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『絵本と自分探しの旅』

今日はちょっと違う角度から絵本のお話をしようと思います。

何度かお話ししていますが、私はロックダウンとともに、ボランティアで知り合いの子供達に読み聞かせを始めました。

しばらく続けているうちにあることに気がつきました。画面の中に子供は見えず、お母さんだけが座っているのです。最初のうちは子供は部屋のどこかにいるのだろうと思っていたのですが、ある日一人のお母さんが明らかに台所で料理中であるのに気づきました。

「こんにちは。そこは台所ですか?」と聞くと、
「娘は友達と遊びに行っちゃったんですが、私が聞きたくて料理しながら聞いてます。」と言うではないですか。

私はしばらくそのことについて考えていました。昨年九月からnoteを初めて、私自身絵本に与えられた影響を体験していたところでした。絵本を読んでいると、色々な状況が思い起こされます。ずっと忘れていたようなことも思い出します。それに伴って様々な感情も湧き上がってきます。興味深いのは、実際にその事象が起きた時の気持ちにもなれるし、その私を見ている今の自分の感情も出てきます。それを書き出していくと、その当時解決できなかった心の不満や混乱が緩んでいくような気がします。まるでぐちゃぐちゃになっていた毛糸の玉が少しずつほどけていくように。

もしかしたら絵本って石みたいに固くなってしまっている大人の気持ちを揉みほぐしてくれるのではないか、そう思って大人のための読み聞かせをして見ることにしました。去年の11月中旬のことでした。子供達の読み聞かせに来ていたお母さん達に声をかけました。二つ返事ですぐに五、六人のお母さん達が集まりました。

初回に読んだのは『はじめてのおつかい』でした。テーマは「人生最大のチャレンジ」。子供達に読むのと同じようにゆっくり、はっきり読みました。子供達に読むのと違っていたのは、読んでいる間とても静かだということでした。画面を切り替えて参加者の方々の顔を映すと、涙を流している方もいました。私は少し待ちました。すると皆さんが一斉にそれぞれが感じたことを話し始めてくれたのです。そのうちに話題は彼女達自身の体験に変わっていきました。その時の気持ちも含め、みなさん丁寧に話してくれます。このグループで集まったのは初めてなのに、そこにはなんとも言えぬ暖かい雰囲気が生まれていました。

一時間半はあっという間に過ぎ、まだまだ話足りないという感はありましたが、みなさんの顔が心なしかスッキリしていました。こうして私たちの心の旅が始まったのです。テーマは毎回変わります。怒ってばかりいるお母さんを持つ子供の話、大きなチャンスを逃してばかりいるのに気づいてもいない男の子達の話、一番とは人より優れていることではなく自分が一番好きなことと教えてくれる女の子の話などなど、絵本を通じて私たちは自分たちの態度を振り返ったり、価値観の違いについて見直したりしていくうちに、結局全ては自分自身に返ってくるということに気づきました。ともすると他人軸になってしまいがちだった人も、この読み聞かせを通じて「私はどうしたいのか」ということに重点が置けるようになって来たのです。

参加者の方々は言ってくれています。
「こんなに自分について集中して考えたことはなかった」
「自分の気持ちや考えをアウトプットすることの大切さを知った」
「今まで一人で悩んで来た問題を、先入観を持たずに聞いてくれる人達と共有できて嬉しい」
「週一回の私だけの時間」

絵本を通じての自分探し。私もまだこの旅の途中です。もしかしたら一生続くのかもしれません。なんと言っても「道」ですから。もしこれを読んでくださって、この旅に同伴してみたいと思った方、またはこんな旅を探しているお友達がいるというかた、私にメッセージを送ってください。次の集合地点のお知らせをします。

サポートしていただけるととても嬉しいです。いただいたサポートは、絵本を始めとする、海外に住む子供たちの日本語習得のための活動に利用させていただきます。