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伊福が異変に気づいたのは夜も遅くなってからのことだった。 「俺に西口ができている?」 …
首都の空には視界をすべて覆い尽くす巨大な円盤が浮かんでいた。銀色の光沢がなめらかに張り…
神田から馬喰町へすっと抜けていく裏通りに並ぶいわゆる三軒長屋の一角で、朝からトントンと…
なだらかな丘陵に続く高原は、青々とした夏草にどこまでも覆われていた。丘の向こう側には山…
昼食代を払おうとしたところで、定食屋のおかみさんがとつぜんプッと吹き出した。この店には数…
営業三課の居室に戻ってきた飯尾は怪訝な顔をしたまま自分の席についた。 「どうした?」 奥か…
家電量販店の広い店内に陰湿な怒鳴り声が響き渡ると、買い物を楽しんでいた客たちは、驚いて首をすくめた。おもちゃ売り場で遊んでいた子供たちもピタリと動きを止める。 「あんたじゃ話にならん」 店の制服を着た女性に向かって、男が再びしわがれた声を上げた。声にあわせて弛んだ顎がぶるんと揺れる。でっぷりと太っているが、乾燥して粉吹いている肌に張りはなく、爬虫類の皮膚を思わせた。長く伸ばした顎髭は白く、どうやらかなり年配のように見える。 「いいから、上の人を出しなさい」 そう言って男
不動産屋の隣にある雑居ビルにはエレベーターがなかった。天豊建萌は息を切らしながら狭く急…
階段を上がって地上に出ると小雨がぱらついていた。 「あ、降ってるんだ」 思わず青谷凪亮…