「君たち」完全読解

arkios5496@aol.com 「君たちはどう生きるか」の真実@Arkios4

「君たち」完全読解

arkios5496@aol.com 「君たちはどう生きるか」の真実@Arkios4

最近の記事

『君たちはどう生きるか』の最終10章「春の朝」について

9章については、以下のリンクを参照して下さい。 『君たちはどう生きるか』の「水仙の芽」について 『君たちはどう生きるか』のガンダーラの仏像について 9章では、読者の論理的思考力が試されます。 吉野はすでに2章において、9章に至るための準備を読者に対して与えてはいます。けれどもその意図に気づき彼の期待したとおりに読み進めることが出来た人は、どうやら極めて稀なようです。 吉野は執筆当時世間を風靡していた軍国主義的な風潮・言論に対し、論理的な思考でもってそれに対抗してほしい

    • 『君たちはどう生きるか』の「水仙の芽」について

      コペル君の黄水仙のエピソードで現れる、美しい表現です。 みなさんはこのエピソード、美しく感動的な話だと感じますか? 僕はこの話を醜くておぞましい話だと思います。 「庭のどこを見ても、柔かな土をもちあげたり、堅い梢をふくまらせたり、数しれない新しい芽が、みんな、もう外をのぞきたがって居ました。」 と、書かれているのですから、コペル君が黄水仙を移し替えた先にも、なにかしら「延びてこずにはいられないもの」が芽吹いていたはずなのです。直接の描写はないものの、コペル君はそこに元

      • 小説『君たちはどう生きるか』に出てくる「水玉」について

        これら引用箇所における「水玉」には注意が必要です。 物語の全体を通しての重要な概念です。 いまの私たちは普通、「水玉」と聞けばそれはすなわち「水滴」を意味するものだと考えてしまうのがほとんどではないでしょうか。ですが、「君たち」における「水玉」は、その意味で使っていないことがはっきりしています。 まずは、2つ目の引用箇所の「水玉」に注目して下さい。 「流れの中に漂っている水玉」というのは何でしょうか? 水滴が水中に漂えば、それはもはや水滴ではありません。水滴ひとつ分大き

        • 『君たちはどう生きるか』のガンダーラの仏像について

          ガンダーラの仏像に関する『君たち』の記述のいかがわしさにつて、誰もなにも⾔わない、書かない、というのは、僕にとっては本当に不思議に思える現象です。 例えば、ユニクロに売っている洋服は、⻄洋式なのだから、⻄洋⼈が作った、と⾔えるでしょうか? もしかしたら、歴史的な検証を経て、ユニクロ1号店の近所には、⻄洋⼈が多く⼊居しているマンションが建っていたという事実が発⾒されるかもしれません。ですが、例えそうであったとしても、「そうした歴史的事実を踏まえればユニクロ1号店の洋服は⻄洋

        『君たちはどう生きるか』の最終10章「春の朝」について

          ルサンチマンと日中戦争

          (5分25秒以降のあたりも聴いてほしい) (この記事は、以前公開した記事の一部を見やすく修正したものです。 内容的にはなにも変わっていません) 歌詞の意味・和訳(テキスト) カツ子さんは当時流行していた偏狭な軍国主義精神のカリカチュア。 吉野源三郎がこの歌をカツ子さんに歌わせたのには、当時、「暴支膺懲」というスローガンのもとで「無法にも暴れまわる中国をこらしめてやれ!」という思想が流行していたという背景からであろう。吉野源三郎の著作にはこの「暴支膺懲」について言及がい

          ルサンチマンと日中戦争

          『君たちはどう生きるか』読解の手引

          「君たちはどう生きるか」をちゃんと理解しようとすれば、最も重要視しなくてはならないテキストが「作品について」。 ↑ 書かれている内容は、表面的には執筆当時の社会状況を関連情報として書いているように見えるかもしれないが、言外の意味においては作品に直接関わっている、ということ。 吉野源三郎は当時の時代と全面対決した上、それを受けて「君たちはどう生きるか」を執筆しているので、ここで吉野が語る時代状況は、そのまま直接に作品の紹介ともなる。 ↑ 「君たちはどう生きるか」は、戦争の問

          『君たちはどう生きるか』読解の手引

          「この本の成り立ちについて」

          「この本の成り立ちについて」

          「新しい版の前書き」

          「新しい版の前書き」

          東京は二度焼けた 3/3:暗い未来と方丈記

          「へんな経験」は鴨長明の「方丈記」を連想させるように書かれている!? 「へんな経験」において、水の描写はそうとうにしつこく繰り返されています。 水に関連した言葉を前から順にピックアップすると、下のようになります。短い文章の中でこれだけの数が出てきていますから、頻度としては相当なものです。 文学作品の書き方としてはあまり上手なやり方ではありません。 ですが、吉野はあえてクドクドしく書いているのではないのか、そこに何かの含意があるのではないでしょうか。 少なくともそう考

          東京は二度焼けた 3/3:暗い未来と方丈記

          東京は二度焼けた 2/3

          前回の記事:東京はニ度焼けた① 警告!『君たちはどう生きるか』こう読めば100倍つまらない!! (「君たちはどう生きるか」完全読解、記事リスト) 「君たち」の冒頭、「へんな経験」で・・・ 作品の冒頭のこの部分は、あまり上手ではない描写だとは思うのですが・・・ お話の意図としては、 コペル君が、7階建てのデパートの屋上という、当時としては最高の展望スポットから地上を眺めやる、という非日常的な経験をしたことで、 それがきっかけとなって、コペル君は、日常から身を引き剥が

          東京は二度焼けた 2/3

          東京は二度焼けた 1/3

          1923年の関東大震災の時、吉野源三郎は24歳。 この15年後に「君たち」が刊行されます。 ↓ ↓ いち早く復興していったのが銀座。 銀座のデパートは復興と繁栄の象徴でもありました。 銀座近辺には華やかな大衆文化が花開いていきますが、 その一方で、 吉野源三郎は 既に日本の悲劇的な敗戦を予想しており、 その事が 「君たちはどう生きるか」に暗い影を落としているのです。 丸山真男さんは 「東京は、その冷たい湿気の底に、 身じろぎもしないで沈んでいるのでした」 (

          東京は二度焼けた 1/3

          99.9%の人は気づけないようです

          ↑の引用部の「このノートに」の 「に」 が、かけ詞になっています。 場所をあらわす助詞の「~に」 と 「~によって」の意味で使われる「に」。 コペル君の呼び名の由来の「表の意味」は、 「ノートの中に書かれている」 のですけれど、 同時にその「裏の意味」、より大切な方の意味は 「ノートによって(カモフラージュされ)隠されている」 という意味の、二重の意味となっています。

          99.9%の人は気づけないようです

          「雪の日の出来事」と二二六事件

          二二六事件のおこった翌年の7月、「君たちはどう生きるか」は出版されています。それは青年将校たちが処刑されてからはおよそ1年後のことで、北一輝と西田税が処刑される1月まえでした。 出版当時に「雪の日の出来事」という章を読んだ人には、ほぼ同時に二二六事件を連想したに違いありません。 ↓この記事ですでに述べているのですが、 「君たちはどう生きるか」完全読解、実在した「水谷くんのうちの大きな洋館」のモデル 「君たち」の「五、ナポレオンと四人の少年」に出てくる「水谷くんのうち」

          「雪の日の出来事」と二二六事件

          戦後に書き直された文学作品としての「君たちはどういきるか」 その⑤

          物語の後半に入り、おはなしは抽象的な話題が主体となってゆきます。 前の記事を読んでいない方はまずそちらを参照してください。 ① ② ③ ④ おはなしはここで終わっています。 この作品は、単体でも非常に豊かな内容を持つものですが、「君たちはどう生きるか」の解釈をすすめる手がかりとしても非常に重要な作品です。 「君たち」と比較した場合、テーマとして何が残され、 何が削ぎ落とされているのかという事。 そこから「君たち」で本当に言いたかったのが何なのかをあぶり出せます。 そし

          戦後に書き直された文学作品としての「君たちはどういきるか」 その⑤

          警告!『君たちはどう生きるか』こう読めば100倍つまらない!! 20220617ver

          私の記事は、「君たちはどう生きるか」を読解してゆくにあたっての、致命的なネタバレを多分に含みます。 「君たちはどう生きるか」は、世界最高の冒険小説です。 ネタバレをしてしまえば、二度と自力で冒険に出ることはできなくなります。ですから、この先読み進める方は、世界最高の作品をドブに捨てるつもりの覚悟をしてください。

          警告!『君たちはどう生きるか』こう読めば100倍つまらない!! 20220617ver

          戦後に書き直された文学作品としての「君たちはどういきるか」 その④

          これまでの「星空」関連の記事→ ① ② ③ 手紙の書き手である<おじさん(ぼく)>は、読み手である<純一>に手紙を通して語りかけ続けます。 (次の記事へ)

          戦後に書き直された文学作品としての「君たちはどういきるか」 その④