読書感想文『装幀のなかの絵』
アートディレクターという仕事を知ったのは、昔むかし働いていた店(日本の古布とアンティーク着物店)が本を出した時だった。
20年以上も前のこと。
この時一回だけの経験であり(私が関わったのはこの時のみ。店は以降も着物本を出している)現在とは違うだろう。
出版社の編集者、フリーのライター、カメラマン、そしてアートディレクターというメンバーが、本づくりのメンバーだった。
編集者は全体の構成を考え、スケジュールを組んだ。校正者や印刷所とのやりとり。
カメラマンは、スタジオで、ロケ地で、本に載せるものの撮影をした。
ライターさんと店員である私は、必要なところに文章を書き、写真にキャプションを付けた。
それぞれ出来上がった本の欠片はアートディレクターのもとに集められ、本という一つのかたちになった。
……………………
アートディレクターは、創りあげるものの総監督だと思っている。
作者の有山達也さんは、アートディレクターである。
『ku:nel (クウネル)』というマガジンハウスから出ている雑誌がある。
私はこの雑誌がとても好きで、熱心に読んでいた時期、アートディレクターは有山さんだった。
本書には、有山さんの仕事のありようが綴られている。
『クウネル』をはじめ、川上弘美さんや料理家の高山なおみさんの本など、私が好きなの本の装幀のお話が読めることにワクワクした。
印象深いのは、集英社文庫のデザインのお話。
「表紙」と「背」、双方とも大切ではあるが、文庫においては棚に並んでいる状態が長いことから
(平置きされる時間が少ない)「背」が重要だと説く。
何度読んでも嬉しくなる。
本が好きで、よかったな。
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