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ショートショートの部屋

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御三家

御三家

緑さんは人気者。結局私はいちばん慕っている。どこでも、誰とでも仲良くしているし、主張しないのに、認知度と存在感は抜群。つかず離れずで、いつでも助けてくれる。

以前はあげさん推しだった私も、今は大ちゃんがダントツでNo.1、なくてはならない存在。実は色白なのにたくましいところが萌える。しかも、誰にでも優しくて、できることなら一年中一緒に暮らしたい。

とんちゃんは、少しクセがあるが美容に詳しくて、

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先生は小学生

先生は小学生

私は放送関係の仕事で女性ながらに出世コースを歩み、バリキャリと呼ばれるような仕事人生を過ごしてきた。3月に退職したばかりで、仕事のない日々にまだ慣れない。

何十年も住んでいるこの家
日中の様子は正直知らなかった。

朝、庭の手入れをしていると、
いつも同じ時間に小学生が登校していく。毎日、家の前を通る小学生があいさつをしてくれる。しだいに挨拶をする仲になり顔を覚えていく。
下校の時なんかに会うと

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京ちゃんの金言

京ちゃんの金言

私の名前は笠井むつき18歳。この春、高校を卒業する。
私は、生まれてから自分の顔がダイキライだ。眉毛はゲジゲジ、目はギロギロしてて、鼻はツンツンしてて、気の強い女に見えてると思う。
JKなんてものとはほど遠くて恋愛もしてこなかった。正確にはできなかったんだと思うけど。
でも、友達はそれなりにいて、カラオケに行ったり、買い物に行ったりなんかもしてたし、プリクラだってみんなで撮ったりしてきた。でも自分

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真夜中の洗濯物

真夜中の洗濯物

23歳、家事手伝い。親のスネをかじって生きている。
両親は仕事の関係でフランスにいる。一緒にと言われてたけど、おばあちゃんが心配なのと、どうも外国というのは信用ならなくて日本に残っている。

おばあちゃんが心配で残ったんだけど、このおばあちゃん、なかなかハードで私を召し使いのように扱う。そんなおばあちゃんには、すぐに私の干物っぷりはバレてしまった。

「家事手伝いなんて嘘っぱちじゃないか!なんにも

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一六銀行

一六銀行

二十歳で家を出てふらっとたどり着いた街は、居心地が良くて、すぐに馴染んだ。

誰も知らない、干渉されないのが何よりも良い。

興味がないといえばそうだけど、なんとなくここにいる人達は私と同じ流れ者が多い気がする。

みんなが知らず知らず傷を舐め合っている…そう思ったら、少しだけ自己肯定感があがる。

この街に来てすぐ、求人の張り紙を握りしめて今働いている質屋に押しかけた。お客さんと顔を合わせなくて

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ラウンドアバウト

ラウンドアバウト

小学1年生の夏休み、近所のあきちゃんがイギリスに引っ越した。まあるい眼鏡の小さな女の子。
しばらくして、引越し先のイギリスからのエアメールにドキドキしたのを覚えている。

元気ですか?
私の友達はキャロラインとセーラです。髪の毛の色は金色です。
ロンドンの学校は9月からはじまります。

近況や、友達のことが書かれていて、いかにも外国人の名前が書かれていたことに本当にイギリスの友達がいるんだなと、胸

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