見出し画像

猫物語

さほど気にしたことは無いが、人間って奴は我々を誤解している。
ニャアニャアとすり寄っているときは、可愛い、そして懐いていると思っているようだが、それは違う。
上司にへつらうサラリーマンのように、面従腹背しているに過ぎない。
実に甘い人間どもだ。
ニャーの一言で飯が食える。それくらいの軽いもんだ。

感謝なんぞこれっぽちも思わない。
飯をくれなければ、別宅の玄関でニャーとひと声かければ直ぐに婆さまがドアを開けてくれてご馳走を出してくれる。

俺は自宅の他に別宅を2軒持っているので飯に困ったことは無い。3軒とも留守ってことは一度も無かった。
一軒の家はカリカリしか出さんので緊急事態だけ行くことにしているのだ。
緊急事態とは他の2軒が不在の時だ。
仕方なくカリカリを食べる。いつもは缶詰の生の美味しいやつを食べるので、カリカリを食うときに頭蓋骨に響く音は不快極まる。

さて、無駄話はこれくらいにしよう。
そろそろ朝の巡回に出よう。最近、若い雄が出没するので油断ができない。俺のハーレムを犯す奴は許しておけん。
タマコとミケとシロは俺の正妻だ。
他にもチョコチョコ遊ぶ牝が数匹いるがしっかり数えたことは無い。
増減するので、どうでもよい。

人間どもは可愛そうだな、一夫一婦制なんちゃらで、浮気すら許されないそうだ。
古女房に財布を握られて、酒とタバコを買えば残らんそうじゃの。
そして家賃とか住宅ローンとか固定資産税まで取られるらしい。
俺はそんな金は一切取られない。
ま、金なんざ要らないし持ってない。
それでも冷暖房完備で飯付きの快適暮らしだ。

唯一の悩みはさっきも言ったように雄ネコが我が正妻を孕ませないように巡回監視をしなきゃならんところだ。

さて偉そうに言ってるが、野良猫じゃないのでゴミを漁るような下卑たことはしない。
英語では野良猫を何と言うかと飼い主の主人が調べたらしいが、Homeless Catと判明してアメリカの野良猫は日本よりも地位が高いようだと、しきりに感心しておった。
馬鹿じゃないかと思う。
しかしいつも美味しい缶詰めと食後にデザートのチュールをくれるのでニャアニャアと鳴いてズボンの裾に擦り寄るサービスは怠らない。
この主人はかなりの変人らしい、そして有名人らしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?