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アートケアだより2024年3月号

 2期にわたる展覧会、年度末作業等で、月初に発行しているおたよりが月末となってしまいました。。。
 そう、もう年度末なんですね〜 2023年度は「アートケアひろば」20周年でした。3月20日(祝)、ようやく「20周年の集い」を開催しました。懐かしい方が来てくださって、あれこれ思い出され…
 20年を振り返るのもナンなので、近年について振り返ってみます。

●アートケアひろばの展覧会

2024年3月2〜3日 展覧会1期

 「アートケアひろば」は、お絵描き工作、言葉や音、身体表現など、子どもたちが様々な芸術表活動をする場所です。2歳から小学生を中心に、現在は高校生まで参加しています。

 子どもたちはここで、自分のアイデアや思いをゼロから形にする経験をしています。ですのでスイスイ表現できる時期ばかりではなく、悔しくて泣くこともあれば、スランプ気味で「何もしなーい」という時期もあったり。

 そんな「もにゃっ」とした状態にある程度耐える力、変換する力は、子ども本人が経験の中で獲得していくものと考え、あえて「もにゃっ」とした状態も大事にしています。今風にいうと「レジリエンス」という言葉でしょうか。そんな力を育てている感じです。

2024年3月16〜17日 展覧会2期

 展覧会を毎年開催しています。コロナで緊急事態宣言が出された2020年は、展示する日を待つのみ!という段階で中止になりました。

 そこで黙って見ているアートケアではありません。「大抵のことは、相談したり工夫したりすれば何とかなる」。これを行動で子どもたちに示したいといつも思っています。

 ということでコロナ期は、HPを整備して「web展覧会」という形で、皆が互いに作品を見ることができるようにしました。

 「web展覧会」https://www.art-friendship.org/web展覧会/

●コロナ期も皆さんと

 ワークショップもオンライン・メール・写真と電話などいくつかの方法を選択できるようにして、お友達と遊べない、社会との繋がりが希薄になった子どもたちのメンタルケアに努めました。

 しかし!子どもたちはとっても柔軟で、ケアが必要なのはむしろご家族でした。子育て、仕事や介護、ただでさえ多忙な日々にやってきたコロナ禍。そりゃそうです。

 アートケアでは毎回、写真と文章で1人1人「アートと成長の記録」を作っています。ご家族の文章量は、コロナ期の3~4倍の長さになっていました。思いを伝える必要に迫られていた時期だったんだなと感じます。

 オンラインのワークショップは、皆さん口には出さないけれど「できるの?意味あるの?」という懸念がなんとな~くありました。でも、迷ったらやってみる。何もやらないより、やってみて改善すれば良い!

 緊急事態宣言が出てすぐ、ある方が「Zoomって知ってます?」と教えてくれて、3月からオンライン化。比較的早い動きだったと思います。

 実施してみたら、対面、オンライン、メール、それぞれに良いところがあり、選択肢が広がったと実感しました。

●アートケア皆さんの支えが、各地の美術館さんへ繋がっていきました

 そのように早い時期にオンラインの手応えを実感したこともあり、お世話になっている美術館へ、オンライン鑑賞会や動画の制作などを提案しました。

 学芸員さんの中には、閉館せざるを得ない状況での仕事の意義について、意気消沈した気持ちを吐露してくださる方もおられました。

 「希望が湧きました」と言ってくださって、私が連絡してもしなくても、いずれオンラインで展開されていたと思いますが、お互いが励まし合えたのは素敵なことだと今でも思います。

 アートケアの皆さんが、オンライン等での実施を受け入れてくださって共にコロナ期を乗り越えたことは、私にとって大きな励ましとなりました。それがあったからこそ、各地美術館さんへご提案する気持ちになれました。

 皆さんの支えが、他の仕事先の方々への、ある種の希望と前進する力の源になったことを、いつかお知らせしたいと思っていました。この場をお借りして、あらためて感謝申し上げます。


●アートケアのいいところって何だろう?

 さて、展覧会の話に戻ります。今年、粘土のミニチュア・スイーツをコツコツ作って展示した6年生の子がいました。その子は解説文にこう書いてくれました。

 『これは私が4,5歳の頃アートケアの展覧会で6年生の女の子がミニチュアを出していて私も6年生になったらミニチュアを作りたいなと思っていたので作った作品です』

ニックネーム「こうさくだいすき」さんの作品
大学生と高校生のお姉さんたちが撮影してくれました!

 なんと!小さい頃に見た6年生の作品を、6年生になったら自分も作ろうと思っていたとは!それを実行する粘り強さ、本当にすごい!

 さらに、別の2年生の子が語ったことに仰天しました。

 『ワークの時にこの6年生のお姉さんのミニチュア作品を見て、やってみたい!ってキラーン!ってなって、それで私もミニチュアを作ってみることにしました』

 なんとなんと~!!!

ニックネーム「しの」さんのミニチュア作品
目玉焼きで大人の爪くらいのサイズです

 その2年生の子のお母さんが「伝統だね」とお子さんに話しかけていました。本当にそうですね。

 「アートケアってどんなところ?」「どんな良さがある?」という問いかけに、どう答えるか思案する時もあるのですが、みんなが緩やかに交流している、長い時間軸で繋がっている、というのも良さの1つだなぁと胸に刻みました。自然と交流してくださる。やっぱり皆さんに支えられているなぁと、しみじみ思います。

●OB・OGご家族の皆さん

 OB・OGの皆さんにも、とても支えられています。

 NPO法人化する時から設立会員として、あるいは理事として長年お世話になっている皆様。
 サポーターとしてワークショップや鑑賞会を手伝ってくださる皆様。

 時々、近況をお知らせしてくださる方々。お子さんがどんなことに興味を持ってどんな大人になっているのか、知らせてくださるのは、とても励みになります。 

 12月にスタートした茅ヶ崎市民文化会館さんとの居場所活動「アートのひろば」の初日に、ひょっこり参加してくださった方もいました。予約不要の活動で、初日に参加者さんがいるかいないかドキドキなので、とっても心強かったです。

 お仕事を紹介してくださる方もいますし、「アートケアっていう所があるよ」とクチコミしてくださる方もいます。現役の方、長く通ってくださった方はもちろん、早くに退会された方もお友達を紹介してくださって、本当にありがたいです。

●スタッフの皆さん

 歴代スタッフも、とっても素敵な方ばかり。アートケアは月に数日の仕事で、ここを卒業してフルタイムの仕事に復帰する方が多いのですが、離れてからも連絡してくださったり、遊びに来てくれたりしています。

 「20周年の集い」に、元スタッフのIさんも来てくださいました。今は保育園に勤務されています。

 『アートケアで知った表現方法を、アートケアみたいに全部を自由に1人1人にということは保育園ではできないんですけど、工夫して取り入れて、すごく子どもたちが嬉しそうにイキイキして、ああ良かったなぁと思うことがあるんですよ』

 お役に立てていてよかった! なんだか園児さんたちの顔が浮かんできて、嬉しくなりました。

 集いには、Iさんが見てくださっていた未就園児クラスの子のご家族もお二人、声を掛け合って来てくださいました。10年ぶりくらいでしょうか。大歓声で、Iさんと一緒に再会できて良かったです!

●成長したお子さんたちが里帰りのように

 20年経つと、お子さんたちが大人になって、里帰りと言いますか活動に協力してくださる方が出てきました。

 ワークを手伝いに来てくださる方。高校生で親子でご協力くださった方もいらっしゃいました。

 先日、美術ワークを手伝ってくださったMちゃんは、服飾デザインの大学を卒業、さらにデザインの専門学校へ進むとのこと。アートケア時代、スタイルブックを描いたりしていて、お母さんが「原点です」とおっしゃってくださいました。
 Mちゃんに大学の課題作品を見せてもらって、子どもたちはじっと見入っていました。

Mちゃんが大学で制作した作品。今月号の見出しの画像も、Mちゃんの作品です!


 毎年、聖鳩幼稚園さんで実施させていただいている「卒園児さんへの肖像画プレゼント」の描き手さんをいつも探しているのですが、今年は、美大に入ったEちゃんがお友達を紹介してくださいました。
  2歳から12歳まで見ていたお子さんが成長してご一緒してくれる、なんだかもう感無量なことばかりです。

●高校卒業間際になって・・・

 ここ1ヶ月、OBの方に道でバッタリ会う確率が非常に高まっていまして、中でも最も驚いたお話を。

 今、高校3年生の子のお母さん。野球部で、チームメイトのお母さんから
「あのさ、アートケアって行ってた?」
「え?! 行ってたよ」
「最近アートケアのアルバムを見返したらね、4歳頃の展覧会で、二人の作品が隣に飾ってあった写真を見つけたんだよー!」と。(SNSが普及した頃から展覧会ではニックネームで表記、以前は本名で記載していました)

 こんな偶然あるんでしょうか! 
 あまたある県立高校で同じ学校に入学し、野球部に入り、お母さんが卒業前にアートケアのアルバムを見返してくださった。ゾワゾワします。

●劇づくり

 アートケアでは「美術ワーク」のほかに「音ことばワーク」を実施しています。発表会を、今年はコロナ以後、数年ぶりに屋内で実施し、たくさんの方に観ていただくことができました。子どもたちとオリジナルの劇を作ることも、アートケアの伝統になってきました。

 「音ことばワーク」を卒業した子が後輩の芝居を観に来てくれたり、10周年の時に劇を作ったお子さんたちのご家族も来てくださって、当時のお子さんたちのこと、育児の悩みと喜び、思い出話に花が咲き… 今の成長をお祝いしました。

 実はこの「20周年の集い」は、音ことばワークのAくんが「アートケア20周年なんだよね~」と言っていたのを聞いて、「やっぱり何か集いをしなきゃ!」と思って企画したものです。
 みんなの劇の発表の日に集いを開催。なんだかいろいろ楽しい3月20日(祝)でした。

●「ホーム」の1つでありますように

 人にはいろんな「ホーム」があると、なんだか心が落ち着いたり強くなれたりする気がします。アートケアが皆様にとって、そんなホームの1つでありますように。
 どうぞ皆様、引き続き「アートケアひろば」をよろしくお願いいたします! 

 

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