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[FC岐阜 2-0 SC相模原]の試合を終えて(戦術分析編)

はじめに

岐阜県の岐阜メモリアルセンター長良川競技場で行われたFC岐阜とSC相模原の一戦は、2-0で岐阜に軍配が上がった。ともにリーグ戦3連敗中、岐阜は三浦俊也前監督が退任、横山雄次ヘッドコーチが新監督に就任。一方の相模原はチーム内に新型コロナウイルスの陽性者が複数人確認され、チーム活動が一時停止。約1ヶ月ぶりのリーグ戦と、お互いにチーム状態は悪い中で、迎えた一戦だった。前半早い時間帯に、今季リーグ戦初出場の本田拓也のロングボールから抜け出した山内寛史が落とし、最後は石津大介が左足を振り抜き、先制点を奪取。岐阜にとっては、実に5試合ぶりに先制点を奪うことに成功した。その後は両チームともにゴール前まで迫りながらも、守備陣が奮闘し、ゴールを破らせず。後半になると、さらに攻勢を強めたのは、相模原。岐阜陣内に何度も攻め込むが、最後まで岐阜が集中して守り抜いた。そして迎えた83分、サイドで山内が強さを見せると、庄司悦大の浮き球パスを収めた藤岡浩介が最後はゴールに押し込み、決定的な2点目を決めた。これで岐阜は4試合ぶりの勝ち点3を獲得した。
 
岐阜は中2日でホーム・ガイナーレ鳥取戦、その後また中2日で、天皇杯1回戦中京大学戦と連戦が続く。横山新体制となり、横山カラーが少しずつ現れてきた中で、厳しい連戦ではあるが、試合を通して、戦術を浸透させることができる。ここからの戦いも期待が高まる。

スターティングメンバーについて
[両チームのスターティングメンバー]

岐阜は三浦前監督の頃と変わらず、この試合は4-4-2を採用。GKに松本拓也。4バックの右に舩津徹也、そして左には橋本和がリーグ戦では今季初出場。センターバックには岡村和哉と藤谷匠。ボランチ2枚に柏木陽介とこちらも初先発の本田拓也。サイドハーフの右に畑潤基、左に藤岡浩介。2トップには石津大介と山内寛史が起用された。ベンチには、服部康平が今季初のベンチ入り。庄司悦大や宇賀神友弥、好調の村田透馬らもベンチに入った。
 
一方の相模原は3-4-2-1を採用。今季ここまで相手が4バックの場合には、相模原も4バックで対応してきたが、今季4バック相手には初の3バックで戦う。GKにはこの試合のゲームキャプテン圍謙太朗。3バックの右に渡部大輔、左に藤原優大。中央に鎌田次郎が入った。ボランチに田中陸と中原彰吾。ウィングバックの右に石田崚真、左に夛田凌輔。1トップに船山貴之が入り、2シャドーに浮田健誠と安藤翼が起用された。前線3人は流動的にポジションを変えていた。ベンチには古巣対戦となる中島賢星やゲームメイカーの藤本淳吾らが入った。

戦術面から試合を振り返る

監督交代後初のリーグ戦ということで、三浦監督時代の戦術を残しつつ、横山イズムを徐々に浸透させる段階だったが、この試合はチームとして連動した戦いが出来ていた。何より横山新監督になって表れた大きな違いは、試合中に修正することができている点だ。横山監督は常にピッチサイドに立って戦況を見守り、攻め込まれる展開が続くと、即時に修正する能力に長けた監督である。監督に就任してまだ日が浅いため、横山監督の目指すサッカーはまだまだ浸透していないが、1試合見ただけでも、これまでの3試合とは大きく異なるチームになることを存分に感じさせる試合となった。
 
【守備面】
まず守備面から分析すると、横山監督が試合前の会見で語っていたように、全員守備・全員攻撃の切り替えのところが、これまでの戦いから大きく改善された。守備時では、4-4-2のブロックをしっかりと組み立て、サイドでは、人数をかけてボールホルダーを潰し、サイドハーフとボランチの間のスペースを使われないように、ボランチの柏木と本田が良いバランスでディフェンスをしていた。
 
何よりこの試合は本田拓也の存在が大きかった。昨季同様にディフェンシブサードでの危険な芽はことごとく潰し、縦パスが入るタイミングではしっかりと対処していた。彼が中盤から両サイドにかけて、相手攻撃の芽を摘んだことで、相方である柏木にいい形でボールが渡り、柏木の持ち味である相手の意表を突くパスの供給につながった。後半開始から柏木に変わって、庄司が投入された中でも、本田は安定感抜群の守備を発揮し、疲れの出る終盤でも、サイドでボールキープした山内に対しても、近く でフォローに向かうなど、攻守において効いていた。
 
もう一人守備面において、個人的にこの試合影のMOMに選出したいのが、藤谷匠だ。ここ数試合自身のミスから失点に絡んでしまうことが多かったが、この試合で一気にその不安を断ち切り、監督の信頼を再び勝ち取るほどに素晴らしい出来だった。目立ったのが、岐阜が攻撃を仕掛けた後、相模原の持ち味でもあるカウンターにつなげようと前線に送ったボールに対して、しっかりと最前線のプレーヤーに対してマークにつき、ボールキープをさせなかった。さらに、単純にクリアするのではなく、マイボールにして再び攻撃につなげるチームの攻撃も助ける役割も担っていた。ゴール前でも最後まで身体を張り相手に良い体勢でシュートを打たせないように奮闘。6試合ぶりの完封勝利に大きく貢献した。

[岐阜の攻撃時の形]

【攻撃面】
攻撃面では、ここ3試合課題に感じていた点で大きく改善されたのが、横パスのパススピードだ。特に讃岐戦、藤枝戦で感じたセンターバック間でのパスのスピードが緩いことで、サイドに揺さぶっても、相手のスライドが間に合ってしまい、横から縦への攻撃がうまく機能しなかったが、この試合では、岡村⇄藤谷間でのパスが良いスピード感で回ったため、そこからサイドへの展開や効果的な縦パスが供給できていた。さらに、横パスに対してチーム全体のスライドも出来ていたため、これまでのように、選手間の距離が開きすぎることもなく、良い距離でボールを回し、近くに寄った選手に対して相模原がチェックに来た場合には、ロングボールでディフェンスの背後を突くパスと柔軟にパスの質を変え、攻撃を組み立てた。

この試合庄司がスタメン起用ではなかったこともあり、これまでのような攻撃時ボランチの一角が最終ラインに入り、ビルドアップに参加する形は取らず、同サイドへのフォローや裏抜けのFWにロングボールを供給する役割を担った。相模原が高い位置からプレスに来ない分、しっかりとセンターバックでボールを繋いだ。攻撃のビルドアップ時には、2トップの石津が低い位置を取り、4-2-3-1のような布陣を形成。山内がディフェンスの背後に抜け出し、収めたところで石津がフォローに向かう。先制点はまさにこの形だった。
 
後半攻め込まれる場面が多くあったが、チーム全体で粘り強く対応していた。そんな流れを変えたのが、やはり途中から投入された村田透馬だったと感じる。今季の村田は縦への仕掛けのタイミングや先に身体を入れる動き、ドリブルのコース取りが研ぎ澄まされていて、縦へドリブル突破をするとディフェンスも分かっていても、小刻みなステップで相手の隙を突き、ドリブルからチャンスを演出した。さらに、縦への仕掛けを感じさせながら、時にカットインで中央に入り込み、縦パスからチャンスを創出する。今季の村田はボールを受けてからの選択肢が格段に増えた。相手からしてみれば、かなり脅威な存在だろう。

さいごに

3連敗中、監督交代後初のリーグ戦ということで、何より勝利が欲しかった一戦で、苦しみながらも、随所に連動性・横山イズムが見られ、終わってみれば、2-0の完封勝利。勝ち点3が欲しかった岐阜にとっては、これ以上ない結果で終えることができた。ここから中2日で鳥取戦、天皇杯1回戦の中京大学戦と続く。厳しい日程ではあるが、良い感触を得た試合から短いスパンで試合ができることは、チームに新たな戦術を浸透させたい岐阜にとっては、プラスに働く要素が多いだろう。さらにここから5試合中4試合がホームで戦えることも、ホームのサポーターの後押しが確実に選手の力になるはずだ。


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