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スタートアップとローカルビジネスの間。

ここ数年、地元・鳥取のスタートアップ支援に関わらせていただく中で、思いを強くしていることがある。
それは、「地方発でスタートアップを生み出そうとする施策」は曲がり角に来ているのではないかということ。
今回は、それについて書いてみたい。

そもそもスタートアップとは?

自身の感覚では、行政による経済活性化策の中に「スタートアップ」育成が出てきたのはこの10年以内。(ちなみに、その前の時代で言うと、「ベンチャー企業」支援というのが類似のイメージでした)
スタートアップについて、経済産業省の資料を見ると、こう書いてある。

スタートアップとは、一般に、以下のような企業をいう。
1. 新しい企業であって、
2. 新しい技術やビジネスモデル(イノベーション)を有し、
3. 急成長を目指す企業

スタートアップ育成に向けた政府の取組
スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する
https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/kaisetsushiryou_2024.pdf

国も地方もスタートアップに期待

人口減少に少子高齢化、労働力不足、経済成長する海外としていない日本。
このような状況の中で、新しいテクノロジーや発想によってGAFAMのように大きく成長するスタートアップを生み出したい、という国の考えは理解できる。
そして、地方行政も同様。特に、地域で育った若者の多くが都市部に流出することで地域の活力が生まれにくい状況が続く中、地域発でスタートアップが誕生し大きく成長してくれれば、若者に魅力的な雇用の場を提供できるし、地域のブランドイメージも高まるし、税収増も期待できる。
なので、全国各地の地方行政が、スタートアップを生み出そうと様々な施策を打っている状況にある。

スタートアップ人材のいる場所

そんな中で、私は、地元の状況を肌で感じたり、他の地方でスタートアップ支援プログラムを実施している企業の方などと話をする中で、こんな感覚を持っている。
「地方にはスタートアップ人材の層が厚くない。」
特に、上記の経済産業省によるスタートアップの定義「3 急成長を目指す」ことを志向するタイプの人材は、大学生や社会人になる過程で、多くが都市部に流出しているのではないか(一昔前の表現で言うと「東京に出て一旗あげる」志向の人材)。そして、都市部には、そのようなスタートアップ人材が集まることで様々なコミュニティができ、更に人が人を呼ぶのではないか。
そうなると、地方には、スタートアップ人材がほとんど残らない。また、スタートアップ人材が少ないから、スタートアップをビジネスとして支援する企業(VC含む)も人材も地方に少ない。結果、スタートアップも生まれにくい、というループとなる。

プログラムと参加者のズレ

地方にスタートアップ人材が「いない」わけではない。絶対数が「少ない」という状況なのだ。
なので、都市部で行われているようなスタートアップ支援策(アクセラレーションプログラムなど)を地方にそのまま持ってきても、最初の数年は良いが、徐々にスタートアップ人材の参加が(その絶対数が少ない故に)減ってきて、プログラムの内容(急成長するスタートアップを生み出す狙い)と参加者層がずれてくる。
結果、プログラムが期待するようなスタートアップはなかなか生まれない。
(都市部でないところで、スタートアップが次々と生まれている地域あれば、情報ください笑)

では、どうすればよいのか?

私の仮説は、地方ならではの(潜在)起業家層に合ったプログラムを提供する方が地域経済活性化に繋がるのではないか、ということだ。
それは、
・必ずしも急成長を志向しない。(→スタートアップではない)
・(身近な)地域課題を解決したい、という熱い想いを形にしたい。
・従来のローカルビジネスやフランチャイズビジネスとも異なる。
層である。
この層については、地方では、スタートアップ人材の層よりも絶対数が多い。行政の施策として、それらの方々の起業の失敗確率を下げること、また、起業家としての視座を高めること、により地域に大きなインパクトを与えるような企業に成長してもらうことが、有効なのではないだろうか。
その過程を通じて、中には、スタートアップ志向を持つ起業家も出てくる可能性もあるのではないか。

最後に

最近、社会課題解決と自社の経済的成長を両立する起業(企業)として、「ゼブラ企業」や「インパクト・スタートアップ」といった概念が新たに広がっている。
地方ならではの地域課題も社会課題の一つであり、都市部より地方に根ざした企業の方が、その事業を実施することに親和性も、地の利も、説得力もある。
そろそろ、「地方発でスタートアップを生もうとする施策」は次のステージへと進化させ、そのような社会課題解決と経済的成長を両立し地域を支える企業、つまり、スタートアップとローカルビジネスの間の企業を生み出し育てることに力を入れる段階に来ているのではないだろうか。

Something New 代表 井田 広之(副業公務員)


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