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アートケアだより2023年5月号

*赤ちゃんから園児・小学生を中心に高校生まで参加する、自由表現ワークショップ「アートケアひろば」の「おたより」をnoteでも紹介します。会員さんに向けた語り口になっております。

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 数年ぶりに各地人出の多いのGWのようですね。ずっとお仕事のご家族もいらっしゃるかもしれませんが、皆さんはどこかお出かけされましたか?(文・冨田めぐみ)

●おそとへ!

 4月後半のワークでは、ちょっとしたきっかけで家族に当たったり涙が出るお子さんが散見されました。新学期から約1ヶ月、新しい環境でがんばってきて、そろそろ疲れも出始める頃。そんな5月初めは、お散歩をお勧めします。

 天気が良い日は、ものが鮮やかに見えます。ちょっとお散歩して、空を見上げたり、土のあるところ植物のあるところに行ってみると、生き物エネルギーや自然の輝きを感じてリラックスし、元気が出るかもしれません。

 雨や曇りの日は、晴れの日と違った色合いを発見できます。匂いも全然違います。

 生活している場から少し離れると、いろんなものがクリアに見えてくることもあります。旅行に行って新しいことを知ったり、いろんな経験ができるのも楽しいですよね。疲れすぎて家族旅行はもう懲り懲り、なんて思い出も大人になれば懐かしいものですが、子どもたちをよく寝かせて元気回復しつつご旅行なさってくださいね~

●国立科学博物館「恐竜博」

 SNSで「恐竜デッサン」を紹介させていただいた、恐竜が大好きなてるちゃんは国立科学博物館「恐竜博2023」に行ったそうです。きっと新しい知見を得たことでしょう。ワークでどんな表現を見せてくれるか楽しみです。

 今回の恐竜博は日本や世界で初公開の化石があるんですね。国立科学博物館の副館長さんたちの調査隊が、アルゼンチンで発掘した新種も展示されているのだそうです。新種って見つかるものなのですね!たくさんの研究者の努力がつながって、人類の知の世界が広がっていくおもしろさ。

 子どもたちは「恐竜が好き」という1点で博物館に行くのだろうと思いますが、大きくなったら、知の世界の人々の歴史にも気づくことでしょう。その頃「自分は何をして生きていくか」を考え始めているかもしれません。今、ワークに来ている子たちが、大人になってどんなことに興味を持って活動するのか、いつも楽しみに思っています。

●国立工芸館「工芸×ポケモン展」

 先日のNHK「日曜美術館」では、金沢の国立工芸館で開催中の「ポケモン展」が特集されました。単発ワークに参加した5年生の子がポケモンを制作していたので、お母さんに日曜美術館の話をしたところ、「予約してきました!」とおっしゃっていました。

 数年前、六本木ヒルズでのポケモン展では、来館者のほとんどが20~30代の大人でした。ゲームなど様々な展開で、ポケモンは大人を魅了し続けていますよね。子どもたちは、今はゲームキャラクター、YouTube、アニメなどコンテンツが多彩で、ポケモンに誰もがハマっているという様子ではなくなっています。キャラクターも1000を超えていますから覚えるのも大変ですよね~

 さて工芸館の展覧会は、各地の工芸作家さんがポケモンをテーマに制作した新作が展示されるというなんとも贅沢なものです。金工作家の吉田泰一郎さんの、イーブイと進化した3体の作り方がすごかった! ブースターの毛並みを表した炎の形のパーツは約9,000枚だそうです!  銅を自作の型(鏨・たがね)で切り抜き、熱して冷やし色を出す。電気タイプは雷の形、水タイプは水面の模様にしているとのことです。それを1つずつ立体の像に貼り付けていく作業は凄まじい気力が必要かと。

 工芸は制作方法が様々あり、その工程はどれもとても緻密で奥が深いです。石川県立美術館さんや菊池寛実記念 智美術館さんで鑑賞会のお仕事をさせていただくようになって以来、工芸について学びが深まり、毎回、新しい魅力を発見しています。知れば知るほど、これを同じ人間が作っているのか?!と驚嘆することばかりです。

 このような工芸の手法に関連して思い出されるのは、のりのりくんの「蜂の巣」です。当時5年生。六角形の柱になるようサイズを測って画用紙を切り、1つずつ色を塗り、組み立て、密集させるという方法でした。ワーク月1回90分で、数ヶ月かけて完成。フェルトで作った蜂が巣の中にいます(写真は当会SNSに掲載します)。
根気がいることをしているのに、のほほ~んと作っていたのが印象的でした。

のりのりくん。当時5年生。六角形の柱になるようサイズを測って画用紙を切り、1つずつ色を塗り…
組み立て、密集させるという方法で「蜂の巣」を作成。
ワーク月1回90分で、数ヶ月かけて完成。
根気がいることをしているのに、のほほ〜んと作っていたのが印象的でした。

 私は「美術で五教科を学べますよ」とお話することがあります。特に工芸は科学や数学の要素が強く、感性で語られがちな美術の世界を違った角度で捉えることのできる、とてもおもしろい分野です。歴史、文学はもちろん「美しさってなんだろう、人間ってなんだろう」と、五教科を超えた世界へも私たちをいざなってくれます。

 もし金沢に行かれたら、工芸館の隣にある石川県立美術館にお立ち寄りくださいね。NHK「びじゅチューン!」で紹介された野々村仁清「色絵雉香炉」を観ることができます。

◆2021年 動画「工芸でわくわくドキドキ!」
◆2020年 石川県立美術館YouTube

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この記事の掲載について、のりのりくんのご家族に事前確認したところ、嬉しいお返事をいただきました。

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 おたより原稿、拝見しました。本人のOKもらいましたので、載せてくださって大丈夫です。ちなみに、私も日美を録画して見ているのですが、今回たまたま本人も一緒に見ていて、イーブイとその進化タイプの作品の紹介を見ながら、蜂の巣の作品の話をしていたので、今回のお話を頂いてビックリです!

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なんとなんと! ご家族とご本人も、私と同じ思いで見てくださっていたとは。
彼は今、高校1年生です。

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