高校2年 秋④ボーイッシュなあの子の正体
無事、本番を終えた僕たちに残されたものは、残りの高校の舞台をひたすら観ること、だった。
この会場は海沿いの街で、僕らはまったく土地のことに詳しくはなかったのだけれども、
この街が地元である友人、秀才だいちゃんとホリジには、どこを観に行ったらいいとか、近所のスーパーとかラーメン屋とかいろいろ教えてもらっていた。
そんな彼らの舞台がついに始まった。
地元なだけあって、彼らの舞台の時には観客席に空きはまったくなかった。
2階まである大きなホールが完全な満席。
昨年、全国に出ているだけあるなと思った。
中身は、まさかの弱そうなヒーロー戦隊もの。
デフォルメされたわざとらしい動き。
異常とも言えるほど質の高いフォーメーションが組まれたダンス。
コミカルなストーリー。
笑いも、真面目なところも、動きの見せ方も、僕の思う"楽しい演劇"のすべてが詰まっていた。
これは、、、
悔しいけど完敗というしかない。
悔しい!
でも、やっぱ秀才たちはすげーな!と、仲間の活躍が嬉しくもあった。
彼らの舞台が終わって、よかったよー!と感想を伝えに行った。
彼らの横にメガネをかけたボーイッシュな女の子がいた。
女の子は僕を見るなり
「あ!朝の広場で練習してた子だ!」
と言った。
話を聞くと、広場のステージで僕らをじっと見ていた女子高生が、実は秀才チームの3年生でOGなんだそうな。
言われてみたら、確かにあの人だ!
急にめちゃくちゃ恥ずかしくなった。
さらに、このOGの方はなんと全国大会の時の幕末の舞台で主役の大久保利通を演じていた人だとわかった。
やばばばばばばばばばば!
僕の憧れの人ですやん!
こりゃ、たまげだー!
広場で見られた時、なんだあの地味メガネは。とか思ってマジでごめんなさいと、心の底からスライディング土下座したくなるほど反省した。
この先輩はあまり上下関係とかが好きじゃないらしく敬語もNGであだ名で呼んでくれとのことなので
早速オガと呼んで敬語も使わないようにした。
長年空手をやっていてガチガチの体育会系で育った僕にはかなりのハードルだったけど
それを飛び越えれるくらいフレンドリーでボーイッシュなパイセンに、僕は憧れと尊敬の目が収まることがなかった。
今どき、舌を出して"てへっ"とか言ったり、
連絡先交換しようとなって自宅の電話番号とPCアドレスを手書きで渡してくるところも
いちいち昭和っぽい感じがなんか面白くて、この大会の間にめちゃくちゃ仲良しになった。
メル友、ってやつができた笑
及川光博のペンフレンドという曲が好きだった僕は、ペンフレンド的な立ち位置のメールフレンドにテンション爆上がりだった。
結果発表の時がきた。
この年、ブロック大会に出場することが決まったのは
•秀才だいちゃんたちの高校のヒーロー戦隊もの
•県内で圧倒的トップの進学校がやったNODA MAP"泣いた赤鬼"
どちらも東京の超人気劇団の舞台をコンテスト用に再編して上演したものだった。
やっぱプロの脚本か〜!
僕らは優秀賞を受賞。
正直、難しいかもとは思いながらも少しだけ期待していた。
このメンバーでもっと舞台に立ちたかった。
ブロック大会行きたかった。
でも、気分は不思議と晴れていた。
やりきった。
やりきったら、負けてもこんなに晴れ晴れしてるもんだな。
やりきってよかった。
本当によかった。
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