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“わたし”という神話 第5話「悪の誕生」

第1話   天地創造
第2話   人間の誕生
第3話   闇の誕生

第4話   堕天使降臨
第5話   悪の誕生
第6話   広がる恐れ
第7話   光と闇
第8話   偽りの光
第9話   宗教の誕生
第10話  古代の叡智の破壊
第11話  神になる堕天使

 5 悪の誕生

 人間たちは重たくなった地球の重力に対応すべく、徐々に肉体が小さくなった。

 精神波動が下り、小さくなると、それに見合ったサイズの大きさになり、彼らにとって地球は、どんどん広く大きなものへなっていった。そして、彼らの寿命もどんどん短くなっていった。

 地球の人間たちは段々と“わたし”とのつながりを忘れるようになり、自分の中にわたしがいて、いつでもわたしとつながれることが難しくなってきた。

 祈りや瞑想は、以前は生活と共にあったのだが、だんだんと本来の意味を失い、形式的な儀式として行われるようになった。

 それほど、地球の人間たちの波動が低下し、三次元の重たい世界に捕われている証拠だった。自分達が“わたし”という神の一部であり、神の子であることを忘れ、死の意味も忘れてしまった。

 その頃になると、ついに堕天使は子供たちの中の一部の者の精神と肉体を、直接的に支配することに成功した。

 堕天使は、ついに地球という惑星の大地の上で、直接的な力を行使できる生身の『肉の体』を得ることができたのだ。

 一度手に入れてしまえば、次々と肉体をだけを取り替えればよかった。これから地球で時間をかけて、世界を破壊と破滅を“創造”することにした。

 堕天使に操られた人間は、まずは食べる必要も住居や生活のために必要でもない植物を踏み潰したり、引き抜いたりした。それは容易だった。植物たちは抵抗できなかった。

 高い次元の宇宙では、植物たちも喜びを歌い、たくさん喋るのだが、この重たい次元では植物たちの声の周波数は、人間の耳には届かない。それは鉱物も同じで、石を叩き割っても、金属を熱で溶かしても、鉱物たちは沈黙し続けるしかなかった。

 堕天使に操られた人間は、次は動くものたちを破壊してみた。

 虫、小動物、鳥。

 段々と、その対象は大きくなった。

 地球に住む他の人間たちは、その行為の意味がわからなかった。

 どうしてその人間が動物を殺すのか?

 どうしてその人間たちが大地を切り刻み、植物を枯らすのか?

 動物を殺して食べるのは、肉食の動物たちの本能だったが、人間はそんなことをしないでも生きていける。なのに、どうして彼は生き物を殺し、その死骸を食するのか?

 そしてどうして人間が、同じ仲間である人間を殺すのか?

 堕天使は破壊を楽しみ、歓喜し、恍惚感を得る。

 それが闇が闇である理由だからだ。神は光と創造を、そして闇は滅びを扱うのだ。
 人間たちは、闇に落ちた人間を恐れた。自分もその破壊行為の対象になりかね無いからだ。

 その恐れの感情もまた、彼らの心に生まれる「影」だった。

 闇はまた闇を引き寄せ、増殖させる。

 堕天使は、彼らの中に入り込み、自分の仲間を増やした。恐れを抱いた人間の心を操るのは簡単だったのだ。

 もちろん恐れを抱いても、堕天使に操られない、完全には闇に落ちずに生きている強い人間たちはたくさんいた。しかし、その光と闇の拮抗は、常に危うい物だった。子供たちは何かの拍子に光を思い出し、また何かの拍子に闇へ心を曇らせる。

 世界には闇の領域に支配された破壊的な人々と、そうではない、自らの闇を抱えながらも光を信じて生きる善良な人たちがいたが、善良な人たちは、攻撃的な人々から身を守るために頑丈な建物を作り、武器を作った。

 防衛の戦いを重ねるうちに、ついに彼らから先に、闇に落ちた人間を攻撃し始めた。

 恐怖に晒される前に、その未来を潰そうと、先制攻撃をしたのだ。光と闇の拮抗は、ちょっとしたきっかけでバランスを失うのだ。

 しかし、それこそが闇の意志であり、堕天使の思うツボだった。

 恐れが恐れを増殖し、破壊を生むのだ。

 そうして心の闇はどんどん世界に溢れていった。

 かろうじて神との関係を保っている人々はいた。彼らは常に祈りと瞑想を通して、恐れを手放し、神性へと還る術を保ち続けた。

 彼らは闇に堕ちた人間の脅威にさらされ、時に肉体を傷つけられたり、命を奪われることもあったが、それでも憎しみや恐怖を抱くことなく、むしろその攻撃者を憐れんだ。なぜなら彼らはその肉体が滅んだあと、死してもなお闇の世界で争いを繰り返し、完全にそれらを浄化してからでないと神の懐に還れないからだ。

 この宇宙において人間は、“わたし”同様に神の創造性を持つので、自らの放ったものは、自らが必ず受け取るという創造の法則があるのだ。だから彼らは肉体の衣を脱ぎ捨てても、上の次元に還ることができずに、すぐにまた地球に転生し、自らの行為を清算し、浄化をしなければならなかった。

 恐れに心を焦がし、攻撃性を放ち続ける魂は、自分の放ったものをすべて回収してからでないと天に還れない宿業を追ってしまった。
 
 地球ではそのように堕天使の闇の力が増していったが、もちろん光はあり、人々は誰しも自分の中にある光の部分と闇の部分で対立させながらバランスを取ることもできた。一部の光の意識の人々が、愛と勇気を持って伝えていったのだ。

 しかし、やはり強い憎しみや怒りに飲まれ、攻撃性を持ち、支配と破壊行為を繰り返す者たちは後を絶たない。その光と影の拮抗は、すぐに崩れる。その背後には、堕天使そのものである人間がいた。

 完全に堕天使に支配された人間は、本来の神との自由意志を完全に失い、堕天使の地球での乗り物のようなものだった。

 時として、その乗り物から光の勢力によって追い出されることはあった。しかしまた別の肉体に乗り変えれば良いだけだった。そしてその都度、堕天使はまた闇を多く抱えた人たちを取り込み、手先にした。

 闇を恐れる多くの善良で無知な人々は、闇に落ちた人々をこう呼んだ。

「悪」と。

つづく

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