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信用経済をどう生きるか?(前編)

「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」


普段米国株投資について書いていますが、私自身は特に現在社会においては「お金」の重要性は相対的には低下してきていると考えています。

もちろん依然としてお金は価値交換において大きな力を持っています。ただし、数年ほど前から自分の仕事をしていく中での経験で徐々にお金を介した価値交換に対する限界を肌感覚で感じるようになってきました。

その違和感を上手く説明してくれているのが、山口揚平さんの「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」です。

この本はピカソの逸話を取り上げつつ、お金の役割や価値観の変遷についての新しい見方を提示してくれています。

お金を介した価値交換が中心となる「貨幣経済」に対して、ここで提示されるのが「信用経済」です。
この記事ではこの信用経済について最近考えている内容をメモ代わりに残したいと思います。

この本の概要


本書は生前に多くの富を築いた画家ピカソがどのように資本主義をハックしていたのかをエピソードを交えながら紹介している部分があり、それが本のタイトルにもなっています。
(ゴッホはほとんど出てきません。笑)

ですがピカソの紹介がメインではなく、この本の見どころは特に信用経済に焦点を当てている点です。

お金による価値交換が中心となる貨幣経済から信用をもとにした価値交換が中心となる信用経済へ移行しつつある現代で、私たちが幸せに生き抜くための新たな視点を提示している良書だと思います。

価値交換の形態

本書の中では様々な価値交換の形態が示されています。
それらを以下に簡単にまとめています。

1. お金でお金を殖やす(マネーゲーム)
これはお金を使ってお金を増やす方法で私たちが取り組んでいる株式投資もその一例となるでしょう。

私自身は、マネーゲームが良いか悪いという点はあまり問題ではなく、通貨価値の希釈化が進む中で、どこまで数字として増えたお金の価値が担保されるのかという疑問を持っているという立場です。

*アノマリーの記事でも述べているように、私自身は正しいか正しくないということをはっきりさせるよりも、実際にそれが役に立つかどうか(人生を幸せにするのに役立つかどうか)で物事を判断するプラグマティズムな考え方を多くの場面で適応しています。

2. 自分の価値をお金に変える(バリュー to マネー)
これは自分の持つ価値や強みによって他人や事業などに貢献し、その対価としてお金を得る方法です。この本の中ではこれを「マネタイズ」と呼んでいます。

単なる労働力以外にも様々な価値や強みを提示することで、色々な形でのマネタイズが現代では可能になっています。

3. お金を創る(クレジット to マネー)
これは信用創造やキャピタライズと呼ばれ信用(クレジット)をもとにお金を生み出す行為で、中央銀行が「お金を刷る」ことなどが典型的です。

またインフルエンサーのマネタイズ活動も「クレジット to マネー」の概念に非常に適している例と言えるでしょう。
インフルエンサーは自身のソーシャルメディアプラットフォームにおける信用(フォロワー数やエンゲージメントの質)を貨幣化しています。

このあたりから信用経済の要素が入ってきており、信用経済では「クレジット to マネー」は、従来の貨幣経済を超えて、信用自体が直接的な経済的価値を持つようになるという点で革新的だと言えます。
これにより信用が直接的な経済力として機能し、新たな経済活動や市場の拡大が可能になります。

ただし、お金が出口になっている点で「バリュー to マネー」「クレジット to マネー」も、まだ貨幣経済に軸足を置いている印象です。

4. お金を使わないで価値を交換する(バリュー to バリュー)
信用に基づく物々交換で、「非貨幣経済」とも呼ばれます。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上での不要品のやり取りや、ピカソがあるワインのラベルを描く代わりにそのワインを受け取った事例などが紹介されています。

畑で採れた野菜と海で釣った魚を交換したりするなどの物々交換もこれに該当することからも分かる通り「バリュー to バリュー」はなにも全く新しく出現した枠組みではありません。

これらの価値交換はまさに信用経済の中心と言えるものでしょう。

5. 信用でつながる新たなコミュニティを創る
この本の中で、これからの新しい世界に対応するための基本的な知恵として、新しい価値観のコミュニティを創るために信用の絆を広げることの重要性を説いています。

信頼関係に基づいて、価値の交換や直接取引を行うコミュニティが、信用経済の土台を形成します。

信用経済がなぜいま重要なのか?
4のお金を使わない価値交換や5の信用でつながる新たなコミュニティ作りが信用経済の中心となる概念です。
ただし、これらは全く新しい概念ではなく、従来から存在していた概念です。

しかし、お金を介するとお互いをよく知らずに信用の蓄積がなくても取引が可能となるという利点があるために貨幣経済が一気に広まり、信用経済が片隅に追いやられているのが現状だと思います。

言い換えるとお金は潤滑油としてあまりに強力すぎたので、商取引を始めとする人間同士の価値交換の背景にあるべきはずの信用があまりに軽視されていると言えます。

本書の中でも、従来の貨幣経済について、お金を手段ではなく目的としてしまうことや、お金によって人々の価値が一元的に評価されることで個人の幸せや価値観が軽視される傾向があるなどの問題点が指摘されています。

またお金がお金を生み、お金の価値の希釈化が進む現代においては再び信用経済に注目する必要が出てくることには納得できます。

これは自然にかえって物々交換をしようという意味ではなく、ピカソが行ったように貨幣経済に片足を置きながらも資本主義に上手く信用経済の要素を盛り込んでいこうというメッセージになります。

*このあたりについての著者の経験からくる思いについては本の中で熱く語られていますので、興味がある方はぜひ一度読んでみて頂ければと思います。

まとめ

「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」は、現代の不確実な経済環境で生き抜くためのヒントを提供してくれます。

お金は絶対的なものではなく、コミュニケーションツールの一つであるという視点から、信用の大切さを説いています。

まさに現代は貨幣経済から信用経済への過渡期にあります。
この変化に気づいて自分なりに信用経済の仕組みを自分の生き方に取り込んでいくことで、自由な生き方や新たな価値を生すことができると感じました。

長くなってきたので、前半はここで終了します。
今回は信用経済とは何なのかということ、現代は貨幣経済から信用経済への過渡期であることについて書きました。

ただ、実際にどのように信用経済を取り込んでいけばいいのかというとピンとこない方も多いと思います。
そこで後半では私が実際にどのような形で信用経済を自分の生き方に取り込んでいるかについて書きたいと思います。

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