘から見た意見だけど、

軽音でライブしたり、留学したり、1人旅でいろんなところに行ったり、行動的な私とは対照的に、

母はもっとおとなしくて、控え目なタイプかなと思っていた。

もちろん登山はするけれど、普段の休日はどちらかと言うと、家で読書をしたり、近所の公園を散歩したり、のんびりしている姿を目にするほうが多かったし、そういう過ごし方が好きなんだと思っていた。

だから、上から目線な言い方にはなるけれど、

今回、母が1人で無事に小笠原諸島から戻ってきたのを見て、

「おかん、やるやん」って、ちょっと見直した。

そして、私が家を出たことによって、ようやく「子育て」が終了して夫婦二人暮らしになったことで、母も母でようやく「母」という役割から少し解放されたのかな、とも思う。

「母役割」に縛りつけててごめん、って少し反省した。「娘」という立場上、しょうがない部分はあるけれど。

でも、1人の人間として、これからの人生は、もっと自分のやりたいことをやって、楽しんで欲しいなって、今は思う。


後日、私がパートナーと日光に旅行をした後、母に写真を送った。

そして、返事が来た。

「今度は、あすの番だね!〇〇くん(パートナー)連れて台湾行くんでしょ?楽しんで行ってらっしゃい!」

心の中で思った。

うん、おかんに負けないくらい

思いっきり、私も人生楽しむよ。

ちなみに、母の次の目標は、
来年か再来年に、
「カナダでオーロラを見ること」らしく、

「あすはカナダに半年間行っていたから、いろいろ教えてね」とつい数日前にもLINEが来て、

「待て待て、今度こそ、本当に大丈夫?🙄」
と私も口では呆れた雰囲気を出しつつ、

私の大好きな国に、母が行きたいと言ってくれてたことが、内心はちょっと嬉しいなって思ったり。

あと、エジプトのピラミッドも死ぬまでに見たいよね〜とか言っているけれど、

今の母なら、ちゃんと果たすだろうな、と思ったり。

「いつか行きたいね」という憧れではなくて、ちゃんとお金を貯めて実現しようとする姿勢は、我が親ながら、なかなかすごいなと思ったり。

そして、そんな母の姿を見て、

私もこれからもっといろんな経験をして、

いろんな人と会って、

いろんな国に行って、

良い人生だったって、最後は笑って死にたいなって思ったり。

大袈裟だけど、そんなことを胸に台湾旅行の計画を立てている今日この頃です。

皆さんは、死ぬまでに行ってみたい場所、見てみたい景色はありますか?

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