韓国、一国まるまる自転車道で突っ切れるサイクリスト天国
自転車旅111ヶ国目、初めての大韓民国。
韓国では、Google Mapsのルート検索ができない。
北朝鮮とは休戦中であって終戦はしておらず、国防上の都合だとか。
他の機能は使えるのに、どうして国防上ルート検索だけできなくなるのか、理由は不明。
「KakaoMap」と「Naver Map」ならフル機能で使える。
韓国は自転車道が網羅されており、いずれのマップでも自転車ルートを表示させることができる。
ただしいずれもオフラインだとルート検索できない。
仁川からソウル、ではなくまずは北朝鮮へ。
見かける車の9割ぐらいが、ヒュンダイかキア。
残りの1割が、ドイツ車など。
日本は韓国車が売れない国だとよく言われるが、韓国こそ見事なまでに日本車を排除している。
日本車を見かけない国なんて初めてだ。
ドライブマナーは非常に良い。
何よりも、クラクションが鳴らない。
これだけでもう合格。
すごい静か。
韓国の人口密度は、日本やフィリピンやインドよりも高い。
ミニ国家を除いてある程度のサイズの国としては、世界でもトップクラスの人口密度。
のはずなのだが、人気がなくひっそりとしており、店も少ない。
烏頭山(オドゥサン)統一展望台。
38度線。
川の向こうに見える北朝鮮。
ガランとした建物と、畑。
人間までは見えない。
東西ドイツは統一されたのに南北朝鮮は統一されない要因は、周辺国のロシア勢力に対する抵抗感の温度差だろうか。
歴史のいたずらで突然変異のごとく誕生した北朝鮮だが、今も昔も独裁が広く根づくアジアでは、民主化された韓国の方がむしろ異端として見ることもできる。
環境が激変して在来種が死滅した時、突然変異種が適応して生存することで種全体の絶滅を免れる、というのは生物の歴史ではよくあること。
どうなるかわからない未来のために、突然変異国家をストックしておくメカニズムが作用しているのかもしれない。
人間もまた自然の一部。
1910~45年の35年間、朝鮮半島は日本だった。
日本が敗戦したことで、米ソにより南北に分断。
もう80年近くになるが、分断されて離れ離れになったままの肉親や友人への思いもあるのだろう。
戦後、北朝鮮に呼び戻された在日朝鮮人もおり、その後戻って来ることはなかった。
首都ソウル。
ちょうどなんか儀式が始まった。
日本統治時代にインフラの基礎が整備されたこともあり、現在の街並みを見てもどうしても日本を思い出させる。
まあいろいろあって日本との比較は避けられない国。
文化としては儒教が根づく韓国だが、アジアではフィリピンに次いでクリスチャンが多い国。
エルサレムでも、韓国人巡礼者をたくさん見かけた。
日本が30年かけてジワジワと味わってきた衰退感が、中国や韓国ではここ数年で急激に押し寄せているようだ。
街は若者であふれているが、出生率は衝撃の0.72。
少子高齢化に関しては日本が世界に先駆けて突っ走っていたはずだが、韓国もまもなく超高齢化社会に突入し、数年で日本を超えるという。
数字を見る限り、台湾や香港も似たりよったり。
従来の予測がことごとくはずれているのでデータ以上に事態は深刻なのかもしれない。
移民文化(奴隷文化)を持たない我々東アジア諸国は、同じような道を歩み共倒れしていくのでしょうか。
もうどうにもならないようならこのままとことんイッたれ、と思ったりもする。
どこの国でも大都市から脱出するのに苦労するものなのだが、韓国では首都ソウルでも河川に出れば信号なしノンストップの自転車道、これはすばらしい。
韓国縦断自転車道。
2012年完成、仁川と釜山を結ぶ約600kmにおよぶ自転車道。
一国をまるまる自転車道で突っ切れるとは、この功績は称えるべし。
自転車道自体は他にも多数あるようだが、玄関口である仁川と釜山を結ぶルートを走ることができればシンプルでいい。
前半はしばらくは漢江(ハンガン)に沿って行く。
ほぼフラット。
東屋、ベンチ、トイレ、などの設備も点在している。
終始シンプルに続いていくルートというわけではない。
河川からはずれてちょっとした山道に入ることもある。
でもわかりやすいように標識や案内があるし、消滅することはないので心配無用。
世界各地にある自転車道の大半は、気持ち良く走っていてもしばらくするとしれっと消滅してしまう。
トンネルまでちゃんと自転車用になっている。
これはもともと線路だったのかな。
雨。
この公園でキャンプ。
街中の公園だと問題あるが、自転車道沿いの公園は人気もなく、大丈夫そうだ。
特に雨の日、東屋というものがどれだけ重宝することか。
スーパーはなく、補給はもっぱらコンビニとなる。
ガスもコンビニで売っている。
Tマネーカード等、独自のキャッシュレスが浸透しているが、外国人はカード払いでもほぼこなせるし、現金払いでもOK。
物価は非常に高い。
水道あり、ゴミ箱あり、きれいなトイレあり。
中に入ると、クラシックピアノのBGM。
バッハ「ゴールドベルク変奏曲」のアリアが流れてきて、ずっと聴いていたかった。
トイレットペーパーもあり。
韓国では、トイレにトイレットペーパーを流せる。
トイレットペーパーを流せる国は、世界で50ヶ国ほどらしい。
旅をしていて実感としては、流せる国の方がレア。
朝、5℃。
キャンプには適温。
よく眠れた。
山の方は雪が降ったようだ。
韓国の面積は日本の4分の1ほど。
人口は5151万人。
うち50%がソウル都市圏にいる。
ソウルから離れると、ウソみたいに田舎道が続く。
日本より人口密度が高いとはとても思えない。
異常なまでの一極集中。
そしてやはり、ソウルを離れると高齢者の方が多い。
超学歴社会、財閥社会。
いろいろやることが極端なようだが、国内の市場が小規模のため、ある特定のものを集中的に強化させて世界の市場で戦う、というのがこの国の生き残り戦略なのだろう。
その極端性がこの国を驚異的なまでに発展させてきたが、一方でその副産物として、世界トップの自殺率や世界最低の出生率という歪みを生み出している。
オーナーが自転車好きの宿。
屋内で靴を脱ぐ風習はアジアだけではない。
欧米でも数十軒の民家でお世話になったが、一般的なイメージに反して多くの家庭では靴を脱ぐ。
ただ、どの国の家も「この先は土禁ね」という明確なラインがない。
靴を脱ぐスペースがあり、明確に段差がつけられた「敷居」があるのは、僕の知る限り日本と韓国だけだ。
ドミトリーだが実質個室。
床暖房。
床が暖かければ分厚い布団も必要ないということか。
他の暖房器具をゴチャゴチャ置く必要もないし、温度調整もできるようだ。
セントラルヒーティングもすぐれた暖房システムだが、あれは温度調整ができないので暑い時は窓を全開にすることになる。
多くの国ではドミトリーは男女ミックスがけっこうふつうだったりするが、韓国はやはり日本と似ていて男女隔離の傾向が強い。
予約サイトを見渡していても「女性専用」というワードでいちいち弾かれる。
立派なキッチン&ダイニング。
なんと食パンや卵がフリー。
卵なんてしばらく食べてないな。
そしてなんとなんと、ここにあるラーメンやコーヒーがすべてフリー。
さらになんとなんと、オーナーがディナーをつくってくれる。
昔からずっと、キムチに唐辛子さえ入ってなければ僕も食べられるのに、と思っていた。
初めて知った、「水キムチ」という唐辛子なしキムチが存在するということを。
これでいいじゃん。
僕の他に、韓国人女性1人と韓国人男性1人の旅行客。
英語の通用度が非常に低い韓国だが、オーナーはベーシックな英語を話し、この女性は流暢な英語を話せる。
おかげでたくさん会話できた。
一番驚いたのは、韓国人でも辛いものが苦手な人がいるらしいということ。
ここにいた彼女も辛いものがダメで、辛ラーメンなんか食べられないという。
それでこの国で生きていけるのか。
翌日は丸一日、雨。
連泊。
ほぼ外出せず、部屋にこもっていた。
メンバーも変わらず、また一緒にディナー。
久々にまともにたらふく食えた。
オーナーに、「リョウさんのおかげで賞味期限間近の食料をたくさん片付けられたよ」と礼を言われた。
前半は漢江(ハンガン)沿いだったが、分水嶺を越え、後半は洛東江(ナクトンガン)に沿って行く。
岸に道をつくれないようなところでは、こんな長い橋。
韓国で自転車道の整備が行き届いているのは、地形はもちろん、都市部への一極集中により地方で有効活用できる土地が広々とあるためだろうか。
それだけでなく、政府や権力者の嗜好というのもある気がしてならない。
日本の道路の、自転車に対する嫌がらせとも思えるほど劣悪な環境は、居住に適さない山地が多く居住に適した平地に人口が集中しすぎて土地の活用が難しいため、だけではない気がする。
政界と建築業界の癒着によって道路がつくられる日本では、そもそも政治家も土建屋も自転車なんか乗らない、道路なんて車さえ通せばあとはどうでもいいだろ、という権力者の無配慮あるいは敵意が、道路環境ににじみ出ている。
権力者が自転車好きでなかったら、こんなデザインにするわけないよな。
やっぱり嗜好が伝わってくる。
所々に、フリーインフレーター。
金かけてるな、自転車道。
ありがたい限りです。
キバノロ。
角がない代わりに長い牙が生えてる、とても風変わりなシカ。
ものすごい勢いで逃げて行ったので牙は確認できなかった。
韓国では監視の目がないというか、小うるさいことを言われそうな気配がないのでキャンプも気楽だ。
それでも、キャンプは人目につかない場所に越したことはない。
茂みの中でひっそりと。
開花。
桜の季節をねらって来たわけではなく、たまたま偶然。
そもそも韓国にこんなにもたくさんの桜があるとは知らなかった。
釜山。
団地、団地、団地。
これだけ居住地を集中させれば、たしかに土地を有効活用できるな。
満開。
ちょうど釜山に着いた日に満開とは、歓迎されているようで光栄。
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