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施設から少年院に行ったメンヘラ

15歳で施設に入った時、同じタイミング(確か2日違いとか)で入所してきた女の子がいた。Sちゃんとしよう。
施設に入ってからバイト先が決まるまでは施設内で掃除や調理の手伝いをしなければならず、初めの頃は必然的にSちゃんと関わることが多かった。

共同作業の時間以外でSちゃんと直接関わる機会はなかったけど、調理で手を洗うときに長袖をまくると大量のリスカ跡があったり、通信制高校の課題提出のためにスマホの使用を許可されると隠しもせずインターネットの人とビデオ通話を始めたりと、ある程度"予兆"みたいなものを感じていた。
(わたしもバレないように似たようなことはやっていたのに、Sちゃんがヤバいということで施設側の注意がわたしに全く向かなかったのが面白い)

Sちゃんもわたしもそれぞれ別のバイト先が決まった後はほとんど絡むことはなくなったけど、側から見ても分かるくらいのペースでSちゃんは問題行動をエスカレートさせていった。
門限超過、髪をピンクに染める、インターネットの人を最寄り駅に呼ぶ、給料日前で所持金がないはずなのに冷蔵庫に大量のお菓子を置くetc……
同じタイミングで施設内の冷蔵庫から私物の窃盗も相次いでいたし、誰が見てもSちゃんが陰で悪いことをしているのは明らかだった。

後から他の子から聞いた話だけど、Sちゃんはネット依存症だった。
ネットにしか居場所がなく、深夜のネットが楽しすぎたのか、門限もあり夜間はスマホ禁止な施設のルールが耐えられなかったらしい。
Sちゃんが消灯時間になってもスマホを辞めないことから職員が彼女の部屋の前まで取り立てに行き騒ぎになるのは日常茶飯事になっていた。
暫くはそんな日々が続いていたが、Sちゃんが部屋に来た職員の前でリストカットを始めて救急車と警察が来る騒ぎにまで発展してしまったため、Sちゃんの今後の処遇についての職員会議が緊急で開かれていた。

警察沙汰になった後のSちゃんは一旦大人しくなったものの、当時未成年だったSちゃんが選べる現実的な選択肢は児童相談所に戻るか入院するかの二択だったからなのか、突然施設から姿を消してしまった。
その後Sちゃんが施設に戻ってくることはなかったけれど、施設を脱走したあとは警察と児童相談所を経由して、国立の児童自立支援施設に入ったことを風の噂で知った。

この施設のことは児童精神科病棟で知り合った、都立の児童自立支援施設にいたものの自傷行為を繰り返して入院してきた女の子が話していたことがある。
そもそも女子が入れる国立の児童自立支援施設は全国で1つしかなくて、名前こそ自立支援施設だけど中身は実質少年院であり、殺人をした小学生とか、民間の児童福祉施設で問題行動を繰り返した子が入る場所で、その女の子は次悪いことをしたらここに入ることになると日々脅されていたらしい。こわい。

髪がピンク色でマイメロのサンダルを履いたままいなくなってしまったSちゃんが、今はどこで何をしているのかは結局今もわからない。
年齢的にはもう成人しているはずだけど、あれほど大好きだったSNSに浮上している気配がないから延長措置でまだ施設にいるのかな……。


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