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〈「本」をめぐる旅①〉エホンゴホン堂@中軽井沢

「本」をめぐる旅--本屋をはじめた人に会いにいく。
という連載を始めます。
2023年は書店閉店のニュースが目についた年でもありました。
その一方で、地域に入り込んで、「本屋」を始める人、続けている人たちがいます。応援というにはあまりに微力すぎますが、旅のように本屋をめぐり紹介していくことで、次の出会いをアシストできないか。そんな気持ちで始めました。更新はゆるりゆるりです。あたたかな目で見守ってください。

絵本と緑と居心地の良い空間と


長野県軽井沢町。中軽井沢駅でしなの鉄道を降り、歩くこと15分。

豊かな緑に囲まれた「エホンゴホン堂」が見えてきました。

開店は2018年。以来、地域の皆さんの憩いの場になっている書店です。

さっそくお邪魔すると、店内入ってすぐの空間には雑誌や文庫本、そして雑貨などがにぎやかに並んでいます。

「こんにちは」

店主の平林さんが、温かく迎え入れてくれます。

「奥にもスペースがあるので、ぜひ靴を脱いでお上がりくださいね」

別荘を改装して作ったという店内。廊下を進むと、木の温もりが感じられる3つの部屋と広間がありました。どこもかしこも、子どもから大人まで思わず笑顔になるような楽しい本がずらり。

「当店は場所がちょっとわかりづらいので、観光客の方はあまりいらっしゃらない気がします。地元の方たちが、ふらっと寄ってくださる場所になっています。

取り扱っている書籍はすべて新刊。幅広い年齢の子どもたちが楽しめるように、いろいろな本を揃えています。絵本のほか、文学作品や人文書、図鑑、写真集など、たくさんのジャンルの本に出会えますよ」

平林さんは、もともとは出版業界とはまったく別の世界にいたそう。「子どもたちが読める本を買える場所をつくりたい」というひたむきな思いが、開業のきっかけでした。

「当時、軽井沢には書店がなかったんです。でも子どもたちには絵本をたくさん読んでほしいし、本を持つうれしさをぜひ知ってほしかった。だから思い切って一歩を踏み出しました。

本の仕入れには、まとまったお金がかかるもの。そんな事情もあり、最初はちいさくはじめました。

「まずは絵本を中心に、と思っていたのですが、気づけば大人の方もたくさん来てくださるようになり、工夫しながらラインナップを広げてきました。扱う書籍の冊数も増やしながら、今のスタイルに落ち着きました」

店頭の書籍は、すべて平林さん自身がセレクト。1冊ずつ内容を味わった上で並べています。

「時折お客様から、どの本を買ったらいいかと相談されます。忙しさにもよりますが、ゆっくりお話をしながら、お子さんやお孫さんに渡す本を一緒に選ぶこともありますよ」

店内中央の広間には、大きなテーブルがあります。ここは珈琲やジュースを飲みながら、購入した本を読むことができるカフェスペースとなっています。

「カフェスペースでイベントを行うこともありますよ。たとえば、あるテーマを決めて本を持って集まる読書会などを開催しています。お客様が集まり、つながれる場所になっています」

広間を活用し、展示を行うことも。この日は、壁沿いをぐるりと囲むように「藤岡拓太郎絵本原画展」が開催されていました(現在は終了)。

「展示やイベントなどの催し物は、こちらから声をかけたり、ご提案をいただいたりして決めていきます。展示を見るためにはるばる来てくださるお客様もいて、うれしい限りです」

展示を楽しんだあと、ふと窓の外に目をやると、いきいきした緑が揺れていました。

「気持ちいい景色ですよね。冬は遮る植物がなくなるので、窓からしなの鉄道が見えるんです。電車を見たくて遊びに来てくれる子もいますよ」

和やかな時間を堪能した私は、1歳半の甥っ子のために仕掛け絵本などを購入することに。お会計のために持っていったレジ近く、ふと目についたのは、ちいさな駄菓子のコーナーです。

「駄菓子は、子どもたちからとっても人気です。本じゃなくてこれを目当てに来る子も多いんですよ。何度も来てくれるうちに、次第に本に興味を示してくれることがあります。私にとって、とてもうれしい瞬間です」

この日はありませんでしたが、毎週木曜日には、軽井沢で人気のパン職人「bocco」さんのパンをレジ前で販売しています。「本を買う」以外の理由でも、何度でも足を運びたくなる書店なのです。

大人も子どもも楽しみ、くつろげる、優しさあふれる空間。穏やかな気持ちで、お店を後にしました。

たくさんの緑に見送られながら、中軽井沢駅に戻りました

※店内は、特別に許可をいただき撮影しました。

取材・ライティング:安岡晴香

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