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#なんのはなしですか、が流行りそうなワケ


ある方、訴えた。

「世の中役にたつ話ばっかり蔓延してます。もっと意味のない話が増えても良いのではないか。」

実は、わたしもそう思ってる。

生きるに役立つ(であろう)話ばかり書いてるわたしが。

人を騙しちゃいけませんね、と詐欺師が言ってるような気もしますがほろほろ。



1.引っ越してちょっと変身


去年、退職して横浜あたりから関西に来た。

ここいらへんの人は、関西弁のみ。

濃厚な出汁のそば屋は、なし。

スーパーのレジ打ちのおばさんは、ゆっくり急ぐ。

いや、不満ではないです。二十歳の頃の友だちは、みな関西人だった。

いいんですね、西は。無視せず、ボケたら突っ込んでくれるし。

東は、競う、負けない、優位に立つ、正義とかいう感じ。

その東の男が解放され、ここに来た。突然、”川柳”にはまった。


 「こんな手をしてると猫が見せに来る  筒井祥文」

 「つむってるからどんな器具がつっこまれてるかわからない歯の治療  柳本々々」

 「歩いたことないリカちゃんのふくらはぎ  八上桐子」


おお、、何言ってるのかぜんぜんっ、分からない。

でも、素敵だ。しびれるぅ。見てみたい、猫の手!、ふくらはぎ!

 「嘘ばかり書いた手帳を持ち歩く 竹井紫乙」

 「いけにえにフリルがあって恥ずかしい 暮田真名」

 「着ぐるみの中では笑わなくていい  久保田紺」


とくに、この久保田紺にやられた。(亡くなられています。大阪の女性です)

 「あの人とはなんにもなかってんほろほろ」

 「笑ってしまった 許していないのに」

 「古本の同じところで泣いている」

 「傾いたままで結構走れます」

 「こんなとこで笑うか血ィ出てんのに」


いや、もう、、ほろほろしちゃう。


久保田紺は、おそらく全身全霊を込めた。西の根性を見せた。

川柳は、説明なんか何にも無いんです。

読み手が間を妄想で埋めるしかない。まあ、自由、なわけです。


もちろん、引っ越ししたぐらいじゃ人間性、変わりません。

東にいる時は、ずっと競う、比べるが忙しすぎ、鼻が詰まってたんでしょう。

で、何十年もやってた鼻詰まり仕事が無くなった。

こう成れば、これが満たされたら、きっとしあわせになるという筋書きもどこかに行っちゃった。

人と比較してはへこんで来た人生が忽然と消えた・・。

誰も何も期待しない存在となったのは、生れて初めての経験でした。想像できます?


で、夏の日の朝、セミの幼虫は地上に出て来て身を脱いだ。

わたしはお嫁さん以外をすっかり断捨離し、見知らぬ土地に行き、91歳のお義母さんを引き取った。

実際の話、どんな川柳でもしびれてるわけじゃないです。

ここに挙げた川柳は、句の前半と後半の間が一見、無関係だけど、

そこに意外感が起こるには、前後の間に何かの”関係性”が温存されているはずです。

久保田紺は、わたしが隠していた柔らかいところを突いて来るかのよう。

わたしは、ようやく自由の匂いを嗅ぎ始めたん?

わたしは、ありきたりなサラリーマン・ライフを薙ぎ払いたかったん?

予定調和、既定路線、蓋然性、必然性、まじめさ、常識、日本人の和に窒息しかかってたん?



2.波動拳、くらえーっ


今朝、テレビでデイブ・スペクターさんがへんだなって言ってた。

日本に旅行する人って、ネットで調べてからくるんだけど、それって旅じゃないんだよね、

それって確認しに来てるだけなんだよねって。


彼は、高校の時の友だちがたまたま日本人で、日本の文化にドはまりした。

で、大学は日本の大学にと決めてわくわくして来日し上智に入学した。

もちろん、当時はネットも無かったから、見るもの聞くもの、すべてが新鮮だった。

失敗もあったでしょうが、気づきも多かった。

確認では、体験にはならない。


でも、この世界は不確実性を加速している。パンデミック、戦争、温暖化がマジでやばい。

だから、今の日本、今の世界は、公式に身を寄せて安全担保したいという風潮なんでしょうか。

で、そこは以前から、関西人や川柳界は批判的なんでしょう。

こうして、一見意味の無い組み合わせで挑んでくるのですから。

波動拳、くらえーっ。


しかし、不思議です。

句の前半と後半との間に関係が無いのです。そんなんで、良いんかいっ!

ねこが手を見せに来たとして、で、いったいそれが何なんだと東は聞く。

もちろん、そこに、答えなんか無い。

でも、まったく無いわけでもなさそう、という境界を渡る。と、わたし、ほろほろしちゃう・・。


人がわざわざ川柳にしたのです。

やっぱり、無意味性を盾にして、生というリアルを問うたのでしょう。

挑まれたわたし(読み手)は、既存の公式が使えない。

価値観の転換を迫られる。

ああ、、詐欺犯のわたしに、それは新鮮だった・・。

ああ、、やっぱり詐欺なんてしてはいけませんのよほろほろ。



3.#なんのはなしですか、が流行りそうなワケ


なぜ、思い通りに行かないの?

いや、なぜ、周りの期待に応えたらいつか報われるはずだと決めつける?

なぜ、分かり合えないの?

いや、なぜ、分かり合えると期待し得る?

なぜ、押し付けて来る者がいるの?

いや、なぜ、好かれることを前提にして生きている?

なぜ、こころがへこむの?

いや、なぜ、他者と比べる?

なぜ・・・。


答えるより、問いを作る方が数学では重んじられる。

問いはとても、立てるのが難しい。答える、より難しいです。

どうしても書くのなら、「適正な問い」でないとならない。

でも、詐欺師たちは偉そうに答えばかりを書く。

「世の中役にたつ話ばっかり」指南しているんだけど、ちゃんと問いと向かってないのかもしれない。

答えを書きたがる者が混乱し続けていては、碌な答えも出ない。

冒頭の方は、きっと、「おまえ、碌でもないヤツだろ?」と詐欺師に言っている。

わたし、へへへ、というしかない。


「世の中役にたつ話ばっかり」症候群って、リアルに起こっていると思う。

これから来日する人たちに、親切なガイドばかりしているようなものでしょう。

ここが良いですよ、ここは危ないよと。

わたしたちは、いかにも正解があるかのごとく振舞う。

でも、「世の中役にたつ話ばっかり蔓延」してるって、異常です。

直接の体験を阻害するって、大きなお世話で、不誠実すぎる。

どうして、先の見えないという”自由さ”を奪うのか?分からないという”興奮”を奪うんだろう?


問いがあれば答えがあるというような事項は、実はこの世界にはほとんど存在しません。

特に、物理世界と違って、精神面の事項は。

もともと、問うこと自体に意味は無かったのです。

それをもっともらしく後付けて盛る、そのウソに冒頭のひとはうんざりしてるんだと思う。

どうしても、ジュリエットはロミオが好きなんです。

どうしても、あわてん坊のロミオはうっかり先に自害してしまうのです。

ああ”・・・、それはそうなのです。

それ以下でも以上でもない。意味なんか聞かないでくれと、シェイクスピアはのたまわったでしょう。


わたしも、蕎麦屋が無いここに来て、

問いが成立しない世界に住んでいたことに、はたと気が付いた。のかも。

いや、誰もが読み手を意識している世界が気に入らないのかもしれない。

プロでもないのに、人目を外して自由に書くことが出来なくなっている。

書き方のお作法、マーケティングのウンチクが溢れ、みな右へナラエをしてる。

なんだ、この整列具合??気持ち悪いじゃん!

いや、そこは、、詐欺師のせいではございませんほろほろ・・。


この世の矛盾性をあばき、かつ、唯一残されている”笑い”という救いを求めたっていいじゃないか。

朝日に励まされるように、わたしたちもこころに朗らかなる笑いを求めたっていいじゃないか。

それが、川柳であり、#なんのはなしですか、なんだとわたしは思う。

矛盾が無いようにとか、効率的に生きる、正しい表現、という”ウソ”はもやめようじゃないの、ということでしょう。

矛盾を突き付けられて、初めて、今の自分を振り返えられる。

ほんとは、どうなんだろうって。サラリーマン辞めて、ようやく振り返っておりますほろほろ。



P.S.


ご存じ無い方もおられると思います。

もし、ご興味ありますれば、コニシ木の子さんのこちらをどうぞ。

「なんのはなしです課」通信 立夏の七通目


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