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4歳児が抜歯という登竜門に立ち向かった話。

先日。
うちの長男(4歳)が、前歯をケガしました。
四つん這いで爆走しながら車のオモチャを走らせていたところ、ツルッと滑って前歯と車がこんにちはしたらしい。
そりゃしょうがない。不可避です。

それが夕方の出来事だったので、ひとまず受診した歯医者では応急処置しかしてもらえず。
歯は折れていないけどグラついている、ひとまず隣の歯にくっつけて留まってるけど機能はしてない、という状態で帰宅。
長男も気になるらしく、その日の夜も翌朝も、まともに食事できませんでした。
これはいかん、もうちょっと何とかならんかしら?ということで、再び歯医者を受診することに。


歯医者に着いた。平常。
呼び出されて診察室に。平常。
促されて自分で診察台に。平常。すごい。
今度はレントゲン撮影。平常。すごい。昨日経験したから慣れている。
診察台に戻り、画像の説明。


もう根っこは歯茎に刺さってない、ほんとに隣の歯にくっついていてそこにいるだけ、このままだと揺れて歯茎に当たって痛いはず、なので抜いちゃった方が痛くなくてご飯も食べれると思います、子どもの歯は早めに抜いちゃっても歯並びとかに影響ないですよ……
なるほどわかりやすい。ちょっと彼は大変だろうけど、抜いてもらった方が良さそうだなぁ。と思っていた辺りで、異変が起きました。

「ゲェしたい」
※ゲェ=ゲロ吐くの意。


これまでは大人しく診察台に座っていたのだけど、身体を捻ってこちらを向いて、明らかに顔が引きつっている。
あぁ、これはちょっとマズいかも。
ひとまず抱っこして、トイレに急行。
ほら、ゲェしていいよ、大丈夫?と声をかけるも、抱っこから離れようとしないしゲェも出ない。
どうやら、とにかくあの場から逃げたくて、ゲェしたいと訴えかけてきたらしい。



じわりじわりと、彼の顔が歪む。


もうやだ、帰る、歯医者さん出る、怖い、明日にする、なんで帰らないの、パパ嫌い、怒る、公園行く、パウパトロール見る……

もーーーーーーーー心が痛い。

彼は訴えているのだ。
語彙を総動員して、「こう言えばパパが守ってくれた」という経験に基づいて、ここから逃がしてくれと。

でも、今回ばかりは守れない。なんなら無理にでも抜歯させてしまうことが、君を守ることになる。はず。そう自分に言い聞かせる。

見るに見かねたスタッフの方から、午後にも空きが1つあるので、時間を置いてクールダウンしてみたらどうか、というご提案。
ちょうどお昼休みの時間も迫っており、ご迷惑おかけするわけにもいかず、お言葉に甘えることにしました。

その後、マックに連れていき、ポテトを奥歯を使ってモソモソ食べ、ナゲットが食べられないショックに直面し、妻との電話に励まされ。


午後。彼もなんだかやる気になって、再挑戦。

診察台に座る。平常。
唇と歯の間にワタを挟む。ちょっと怖そうだけど、まだ平気。
歯茎に麻酔の注射をする。かなり暴れるけど、ギリ平気。
しかし、この麻酔の注射がまーーーーーーーーーーーーー長い。いわゆる予防接種とかはもう一瞬だけど、体感そういうのの100倍かかった。たぶん子ども用に針が細くて、一気に注入すると圧がかかるからゆっくりにしか出来ないのでしょう。でも長い。子どもにとっては終わりなき恐怖。

麻酔も終わってここから本番いざ抜歯、なのだけど。
彼はもう限界。
泣き、身体をひねり、もうやだ、帰る、歯医者さん出る、怖い……

ここまで来たら引き返すはあり得ない。
もう一回やり直すとなったら、麻酔の注射からやり直しです。そんなんもう一度泣くに決まってます。

心を鬼にして、彼の身体を押さえる。
最終的には、僕と先生と助手さんの3人がかりで固定して、抜歯そのものは一瞬でした。


その後、もちろんしばらく泣き続けたのですが。
さっきは食べられなかったチキンナゲットを食べ。
ずっと欲しがっていた消防車のラジコンを買い。
すんなりご機嫌を取り戻してくれました。
帰りの車中はよく寝ました。よくがんばりました。

ちなみに、ここまで話に出てこなかった次男。
彼は兄が泣き叫ぶ中で悠々とオモチャで遊び、マックを食べ、兄のおこぼれでオモチャを買い。ただの優雅な休日を過ごしました。
次男は大物になります。


後日の深夜。
普段は寝たら朝までグッスリな長男が、急に身体を起こして泣き出しました。
「歯、やだ、歯、やだ、歯、やだ、やだ…」
彼の心に確かな傷を負わせてしまったんだな、と改めて突きつけられて、心がキュッとなりました。
抱っこしてあげたら一瞬で寝ました。

おしまい。

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