孑孑日記⑪ チャイニーズフードの鍛え方

 井上陽水の曲を聴いている。『LION&PELICAN』を頭からだ。「リバーサイド ホテル』が特に好きなのでこのアルバムもまたお気に入りのアルバムなのだが、収録曲のひとつに「チャイニーズフード」という曲がある。沢田研二がターンテーブルの中央に頭を出して歌っているMVを知っている人もいるだろう。あの曲である。異国情緒あふれる幻想的で甘いメロディが魅力だが、これの歌詞というのが、よくわからない代物なのである。
 一例を挙げれば、サビの「強い力で鍛えたチャイニーズフード」がある。「〜で鍛えたチャイニーズフード」はまだわかる。〜の部分に何か具体的な言葉が来れば、理解可能だからだ。しかし実際には、〜に入るのは「強い力」。いや抽象的っ!
 一体、この「強い力」とは、チャイニーズフードを鍛えられるそれとは何なのだろうか? まず間違いなく考えるのも野暮ではあるが、しかし、(チャイニーズフードを強い力で鍛えるとはどういう状況だ……?)と思わずにはいられない。強い力で鍛えられそうな食べ物を、私はピザの生地かうどんか餅かハンバーグくらいしか思いつかない。中華料理で強い力で鍛えてやれるものって何かあったか……? アホほど蒸したり焼いたりすれば、強い力で鍛えたことになるのだろうか?
 謎が謎を呼ぶ「強い力で鍛えたチャイニーズフード」であるが、結局は「みんなで食べる美味しいチャイニーズフード」なのである。だから本来、この曲を聴くときは意味を求めないで、「みんなで聴いてるおいしいチャイニーズフード」くらいの感じで、(何か美味しげな曲だなぁ)と思っておけばいい。ただそれをわかっていても、(強い力で鍛えたチャイニーズフードって何だ?)と思わずには、僕はいられなかったのである。

(2023.8.2)

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