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「もう、東京には戻れない」ーコルク・佐渡島庸平が<移住先>で見つけた次の時代の経営とクリエイティブのヒント

移住ブームといわれ、住む場所を自由に選ぶ人たちが増えています。彼らはなぜ移住を選んだのか。「動いたひとたち」の言葉からヒントを探るポッドキャスト、戦略デザイナー・佐宗邦威氏の「TRANSITION RADIO ー移住によるライフシフトを考える20分」

この記事では、その内容を一部ピックアップし、編集してお届けします。
(パーソナリティ佐宗さんが書き下ろした時間とトランジションのリアル! 『じぶん時間を生きる』 📕絶賛予約中です!)

▶▶全編をチェックしたい方はぜひこちらからお聴きください!
🔊 ゲスト:佐渡島 庸平さん(株式会社コルク 代表取締役社長)

■パーソナリティ佐宗邦威さんより
この番組では、軽井沢にベースを移した戦略デザイナーの私、佐宗邦威が、二拠点居住、多拠点居住など住まいを変えたゲストの方と共に、移住をきっかけにどのようなライフスタイルのトランジションを迎えていったのかお伺いしながら、新しいライフスタイルを見つけるヒントを探っていきます。
通勤や子育て、家事の合間にゆったりとした気持ちでお聞きいただけると嬉しいです。

■今回のゲスト
ゲスト:佐渡島 庸平さん(株式会社コルク 代表取締役社長)
2002年講談社入社。週刊モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉) などの編集を担当する。2012年講談社退社後、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。 従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテイメントのモデル構築を目指している。

​​■コルクがたどってきた偶発的な変化

佐宗:佐渡島さん、よろしくお願いします。

佐渡島:はい、よろしくお願いします。

佐宗:今日は佐渡島さんが福岡に移住されたお話も聞きたいのですが、移住の話の前に、佐渡島さんの会社ついて聞きたいです。

2012年にコルクを立ち上げられて、もう10年以上になりますが、コルクはこの10年間でどう変化してきましたか?

佐渡島:大きな変化を、2〜3年ごとにずっと続けてきましたね。世間的なインパクトはそんなにないかもしれないけど、僕の中では10年間ずっと違う仕事してたみたいな感覚です。

佐宗:そうなんですね。具体的にはどんな変化を経験してきたんですか。

佐渡島:初めはエージェント業を立ち上げようと思って開業したので、契約書を作って、出版社の人に納得してもらったりとか、そういう作業を3年続けました。

で、ようやく安定してきた頃、出版業界が一番の不景気を迎えていて。電子書籍が広がる前だったこともあり「このままじゃ、出版社と作家の関係がしんどくなるだろうな……」と思って。だったら作家が自分でファンコミュニティを持てるようにしようと思って、ファンコミュニティ作りを始めました。

佐宗:へえ。

佐渡島:それでファンコミュニティでグッズ販売をしてみたら、結構売上が立ったんです。だから組織を強くして、同時にもっと新しい作品を作ろうと動き出しました。

たとえば普通の見開きの漫画ではなく、縦スクロールで読める漫画の仕組みを作り出したり。次のヒット作に向けて挑戦しています。

佐宗:なるほど。何かを始めてみて、必要なことが見えてきて、またそれを始めて……みたいに繰り返しているかんじなんですね。

佐渡島:そうそう。僕は大雑把な未来予測はするけれど、次にこれが来るぞ、みたいな細かい予測はあんまりしないんです。やっているうちに見えてくるだろうし、自然な流れに身を任せることを良しとしています。

■あえて「言葉」では伝えない

佐宗:コルクという組織には、結構人がいますよね?

佐渡島:今、だいたい35人ぐらいですかね。

佐宗:佐渡島さんは社内のメンバーに対して、自分の目線や知見、ノウハウをどう共有していますか。

佐渡島:そういう組織のデザイン設計については、逆に佐宗さんに質問しまくってみたいところですけど(笑)。僕がこの10年かけて気づいたのは、僕の考えは社員に言葉では伝えないほうがいいってことです。

佐宗:言葉では伝えない?面白いですね。

佐渡島:言葉で伝えるのは無理なんですよ。だって、何か指示してしまったら、本人は毎回「あいつの言う通りにやらされている」って意識になるじゃないですか。まるで手柄を取られてるようで、楽しくない。

たとえば僕が「こう言いなよ」ってアドバイスしたら、それって逆に使いたくない言葉に変わっちゃうと思うんですよね。そこで僕は、言葉を社員の周りに散らしておこうって考えたんです。

佐宗:言葉を、散らしておく?

佐渡島:たとえば僕は世間に向けてというスタンスでブログで発信したりYouTubeを出したりしてる。でも実は、ぜんぶ社員に向けて喋ってる。社員には読んでとか観てとかは言わないけど、やっぱり見たいときに見てくれるものです。

そうやって伝わっていけばいいと思ってるから、この4、5年かけて僕は、社員の周りに僕の言葉とか動画とかをいっぱい置いておくようにしてきました。

佐宗:へえ。教育の世界では、何かを教えることより、たとえば色鉛筆とか画用紙がぱっと横にあるような環境を作っておくことが大事なんて言ったりしますが、そういう考え方に近そうな感じがしますね。

佐渡島:そうですね。やっぱり、コルクっていう会社の良さに気づいてきてくれた社員なんだから、必ず自分で学んで自分で成功にたどり着く力があると信じているんです。

仕事を楽しむためにコルクにやってきたのだから、その人のペースで必ず学んでくれるし、必ず自分の力で成功する。その機会を奪っちゃいけない。社員へのベーシックトラストを持つようにしています。

■「馬」と「子育て」が教えてくれたこと

佐宗:今の話は、環境からアプローチしようみたいなことだと思いますが、そう思われるようになったきっかけがあったんですか。

佐渡島:北海道に「ピリカの丘牧場」ってところがあって、そこでホースコーチングの研修を受けたんですよ。その研修がすごく良くて。

佐宗:ホースコーチング、ですか。馬?

佐渡島:そう。馬って、ミラーニューロンがすごい発達してて、こっちの気持ちを敏感に察知する。だから馬に歩み寄っていくことで、他者と向き合うときの気持ちの作り方がわかってくるんです。結果、人との関係にも変化が起きた感覚があります。ホースコーチングは本当におすすめなので、佐宗さんもぜひ行ったらいいと思いますよ。

佐宗:へえ、気になるな。

佐渡島:あとは、子育てを通して学ぶこともすごく大きいですね。会社のメンバーの場合は不満があっても僕には隠しますが、息子はまったく我慢してくれないので(笑)。

たとえば息子が何かに反発したとき、それを息子のわがままとするのではなく、もしかしたら、と考える。もしかしたら僕や妻が息子を自分たちの所有物のようにコントロールしようとしたってことが、原因としてあるのかもしれない。こんなふうに考えるようにしていると、人と関わるときの視点も変わりました。

■「福岡」という移住先としての特別性

佐宗:ここからは移住のお話を。2020年の秋ぐらいに、佐渡島さんがTwitterに「福岡に移住を決めた」みたいなことを投稿されていたのを覚えています。

そもそも、移住を考えられたきっかけって何だったんですか。

佐渡島:一番は息子たちの不登校です。息子たちが家にいて喧嘩しまくっていて、コロナで僕も家にいて、もう息が詰まって。しかも東京の街は歩いても本当に気持ちよくないなと思っていたし。もっと気持ちいいところに行きたいなと思ったんですよ。

佐宗:なるほど。それで、なぜ福岡に?

佐渡島:ほかにも候補はたくさんあって、札幌、仙台、名古屋、大阪といった地方都市、実家のある神戸、あとは三島とか、佐宗さんのいる軽井沢も検討しましたよ。ただ、僕はあんまり車が好きじゃないので、車移動がメインになる場所は嫌で。かっといって大阪とか京都も、交通の便はいいけれど、だったら東京のど真ん中のほうが全然いいしと思って。

最終的に実家のある神戸と福岡で迷ったのですが、移動のしやすさと自然の豊かさという点で、福岡に決めました。福岡なら、たとえば夕方から急な打ち合わせが入った場合にも、東京に出てこられる。しかも神戸より自然へのアクセスがいいのが魅力でした。

■家族ぐるみで付き合う雰囲気が面白い

佐宗:実際に住んでみて、変わったことはありましたか?

佐渡島:もうね、東京に戻れないです(笑)。

佐宗:ええ、そんなによかったんだ(笑)。

佐渡島:土日とかに東京にちょっと行くと、人混みがすごすぎて何じゃこれはってなりますよ。でも福岡で過ごす土日は、本当にリラックスできる。いつも糸島でゆっくりしてますよ。東京にいた頃は、土日に遊んでもどこも混んでて、平日よりずっと疲れると思ってたから、大違いですよね(笑)。

それに福岡は、外食の選択肢も多いですし。近くの飲食店を検索してみると、東京に住んでいた頃よりもずっとたくさんお店が出てくるんですよ。しかも、どこも本当に美味しい。

佐宗:いいなあ。最近はどのぐらいの頻度で東京に来ているんですか。

佐渡島:月のうち10日くらいは福岡、もう10日くらいは東京、残りの10日くらいはそれ以外の場所で過ごしています。東京に行くときは、主に人と会ってますね。リアルじゃないとできない案件をやりにいっています。

佐宗:ちなみに福岡で、地域のお友達はできましたか?

佐渡島:いろいろ知り合いは増えてきますね。せっかくだからもっと増やそうと思って、福岡で編集の学校をしたりもしているので。

佐宗:そういうところで会う人って、東京で会う人と違います?

佐渡島:人自体はそんなに変わりません。でも東京の場合、仕事の延長で出会っても、個人的な付き合いをしようとはならないじゃないですか。でも地方では私生活と仕事が密接。偶然スーパーとかレストランで、会うなんてこともあって、そうすると「今度ぜひ家に」みたいな話になったり、土日一緒に遊ぼうってなったりしますよね。

東京みたいに「仕事は仕事の人」と割り切った感じではなく、家族ぐるみでつながっていくのが面白いなと思います。

■移住したことで、社員とちょうどいい距離に

佐宗:移住したことで、会社のメンバーとの関係性は変わりましたか?

佐渡島:あんまり変わってないですね。でも、いい距離感になったかもしれないと思っています。

知り合いの社長がみんな言うんですが、会社経営って、20人から40人規模の会社が一番つらいそうなんです。たしかにコルクみたいな規模の会社だと、僕は社長としてではなく同僚気分で社員としゃべるんだけど、社員はそれを「社長の言葉」として受け止めるということが起こる。言葉の伝わり方が思った以上に強くなるので、バランスをとるのが難しいんです。もともと気をつけていたけれど、こっちに移住してきて、さらにちょうどいい距離になった気がします。

佐宗:なるほど。社員さんからしても、いないくらいの距離感で接するほうがちょうどいいかも、と。

佐渡島:そう。社長は不在ぐらいがちょうどいいですよ。

佐宗:最後に、これからの生活拠点をどう考えているのかお聞きしたいです。将来もずっと今のままがいいとか、また別のところに行くとか、イメージしていることはありますか?

佐渡島:やっぱり九州はいいですよ。九州の何が魅力かというと自然ですよね。阿蘇とか天草、別府など、素晴らしい場所がいろいろあります。

でもやっぱり福岡が便利だから、福岡に住み続けながら、九州をたっぷり味わうっていうのがちょうどいいかもしれないと思っています。

(構成:安岡晴香

佐渡島さんには、他にもさまざまなトピックでお話を伺っています。ポッドキャストにて、ぜひ全編をお楽しみください。
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