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◆わたしが冷めたKFCオリジナルチキンを推す理由

今回ばかりは自信がない。
いや、別にいつもそんなに自信を持って書いているわけでもないが。
いつもに増してって意味で。
こればっかしは、誰に言っても理解されたことがないからだ。
タイトルだけ見れば、もしかすると『KFCを敢えて冷やして食べることによる健康上の何らかの効果が期待できて云々』みたいな学術的な考察を期待する方がいるかも知れないが、そんなことも一切ない。
これは、単純にわたしの思い出と好みの話である。

他の記事でも触れているどうでもいい話だが、わたしは北海道の田舎町の生まれだ。
当然のごとく、1970年に日本進出を果たしたその至高のフライドチキンは、物心つくまで存在すら知らなかった。
おそらくCMは目にしていたのではないかと思うのだが、そこまでの記憶はない。
ともあれ、わたしがあいつとめぐり合ったのは、当時生命保険のセールスをしていた母が研修で都会を訪れた際、お土産に買ってきてくれた6ピースパックが最初だった。

イマドキのお子さまは『初めてケンタッキーフライドチキンと邂逅した瞬間』など、覚えてもいないのだろうなぁ。
だって、巷にはあまりにも美味しいものが溢れているもん。
しかし、おばちゃんの頃には美味しいものがそんなにたくさんはなかった。
KFCはおろかコンビニすら一軒もない。
そんな中でKFCオリジナルチキンと出会った時の衝撃を、果たしてご理解頂けるものだろうか?
それは、2時間以上の道のりを超えてきたおかげですっかり冷めきって、脂は固まり、湯気が水滴となって皮を満遍なく湿らせてはいたが、田舎の小学生の度肝を抜くには十分なパワーに満ち溢れた代物なのであった。

基本『揚げた鶏』と言えば、それまで母のお手製か親戚の誰かのお手製、もしくは近所にあったお弁当屋さんのスタンダードな『唐揚げ』しか知らなかった。
そこへ、11種類のスパイスを調合したスパイシーかつジューシーで、ほろりとおくちでほどける圧力鍋調理の揚げた鶏肉の登場である。
しかも、その日は部活の帰りで空腹も限界に近かった。
ナニコレ!? イイニオイ!!! ナニコレー!!? と、ほとんどカタコトしか話せない人型モンスターみたいになったわたしは、母の返事も待たずに冷めたオリジナルチキンにかぶりついたのであった。

あの、至福たるや。
「空腹こそ最高のスパイス」と昔の偉い人だか何だかが言ったそうだが、空腹を差し引いても充分に美味かった。
あの原体験があればこそ、わたしは未だにKFCのオリジナルチキン(の冷めたやつ)を愛してやまないのだと思う。

以来、母が研修や出張に行った際のお土産は、必ずKFCになった。
決してお安いものではなかったので、それはだいたい父には内緒で妹とわたしのおなかに消えた。
毎回、 4ピースか6ピースパック。
帰ってきてすぐに1個は平らげ、残りは冷蔵庫に入れておいて、次の日に食べるのを楽しみに学校へ行った。

ところで、我ながらひとつの疑問がある。
確か電子レンジは2年生か3年生の時に我が家へやってきていたはずなのだが、どうして温めて食べようとは思わなかったのだろう?

だろう?と言われても、おそらく読んで下さっている皆さまこそが疑問に違いない。
温めて食べた方が美味しいじゃん、って。

実を言うと、この辺は自分でも判然としない。
考えられるとすれば、KFCを目にした途端に毎回「もう、あっためてる時間ももったいなーい!」となって、1秒でも早くあいつにかぶりつきたい一心だったとか。
「まさか1分そこそこも待てないの?」と言われそうだが、現在の自分の食に対する執着を思うに、ありえないことではない。
ともかく、冷えたオリジナルチキンばかりを何年にも渡って食べ続けた結果、わたしはすっかり一般のKFCサポーターとは異なる嗜好を持ってしまったのだった。

あたたかいオリジナルチキンが苦手

そう。
KFC好きにはあるまじき嗜好。
わたしは温かいオリジナルチキンがすっかり苦手になってしまっていたのだ。
揚げたてなどもってのほか。
冷めてこそのオリジナルチキン。

断っておくと、他のものは温かい方が好き。
フライドポテトもフライドフィッシュもビスケットもカーネルクリスピーもツイスターもナゲットも濃厚チーズパイも和風カツサンドもフィレバーガーもえびぷりぷりフライも、ぜーんぶ。
オリジナルチキン及びそれと同じ味付けの骨なしケンタッキー以外のホットメニューは、全てあたたかい方が美味しいと思う。
これは多分、長年のあいだ「めっちゃうめえー!!!」と思いながら冷たいオリジナルチキンを食べ続けてきた弊害なのだろう。
しかし今さらもう、どうにもならないのだ。

とは言え、温かいのも食べるんでしょ?と思われる方に、どれくらいあたたかいオリジナルチキンが苦手か説明すると、まぁ今でこそ少しは克服しつつはあるが、社会に出てから初めて彼氏とKFCに行ったとき、冷えたやつとのあまりの違いに慄いて残してしまったくらい。
誰かがオリジナルチキンを買ってきてくれたら、冷蔵庫で一回冷やしてから食べるくらい。
オリジナルチキンは大好きなのに、それくらいcoldとhotで文字通りの温度差があるのである(上手いこと言った顔)。

さて、ここで無駄だとは解っていても、敢えて「わたしが冷めたオリジナルチキンを推す理由」を説明していきたいと思う。
100人のうち90人くらいはおそらく「いや別にいいよ」と言うとは思うが、タイトルにまでしてしまったので、ここは何としても説明してゆく。

冷めたオリジナルチキンを推す理由①
どこでも美味しく食べられる

レンジなんかいらない!のである。
あったかオリジナルチキンが至高と信じて疑わない人々は、冷えきったオリジナルチキンを召し上がる時、それが可能な環境ならば温め直したいと思うのではなかろうか。
しかし、電子レンジやフライパンがない場所ならどうするのか。
「温かかったらもっと美味しいのに」と思いながら召し上がるのでしょう?
そこへ行くと冷オリチキ(もうめんどくさいのでオリジナルチキンはオリチキと略す)派は冷凍庫から出したそのままを弁当に持っていくことも可能なのである。昼頃にはちょうど解凍されて食べ頃になっているのだから。

冷めたオリジナルチキンを推す理由②
脂が飛び散らない

揚げたてを食べたときにやっちまったことがある。
わくわくデートの真っ最中だったのに、揚げたてオリチキがあまりにもあつあつジューシーだったため、かぶりついた途端に脂がじゅわっと出てきてお気に入りのスカートに垂れてしまったのである。
え?そんなのお前の食べ方が下手くそだからだろうって?
えーいうるさいうるさい!
これが冷えたオリチキだったら絶対に脂垂れなどしなかったのだ。
だって脂なんて固まってカピカピだもの!
垂れてきようがない!最高!

冷めたオリジナルチキンを推す理由③
しっかり味のもそもそ感がたまらない

揚げたてのオリチキは肉がホロリ×ぷりぷりで骨からの肉離れが大変よい。むしろよすぎる。
その点、冷オリチキはしっかり骨にくっついていて、むしっ!むしっ!と噛まないといけない噛みごたえがある。
そして、冷えてもそもそになったお肉がイカニモ「食べてるー!」感を醸し出す。
時々脂が固まった衣がぽろぽろするのもご愛嬌だ。
溢れる脂にスパイスが持っていかれることもなく、しっかり味が凝縮している。
脂の果てまでしっかり食べ尽くせる感じがお得感さえ誘発するのである。
(このへんは些か無理矢理のこじつけ感が否めないことは解っているのでつっこまないように)


さて。
ここまで書いてきて、ふと読み返してみると、これは逆説的な「揚げたてKFCオリチキ推し」に見えなくもない気がしてきたが、そんな懸念には敢えて目を向けないでおこうと思う。

家族から始まり、歴代彼氏や友人たちの中にも、これまでこの嗜好にドン引きする人こそ居たものの、共感してくれる人は一人も居なかった。
しかしこの広いnote界隈、少しくらいは冷オリチキ愛好家のご同志がおられるのではないか、という淡い期待を持って筆を執った次第である。
冷オリチキ派の方がおられたら、ぜひコメントをください。
ただわたしが嬉しくなるだけだけど。

それでは、このたびはこの辺で!

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