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「差し障りの『ある』 会話をしてますか?」 名刺交換だけで終わる人の決定的勘違い

移住ブームといわれ、住む場所を自由に選ぶ人たちが増えています。彼らはなぜ移住を選んだのか。実際に「動いたひとたち」の言葉からヒントを探るポッドキャスト、佐宗邦威の「TRANSITION RADIO ー移住によるライフシフトを考える20分」

この記事では、その内容を一部ピックアップし、編集してお届けします。
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▶▶全編をチェックしたい方はぜひこちらからお聴きください!
🔊 ゲスト:光村 圭一郎さん(三井不動産ベンチャー共創事業部 )


■パーソナリティ佐宗邦威さんより
この番組では、軽井沢にベースを移した戦略デザイナーの私、佐宗邦威が、二拠点居住、多拠点居住など住まいを変えたゲストの方と共に、移住をきっかけにどのようなライフスタイルのトランジションを迎えていったのかお伺いしながら、新しいライフスタイルを見つけるヒントを探っていきます。
通勤や子育て、家事の合間にゆったりとした気持ちでお聞きいただけると嬉しいです。

■今回のゲスト
光村 圭一郎さん(三井不動産ベンチャー共創事業部)
早稲田大学卒業後、講談社に入社。「週刊現代」「週刊FRIDAY」で編集者を務め、2007年には三井不動産に入社。2012年より新規事業を担当し、2014年には日本橋・三越前の『Clipニホンバシ』開設に関わる。2015年に、新規事業としてベンチャー共創事業部を立ち上げ、2018年には、東京ミッドタウン日比谷に『BASE Q』を開設。大手企業のオープンイノベーションを支援するプログラムの提供をしている。

企業の”掛け算”で、イノベーションを起こす

佐宗:光村さん、今日はよろしくお願いします。光村さんと最初にお会いしたのは、もう10年近く前ですかね。確か、神山町で開催されていたキャンプに行ったときに…。

光村:ああ、そうか。あのキャンプが最初ですね。なつかしい。

佐宗:週刊誌の編集者からデベロッパーに転職されたということで、面白い人がいるなと思ったのを覚えています。
現在光村さんは、三井不動産のベンチャー共創事業部の統括をされています。きっと日本橋や日比谷あたりに住んでいらっしゃるのかなと思ってたら、最近Facebookを見て驚きました。あれ、もしかして雪国に住んでいるのかなって(笑)。

光村:そう、実は去年の秋から札幌のほうに本拠地を移したんですよ。家族の事情で引っ越す必要があって、会社に相談して。イレギュラーだけれども、会社から許可をもらい、リモートと東京への出社をかけ合わせて働いています。

佐宗:三井不動産というと“都市圏のイノベーションや場作りをしている会社”というイメージがありますが、光村さんは最近、どんなお仕事をされているんですか。

光村:東京ミッドタウン日比谷に『BASE Q』という場所があるのですが、そのプログラムの立ち上げから開発・運営を全部やっています。それが今のメインの仕事ですかね。
『BASE Q』のテーマは、日本の大手企業のイノベーションや新規事業の推進。僕自身、三井不動産という会社の中では「新規事業開発の担当者」という立場なんですが、同じような立場を持つ他の大手企業の方々に対して、新規事業やオープンイノベーションを立ち上げられるようにコンサル的にサポートしています。

佐宗:オープンイノベーションというと、2010年代は、企業間のコラボレーションが特に盛んだったような印象があります。あの頃と今とでは、状況は変わっていますか?

光村:まず、今も昔も共通しているのは、大企業だろうがスタートアップ企業だろうが、いろいろな掛け算を起こしていかないと新しい価値を作っていけないという点ですね。そうしないと、社会で起こっている複雑な課題に対して、うまく対応できない。

佐宗:うんうん。

光村:でも昔と変わっている点があって、今は、掛け算って大事だよねという共通理解が、かなり広がったと感じています。今課題になっているのは、じゃあその掛け算をどう進めていくかというところ。だからこそ私は、その支援を提供しているわけです。

業界交流で大事なのは「場」ではない

佐宗:新規事業やオープンイノベーションに関して言うと、コロナ前は「リアルイベントをやろう」「いろんな業界の交流をやっていこう」っていう流れがあったと思うんです。
でもコロナが蔓延してからはリアルな交流が減ってしまって、企業や人がつながりにくくなったのかなと思うのですが…。このあたりは実際、どういう感じになっていますか。

光村:二極分化しているなという印象です。コロナがあろうがなかろうが、交流をやる人はやっている。オンライン上の出会いでもなんでもいいから、どうにかつながりを持ちたいと思って探索している人も多いですよ。

一方で、コロナだからという理由でなにも動いていない人たちも当然います。そういう人たちって、言ってしまえば、コロナ前からそもそも本質的な出会いをしてたっけというところに立ち返るのかなと思うんです。リアルな交流の場があっても、単に名刺交換をしたり、会場をウロウロ散歩して終わったり、表面的なことしかできていない人なのではないかと。
その意味で僕が思うのは、オープンイノベーションを支えるためには場自体を作っていくのは確かに大事だけれども、もっと手前で、人材の育成というのが必要だと考えています。

佐宗:なるほど。

光村:不動産の私が言うのもなんですが、僕は「場所」自体はそこまで重視していないんですよ。出会いとか交流なんて、場所で限られるような話でもないと思ってるし。

それよりも大事なのは、ちゃんとコミュニケーションできること。自分が何をやりたいか、やらなきゃいけないか、そして何ができる人なのかっていうことをちゃんと理解して、自分で持ち込んでいくんだっていう姿勢と行動が、前提として必要です。だからそのための指導だったり武器を提供したいなと思っています。

佐宗:こう聞くと、光村さんって、あんまり不動産ぽくないですよね(笑)。

光村:はい。だからこそこの会社で10年近く、新規事業という立場でやっているんだと思います(笑)。

東京・札幌の2拠点生活がちょうどいい

佐宗:移住についてもお伺いしたいんですが、東京から北海道に移ってみてどうですか。ライフスタイルは変わりましたか。

光村:今は札幌駅から電車で10分くらいの円山エリアに住んでいますが、すごく過ごしやすいですよ。車で10分走ればたいていの必要な物が買えるし、30分走れば、もう全然違う景色のところにいける。札幌は人口200万人くらいの大都市ですが、東京で暮らしていた身からすると、語弊があるかもしれないけれど「コンパクトシティ」だなと。都市と自然のバランスがすごくいい。
スーパーで買える食材も、安いのにすごく美味しくて。東京にいる頃は外食ばかりだったのに、自炊を頻繁にするようになりました。

佐宗:ああ、わかります。僕も軽井沢に来てから自炊の頻度が上がりました。僕の周囲の人もみんな言ってますね。移住した人あるあるかもしれません。
光村さんは、東京にはどのくらいの頻度で通っているんですか。

光村:だいたい隔週で週3日くらい、月に6日くらい行きますね。

佐宗:東京にいるときと、札幌にいるときで、過ごし方は変わりますか?
僕は東京にいるときと軽井沢にいるときで、感覚がだいぶ違うんです。軽井沢にいるときのほうが、自分のペースで過ごせるというか。

光村:僕もそれに近い感覚かもしれません。東京にいるときは集中的に人に会うようにしているので「あれもこれもこなさなきゃ」という感覚です。でも札幌にいるときはリモート中心だし、通勤もないから少し余裕があって。夜の時間がしっかり取れるんですよね。

だからお酒を飲まずにクリアな頭で、本や映画に触れたり、運動したり。ゆったりと過ごしています。東京・札幌の2拠点があるこのハイブリッド感は、僕の中ではちょうどいいんですよね。

佐宗:すごくわかります。僕も週5で軽井沢にいると飽きるなって感じますから。

光村:やっぱり、どちらかに100%に振り切るっていうのは難しいですよね。

離れたことで、東京を発見しなおした

佐宗:移住を経て、ご自身の中で、価値観が変わったと思う瞬間はありますか。

光村:実はこの移住は、僕の人生の大きなきっかけになったなと感じています。私は東京で生まれ育ち、東京で働き、そして「東京を作る」という特殊な仕事をしてきた。こういう人生のなかで今回、おおよそ初めて東京を離れたわけです。

僕はずっと東京という街が日本の中で一番好きだし、世界の中でも一番好きな街だと思っていたけれど、ある意味それを疑うきっかけになったというか。

佐宗:東京を客観視できた?

光村:うん。札幌が暮らしやすいからこそ、あれ、東京って本当に暮らしやすい街だったっけと考え直すきっかけになりました。多分離れてみないと疑えないんだと思うんですよ。まあ、1年後とかにどう感じているかはわからないけれど。

佐宗:僕は東京に住んでいた頃は、情報疲れというか。たくさんの人に出会えるから出会うんだけど、なんだか疲れてしまうなと感じてました。

光村:わかる気がします。僕も今は、東京は巨大すぎるのかなって思っていて。人や物、そして情報が多すぎる。刺激が多いことは基本的に良いことだけれど、過ぎたるは及ばざるが如し。巨大すぎるのに、巨大なわりに交通整理がされてないから、カオスになっている印象というか。

だからこそ僕は今、東京という街の情報の「交通整理」をやることに可能性を感じています。

佐宗:交通整理、ですか。

光村:つまりは、コミュニケーションを最適化すること。先ほど情報が過密だとカオスになるって言ったけれど、じゃあ情報が少なければいいのかといえば、それも違う。ちゃんと整理されていれば過密がメリットになる。そのための働きかけをしたいんです。

僕は都市って、コミュニケーションを効率化するために作られていると思うんです。人が一定の密度で関わり、情報や意見、主張を交換して、異なるものをつなげていくために都市というものが生まれた側面がある。

佐宗:都市があるからコミュニケーションが発生するという順序ではなくて、その逆だと。

光村:僕は、人が情報を運ぶための場所として、都市を捉えているんです。だからこれからやろうと思っていることのひとつは、そういう都市に対しての交通整理。人が交わり交流するときに交通整理が働く余地は、まだまだあると思います。

「差し障りのある会話」ができる場をつくる

佐宗:具体的に、これからどんな方法で交通整理をしたいと考えていますか?

光村:「差し障りのある会話」をできるようにサポートしたいなと思っています。現状のコミュニケーションは、差し障りのない会話で終わることが多いと思っていて。たとえば名刺を交換して「お仕事は?」みたいな表面的な会話だけして終わり。翌朝名刺を見ても「この人って誰だっけ」となる。そんな経験を、みんながしていると思うんですよ。

そこを「差し障りのある」会話に変えたいなと。むしろだって、僕が佐宗さんと出会ってこうしてしっかりつながれたのは、最初から差し障りがある会話ができたからですよね。

佐宗:たしかに、そうですね。

光村:差し障りがある会話をしてはじめて関係性が生まれると思うんです。ただ、差し障りがある会話をするには、心理的安全性とか、それに基づいた正しい自己開示とか、そこに応じた議論とかが必要。その仕組みを作っていきたいですね。

必ずしもリアルな場のほうがいいとは限りません。「リアルの方がやりやすかった」というのはノスタルジーだと僕は思っている。むしろ、オンラインなら、そのあたりをデザインできるんじゃないかなと思います。

佐宗:オンラインだからこその、深い人間関係づくり、ですか。

光村:もちろん現状として、オンラインでの関係づくりがあまりうまくいっていないというのは認識しています。でもそれは、踏み込むための仕組みができていないせい。UI設計などを練れば、コミュニケーションの前提を変えていける余地があると思っているんですよ。
ここに関しては僕の中にいろいろな問いや仮説があるので、いろんな人と意見交換して発展させたいです。もし今回の話を聞いて面白いと思っていただける方がいたら、ぜひリアクションをもらえたらうれしいですね。議論してみたり、ちょっと何かを一緒に作ってみたり、動いていけたら楽しいだろうなと考えています。
(構成:安岡晴香)

光村さんには、他にもさまざまなトピックでお話を伺っています。ポッドキャストにて、ぜひ全編をお楽しみください。
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