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「アートケアだより」バックナンバー2004年5月号 「子どもが園に行きたがらないとき」

 今年20周年を迎えた「アートケアひろば」。子どもたちは自由に表現活動、大人は子育てのお話をする場です。毎月「アートケアだより」で、子どもたちの成長ぶりや、ご家族の関わり方、子育ての工夫などを紹介しており、19年前の今月、2004年5月号は、Oさんご一家のお話でした。

 掲載当時  4歳だったMくんは、小学校を卒業するまで通ってくれて、美術・音・言葉など様々な表現に取り組みました。大人になった現在、地図を制作する会社に勤めておられます。小さい頃の様子を知っているだけに、ご職業の選択に「なるほど~!」と思いました。

 今、育児が大変!!という皆様に、子育てを乗り切るモデルというか、なにかヒントになれば幸いです。

「アートケアだより」2004年5月号

●3月の保護者お話会で話題沸騰!「子どもが園に行きたがらないとき」

 Oさんご家族がアートケアに参加されたのは、ちょうどMくんが幼稚園に行きたがらなくなった頃。家ではお母さんにべったり、ずっと抱っこの日々。
 幸い幼稚園の先生方が子どもの気持ちを理解した対応をしてくださったそうなのですが、「行きたくない」や「べったり」が始まると、 親にとっては「これがいつまで続くんだろう」と出口の見えないトンネルにいる心境になりますよね。

 その頃のMくんの作品は、まさにトンネルのよう。紙で筒を作って、内側に濃く黒い色を塗っていました。皆さんだったらそれを見て、どう感じますか?!

 私がお母さんの立場だったら、「黒だし内側にしか塗ってないし、やっぱり何かこの子に負担になっているんじゃないかしら」と心配すると思います。それは親心。子どもが一般的に「良い」とされる状態でなくなると、まず自分の子どもへの接し方がまずかったんじゃないかと考えたり。本当に切ない。

 でも子どもの成長の流れの中では、一見、不適応に見える状態のときに、次の成長への充電をしていることがあるんです。
 M君のその頃の作品と様子には、外の世界へ向かう前の、自分で可能性を開くための試行錯誤が映っていました。そのことをお伝えしたところ、
「 毎日どうなるのかなぁと、かなり辛かったんですけれど、お話を聞いて、必ず変わる、と思って待つ気持ちになりました」。

 どんな時でも周りの大人が成長を待ってくれる、という体験は子どもの充電のもと。お母さんは本当にがんばって付き合われました。そして見事に変化。
 作品は段ボールを大きく広げて彩色するなど、外へ広がる表現に変わりました。今は、粘土の人形を作って丁寧に色をぬり、セリフや音をつけてビデオに撮る作品作りもしています。

●お父さんの関わりも絶妙

 M君はワークにお父さんと一緒に来ていて、幼稚園に行きたがらなかった頃のお父さんの対応がとても功を奏していたように思いました。
 まず、お母さんが子育てから少し解放される時間ができること。これは日々子どもにべったりされている時、 本当に助かるものです。そうですよね、お母さん方!

 それから表現上の関わり方。助走に時間がかかる、ということで、Mくんがとっかかりを見つけるまで根気よく付き合われていました。
 中でも「音ことばワーク」での対応が絶妙。あぐらをかいて抱っこというスタイルでMくんの体を優しくトントン…。少し大きくなっても、子どもは抱っこで安心することが多く、一緒にリズムを取るなど身体感覚の触れ合いは子どもにとっても楽しく暖かな気持ちをもたらしてくれます。

 「オリジナル早口言葉」といって、聞く人にはよくわからない(失礼!)言葉をしゃべり続けていた時期も、お父さんは「おもしろいよね。すごいぞ!」と対応。
 そのままでOK、と見てもらえると子どもは実にのびのび、変化も早くなります。最近のMくんは自分の好きな絵本を朗読、それを他の子が熱心に聞くなど、周りとの関わりも積極的になってきました。

 今年、園に行き始めたお子さんたち、どうですか?
 ゴールデンウィーク明けが初めの山。「うちの子はこうで…」と何でもないような話もしてみると、楽しさ倍増、苦しさ半減。Oさんご一家の体験から励まされたりヒントを得るご家族もいらっしゃるでしょうか。Oさん、お話ありがとうございました!

(今回、あらためてご家族に確認し、OKをいただいて掲載しました)


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