見出し画像

◆怖い体験 備忘録╱第16話 誰かが起こしてくれた

あれは、出張帰りのことでした。
今でもたまにあるのですが、わたしは運転中でも堪らない眠気に襲われることがあります。
まぁ、昔から夜更かしが多い方なので、昼間にどうしても眠気が来るんでしょうね。
運転中でもそういう時は、パーキングなどに少し車を停めて5分だけでも眠るようにしていました。
幸い、それくらい眠ればまたすっきりと目が覚めて、ちゃんと運転できるようになるのです。

あの時も、確かそんな感じで凄まじい眠気に襲われてしまい、わたしは近くにある大きな公衆トイレの駐車場に車を停めました。
しかし、出張から帰ってすぐに会議の予定が入っていたため、うっかり寝過ごすわけにはいきません。
とりあえず10分ほどでアラームをかけ、運転席を倒して眠りにつきました。

その時は、よほど疲れていたんでしょうね。
わたしは予想以上に深い眠りに就いてしまったようです。

どれくらい経ったのでしょうか。
わたしは突然ドンドン!と車の窓を叩く音と「コラ!起きろ!」という怒鳴り声で目を覚ましました。
一瞬、そこがどこか解らないくらい深い眠りに落ちていたようで、わたしはガバッと起き上がり、辺りを見回しました。

ところが。
車の窓を叩いてわたしを怒鳴りつけたであろう人の姿が見当たらない。
イタズラだと思って外に出てみたのですが、その駐車場に停まっているのはわたしの車一台だけ。
慌てて逃げ去る人の気配も、車の気配もありませんでした。

ぞわっと背筋が寒くなったものの、このあと会議だったことを思い出し、わたしは時計を確認しました。
すると、ほんの少し眠るつもりがいつの間にかアラームを止め、更に10分も眠りこけていたではありませんか!
とりあえず正体不明の声に感謝し、わたしは大急ぎで会議の会場へと向かったのでした。

会議には、結局ギリギリで間に合いました。
あとで聞いたところによると、わたしが車を泊めていた駐車場にある公衆トイレは、所謂『出る』場所らしく、数多くの目撃談があるのだそうです。

でも、そんな見ず知らずのオバケが赤の他人のわたしを、会議に間に合うように起こしてくれたりするでしょうか?
それとも、ただのオバケのイタズラだったのでしょうか?

今となっては解りませんが、何となくあれは身内の声だったような気がしています。
しかし、日頃は煩わしくて仕方なかった霊感的なものですが、こうして考えてみると助けられていた時もあったんですね。
霊感がなくなってしまった今も、感謝の心だけは忘れずに持ち続けていたいものです。

それでは、このたびはこの辺で。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?