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児童養護施設の道具屋さん

厳密には養護施設ではないけど、15歳から2年半施設で暮らしていた。
最近は年齢上限が撤廃されたらしいけど施設にいるほとんどの子が未成年だったので、契約行為ができない。
バイトや学校などで保護者の承諾が必要な場面では施設長が代理人になってくれていたけど、令和のJKの必需品であるスマホは支払い能力があっても本当の親を挟まないと契約ができなかった。

そもそも親との関係が良好であれば基本的に施設に来ることはないので、当時施設にいた未成年の半分くらいはsimあり(キャリア通信ができる)のスマホを持っていなかった。
そういう子たちはバイトで貯めたお小遣いの中から中古のiPhoneなどを買って外でフリーWi-Fiを拾うなどして、好きなタイミングで自由にインターネットは使えないもののスマホそのものは持っていた(意味ある??)

こんな感じで施設で暮らしていると契約行為自体が難しかったり、持っていても消灯後は職員室で預かられるなどルールが厳しかった関係で、施設内でのスマホに関する不満は門限の次くらいに多かった。
そんな中でたまたま親の機嫌がいいタイミングで同意書を書いてもらえて、楽天モバイル(店頭に行かずネット完結で未成年が契約できるキャリアがこれしかなかった)の回線を手にいれることができたわたしは、施設で仲良くなった子たちにテザリングでWi-Fiを提供していた。
特に自分から料金を請求した覚えはないけど、使っていた子たちは自主的に月1000円ほど渡してくれた。
楽天モバイルは20GB以上の利用はいくら使っても料金が一定のため、3人以上に貸せば自分は実質無料で使える計算になった。

わたしからのテザリングによって、施設内にいるか外で一緒に行動している時はスマホが使えるとはいえ、バイト先は全員別だし休日は施設の子たちとは別の場所で遊びたいので、それぞれ不便は感じていた。
そこでわたしは、ジャンクのAndroidスマホとプリペイドsimによる、未成年でも好きな時に通信のできるスマホを設定込みですぐ使える状態にして転売する"道具屋"を始めることにした。

それからのわたしは、それまでにテザリングでWi-Fiを貸していた子にその話を持ちかけ、プリペイドsimのリスク(20GB使えば予告なく飛ぶ、使ってなくても突然飛ぶことがあり文句は言えないこと)をあらかじめ伝えて了承を得てから秋葉原に出向き、中国人転売ヤーとチー牛オタクに挟まれながらジャンクスマホコーナーで動作するスマホを集めた。
その後に施設近くのコンビニで受け取り指定したプリペイドsimを買ってきたスマホに入れて設定をして、一万円札と引き換えに施設の子に渡していた。
スマホ本体が4000円、sim代が3000円とするとすごく儲かる商売ではなかったけど、買った子たちから地位を得ることはできたし、スマホの他にも日々のメンケア(このあたりの思い出もnoteにしたいね)で良い思いをしていたので、施設側にバレるリスクを常に負う負担を抜けば"道具屋"の経験は悪くなかったと思っている。


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