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「アートケアだより」 美術とSDGs

 自由表現の育児応援ワークショップ「アートケアひろば」を始めて今年20周年を迎えました。会員の皆様に支えられてここまで続けることができました。会員さんと作ってきた日々があって今がある。感謝しきれません!

 会員さんの毎日の育児を支えることができたら、と活動しています。中でも毎月発行している「アートケアだより」は、「友達に見せたい」と、コピーして渡したという方やSNSに載せたという方もおられ、役立っているのかも…とありがたく思います。

 もしかしたら他の方にも役立つかもしれないと思い、20周年の今年は「アートケアだより」のバックナンバーを、今のトピックに合わせてご紹介します。

 今日は「アースデイ」なので、SDGsについて書いた一昨年のおたよりを。

・・・ 「アートケアだより」2021年5月号・6月号より ・・・

●ワークで考える「美術とSDGs」

 このところ「SDGs」について、TV番組のキャンペーンなど、盛んに取り上げられていますね。「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略で2030年を目標に、世界各国で取り組んでいます。
外務省HPを見ると、詳しいことがわかります。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

 大きな枠として17項目、それをさらに細かく設定した169の項目が掲げられています。169の項目は、見るとひゃ~っとなってしまいますが、17の項目は、簡潔な言葉とイラストでイメージしやすく、どれかは「自分なりに取り組めそう」と思える内容です。教育の場のほか、アニメやゲームなどでも取り上げられているので、子どもたちの方がよく知っているかもしれません。

 美術にたずさわっていると、「環境によくないなぁ!」というジレンマだらけです。画材の歴史は科学技術の発展の歴史でもあり、表現が広がった一方、様々な化学物質を排出しているのも事実です。
 たとえばアクリル絵の具には、「人体に有害です」というドクロマークのついている色もあるんですよ。きちんと表示されているので、危険な画材は選ばずに済みます。
「安全基準をクリアしています」という国際基準の認証もいくつかあり、画材メーカーさんのご苦労によって、まずは人体への影響を考慮した画材開発が進んだ状況です。これからは気候変動など環境への影響を少なくする方向にも進むはずです。

 アートケアに「化学物質過敏症」のお子さんも参加してています。そのご家族は環境に関してとても知識をお持ちで、お話を聞くと、環境への負荷が人体に影響しているとわかります。今、発症していない人にも影響が及ぶ可能性があるのだそうです。他人事ではない!

使う分だけ

 ワークでは以前から「絵の具は使う分だけ出すね」と子どもたちに伝えています。理由は3つ。
1「汚れた水を出さない」
2「捨てる量を減らす」回り回って環境への負荷を減らすことにつながると思います。
3「経済的にも優しい」画材を無駄にしなければ、他の画材を買うことができます。

リサイクル素材を使う。プラスチック製品は、なるべく買わない・・・

 さらに「できるだけリサイクル素材を活かす」ことを推奨してきました。これに加え、近年は「プラスチック製品は、なるべく買わない」という方針にしました。

 でも「持続可能な生活」ってなかなか難しい!
あるワーク用にプラカップが必要で、お店で紙コップを前にかなり逡巡しました。結局、プラを購入…。何回もリサイクルして使っています。

 リサイクル素材にはプラスチック製品がたくさんあります。
 以前、あるお父さんが、勤務している工場で大量に出る丸いボタンのようなものを画材にと持ってきてくださいました。赤、緑、黒があって、電子部品の接続を間違えないようにする目印で、「赤」をつなぐ時は残りの色は廃棄するのだそうです。
 効率を優先するために工場レベルで大量に「使わない」プラが出ている現状を知って、個人レベルでは環境保全に追いつかないと感じました。ですので「SDGs」に個人も企業も取り組むのは希望が持てます。

お裁縫リメイクは「家族の思い」も受け渡せる

 ファッションの世界も布の廃棄を減らすのは急務だそう。私は10代の頃、仕立て屋だった祖父の残した布をスカートにしていました。拙いながら今も「捨てる前に何か」と時々縫い物をしています。姪っ子が生まれた時は、母が若い頃に大好きだったというワンピースの余り布をベビードレスにしてプレゼント。母も妹も喜んでいました(特に母はその布が残っていたことを知らなかったと泣きそうになっていました)。リメイク服をきっかけに思い出話に花が咲くのも楽しいものです。

 そんな思いもあり、時々「お裁縫リメイク」を提案しています。6年卒業の年、お母さんのマタニティ服、つまり自分がお腹の中にいた頃のお母さんの服を自分用にリメイクした子は、もう21歳! まだ服があって、もし赤ちゃんが生まれたら、3世代リメイクもステキです。

 以前、本人発案で小さい時に着ていたレインコートを愛犬用にリメイクしたHanaさん。もう卒業したお子さんです。「アートケアの先輩にこんな作品を作った人がいてね」と、犬を飼い始めたAoi.Oさん(5年生)に話したところ「やってみたい!」と、今、制作中です。

日用品、たとえばアイシャドーも画材に

 日用品で意外なものも画材になります。バブル時代の名残り満々の海外お土産のド派手なアイシャドーセット。当時20代の私もさすがに顔には塗れず、画材にしちゃおう♡と、毎年、そのアイシャドーで年賀状を描きました。ラメ入りパステルという感じで、いいニュアンスなんです。最近は化粧品で絵を描く芸人さんもいて、声をかけるとすぐ不要な化粧品が集まると報道されていました。

 デッサン画に取り組んでいるサリーさん(6年生)に、彩色する際、お母さんに、もう捨てようかなというアイシャドーがあるか聞いてみたところ、ちょうど描いていたモチーフにぴったりの色合いのものがあり、シックな絵が完成しました。「指で描く、手でぼかす」技法を経験する機会にもなりました。

工夫できて、おもしろい!

 Kannnaさん(5年生)は、お友だちとの交換日記用に、持ってきた紙袋をリサイクルしてノートにしました。画用紙と違う味わいがあってステキでしたよ。

 身近にあるもので「何か作れるかも」と考えてみると、楽しいSDGsになりますね。ワークでより良い取り組みがあったら教えてくださいね!

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以上、2021年5月号・6月号でした。随時バックナンバーをアップします!

「アートケアひろば」https://www.art-friendship.org


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