見出し画像

個性よりも「真面目」さを大事にしたら、商品が年間100万個も売れた話

千葉県と茨城県に店舗を展開するローカルスーパー「ランドローム」に、年間100万個も売れるすごい商品があると聞きました。

その名も「真面目シュークリーム」。

テレビのニュースで紹介されたこともあるので、「私も聞いたことがある」という方もいるかもしれません。

なぜ、そんなに売れるのか。
人気の理由は、その名の通り「真面目」に作ること。
各店舗で1つひとつ、しっかりと手づくりで、コツコツ丁寧に作っているそうです。クオリティも高く、お客さんの中には「人生で最高に美味しい」という人までいます。お値段もリーズナブルで1個108円。

このシュークリーム、あくまでローカルスーパーの商品開発担当者が考えたものです。
有名パティシエにレシピを依頼したわけでもなく、材料も普通で(地元産にはこだわっているそうですが)、莫大な開発予算が投下されたわけでもないようです。何か特別な個性や特長は、特に見当たりません。

お菓子作りの基本に立ち返って、手を抜かず真面目にきちんと作る。それだけで、お客さんは「価値」を感じてくれるのですね。

私たちは、「価値」というと何か特別なもののように思ってしまいます。
特に、新しい商品やサービスを企画立案する時に、次のようなことを考えてしまいがちです。

「どうしたら、他の商品やサービスと差別化ができるのか」
「自分たちの強みや個性を打ち出すには、どうしたらいいのか」

それを考えることは大事なことですが、無理矢理に個性を出そうとするあまり、かえって商品の魅力を下げてしまっては意味がありません。
例えば、今までにないシュークリームを作ろうとして、今まで使われたことのない奇抜な食材を使ってみても、消費者に支持されるかどうかといえば、難しいのではないでしょうか。
差別化の罠に陥ってしまうのです。

そういう時は、原点に戻って、この商品の良さとはそもそも何なのか。その良さを最大化するにはどうしたらいいのか考えれば、ポイントが絞れてきます。
無理に個性を演出するよりも、クリームの質や美味しさがこそが、消費者の求めているものだとすれば、そこを徹底的に真面目に掘り下げることが、価値を上げる一つのアンサーになり得るのです。
この場合「徹底的に」がポイントですね。

もう一つ、真面目シュークリームの人気の秘密があると思います。
自分たちの真面目さをさりげなくアピールしていることです。
私は、「真面目シュークリーム」というネーミングが秀逸だと感じました。

「真面目シュークリーム」という商品を見た人は、その名前に「おや?」と思うでしょう。
そこで店頭や口コミなどで、名前の由来を知り、食べてみて本当に美味しければリピーターになってくれます。
逆に、「クリームたっぷりシュークリーム」とか、「濃厚シュークリーム」という名前だと、ありがちな感じがしてしまいます。何より、その商品の最大の価値である「真面目」さに気づいてもらえないのではないでしょうか。

価値は伝えなくては伝わらないし、伝え方にポイントがある。真面目シュークリームはそんなことも教えてくれているように思います。

執筆担当:池田剛


この記事が参加している募集

編集の仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?