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【7年の不妊治療を経て】女性、起業家、そして母としてのこれから

mederi株式会社 代表の坂梨亜里咲(さかなしありさ)です。
不妊治療をはじめて7年のタイミングで奇跡的に第一子を妊娠することができ、2023年12月中旬に出産いたしました。

不妊治療で辛い思いをした経験から起業をして5年目、一児の母となりライフステージが変わったこのタイミングで、創業してから現在に至るまでの出来事、想いを振り返ってみたいと思います。

▼起業時のnoteはこちらから

起業のきっかけは、20代からの不妊治療

すべては、26歳からの「不妊治療」からはじまった。
自然な流れで子どもを授かると思っていた私にとって、ブライダルチェックで不妊と診断されたことは、まさに衝撃的だった。そして、その後の日々は、心身ともに大きな負担となっていった。

毎週のように不妊治療クリニックに通い、「うまくいきそう!」「やっぱりうまくいかなかった….」と一喜一憂を繰り返し、劣等感を感じる日々。
当時はコロナ前でリモートワークがスタンダードではなかった時代。幸いにもWEBメディアの運営という職種柄、パソコンさえあれば仕事ができた。不妊治療をしている現実が受け入れられなかった私は、待合室で仕事をすることで気を紛らわしていた。

転機は29歳のとき。
30代へと年齢を重ねる節目に立ち、「今後の人生をどう生きるか」という問いに向き合うことに。その中で、自分の不妊治療経験や知識を活かし、1人でも多くの女性に後悔のない人生を送ってほしいと強く感じ、その願いが、私の起業の原動力となる。

起業一年目、自信を失う

思い立ったが吉日。さっそく会社を登記し、事業の準備に取りかかった。

原体験から女性が自分の望むタイミングで妊娠・出産・キャリアを実現できるようなサービスを模索。コーチングや卵子凍結事業、自宅でできるホルモン検査、福利厚生事業などさまざまなアイデアを思考し、まずは私が自身の妊娠のために飲んでいた成分を凝縮したサプリメントを販売することに決めた。

クラウドファンディングで最初のプロダクト販売を開始し、たった24時間で目標額を達成することができた。しかし、その後、事業は順風満帆とはいかなかった。

サービスがスタートした直後、生殖医療の第一人者である産婦人科医・吉村 泰典 先生とご挨拶させていただく機会があったが「君みたいな課題感を持った人がたくさん挨拶に来てくれるんだけど、なかなか続いている人はいないんです。」と、厳しい現実を教えてくれた。同様に、婦人科領域で事業を展開されている方々からも、「女性ヘルスケア領域での事業存続は難しいだろう」という助言を受けた。
また、資金調達の過程でVCからは理不尽な理由で断られたり、プロダクトが届いてほしい人に届かず事業計画がうまくいかなかったり……と自分の力不足を痛感し悔しかった。

挫けそうになった起業1年目、私の心を支えてくれたのは、起業に込めた想いだ。不妊治療や婦人科領域での経験から生まれた、女性の幸せを願う強い想い。厳しいお言葉や苦しい経験が、その想いを強くし、前進することができた。

自信を失いながらも、なんとか調達した資金で、正社員を1人迎え、事業を続けた。当時の私にとって、収益が安定していない中で正社員を採用するという決断は大きな一歩だった。今でも、事業の成長や方向性に不確定性がある中で社員になってくれた彼女には心から感謝をしている。

前澤友作氏との出会いと「mederi Pill(メデリピル)」の誕生

ある日、Twitter(X)を見ていた時、ZOZO創業者・前澤友作氏による「10人の起業家に10億円出資する企画」の告知が、目に飛び込んできた。
あの前澤さんからフィードバックをもらえるーーこんな機会はなかなかないと、ワクワクした私は思い切って応募したのだった。

そして、3次選考以降は1ヶ月に1回、時には2回も前澤さんにプレゼンをする機会を与えてもらった。結果的にmederi社は応募総数4331件から13社に選ばれ、前澤ファンドから出資してもらうことに。
起業して女性向けの健康サポート事業を行っていく中で、男性からの視点や社会の理解が必要だと実感していたタイミングだったので、とても嬉しかった。

当時のフェムテックというと、資金調達時やメディア取材も含め、女性だけの閉じられたどこか触れちゃいけない空気も漂っていたのだが、前澤さんが関与してくれたことで、幅広い世代の女性、男性、投資家、メディア媒体が注目してくれ、興味を持つ層が広がったと感じている。
(現にmederi第二号社員の大池は前職の男性上司だが、「前澤さんのツイートで、坂梨やmederiのことはずっと注目していた」と、オファーしてから即決してくれた。)

前澤ファンド出資後も、前澤さんは頻繁にディスカッションの時間をくださった。私が実現したい社会のために何をすべきか、そしてビジョンの実現についてディスカッションを重ねて生まれたのが、オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」である。

mederi Pill(メデリピル)について
メデリピルは、いつでもスマホから簡単に受診できる、「誠実」と「続けやすい」を大事にしたオンラインピル診療サービス。初月ピル代無料、診療代はずっと無料。
【公式サイト】https://mederi.jp/

mederi Pill(メデリピル)は、私自身が生理不順を治すために10代の頃から妊娠を望むまでの10年間ほどピルを服用していた経験から着想を得たサービスだ。ピルの服用によって生理周期が整い、日常生活でのストレスが軽減されたことから、同じような悩みを抱える人々に役立つサービスを提供したいと考えた。

いまでも前澤さんは、多忙なスケジュールの中でも毎月欠かさずミーティングを組んでくれ、アドバイスをくれる。前澤さんの知識と洞察力にはいつも驚かされるし、自分の未熟さを感じるが、同時にもっと頑張ろうと思わせられる。
前澤さんとの出会いがなければ、今のmederiもメデリピルも存在していなかったと思うと、あの時、無邪気に企画に応募した自分の行動力を褒めたい。

目指す社会へ一歩ずつ近づいている感覚

起業して2年目のタイミングで、オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」をプレリリースすることとなった。

当時はまだまだ少数のチームだった。社員1名と業務委託メンバーという状況で、私は提携してくれる産婦人科を探すために奔走した。さらに、サービス展開に必要な情報を収集するために、国会議員秘書のインターンシップをしながら、試行錯誤の日々を送っていた。

まだスタートをしておらず名もないサービスであったが、私の友人である産婦人科医が医師集めに協力してくれた。致命的な症状が出てから外来を訪れる女性を普段から多く目にし、「もっと早く来てほしかったのに」ともどかしさを感じていた産婦人科の先生たちが、協力をしてくれることとなった。

準備が整い、不安と期待に胸を膨らませ、先行会員の募集を開始。
その結果、1万7000名以上の応募があり、自分たちが提供するサービスが本当に必要とされていることを強く感じた。この想像を超える数の応募によって、より良いサービスを提供し、多くの人々の役に立ちたいという思いが強まった。

プレリリース後は、さらなる改善を重ね続けた。私自身もスタッフとして毎日提携医療機関へ通い、カスタマーサポート、事務、発送などさまざまな業務に携わりながら、診療予約ツールや配送スキームの構築、サービスの品質向上に努めた。

それから半年後に、正式リリース。

TVCMとともに発表したステートメント

メデリピルをより多くの人々に知ってもらうために、さまざまな施策を展開した。その中でも、芸人・フワちゃんを起用したTVCMの全国展開は、大きな注目を集めることとなった。
通常、このような大規模な広告施策には多くの人員が必要とされるが、私も含め正社員3名と少数精鋭のメンバーで挑戦した。この経験から困難な状況でも、チームで協力し合い、最善の解決策を見つけ出すことができるという大きな自信にも繋がった。

現在、メデリピルの登録者数は約28万人を超え、多くの女性にご利用いただいている。
サービスをスタートしてから、本当にいろんなことがあった。ユーザーさんのために全力で一つ一つの事柄に泥臭く真剣に向き合い、試行錯誤を重ねたサービスが、女性たちの忙しい毎日に寄り添えていることがとても嬉しい。

また、メデリピルの利用前後で産婦人科に対するイメージが改善されていることや、ユーザーさんの健康意識が高まり定期的な婦人科検診に繋がっているという調査結果も出ている。この結果は、mederiが目指す社会へちょっとずつ近づいていることでもあり、ますますやる気が湧いている。

33歳、妊孕力の低下に向き合う

メデリピルのユーザーさんからの感謝の声や、サービスが欠かせない存在となっているとの声をいただけるようになり、これまで不妊治療をしてきた自分を受け入れられるようになった。むしろ不妊治療に、感謝の気持ちすら生まれている。

会社はメンバーも増え、第二号社員の大池が取締役に就任してくれたり、冒頭で紹介した厳しい言葉をくれた産婦人科医の吉村先生までもが社外取締役に就任してくれるなどの嬉しい変化もあった。

基盤が整いつつある中で、私は年々妊孕力が低下しているという現実に向き合い、今後の不妊治療を考えることに。

ーー不妊治療を続けるか、ほかの方法で子どもを得るか、そろそろ次のステップに進みたい。
医師から着床可能性が低いと告げられた受精卵がたった一つだけ残っていたので、踏ん切りをつけるために戻すことにした。

移植後、これまでのように「残念でした」と言われるだろうと覚悟をして結果を聞きに行くと、医師から「着床しています」と想定外の言葉が。これまでの長い通院人生で、初めて聞いた言葉に耳を疑った。しかし、着床しているからといって順調に進むとは限らない。妊娠初期は喜びに浸ることなく、これまでの不妊治療経験で育んだ「感情を無にする」スキルで粛々とクリニックに通い続けた。
心拍を確認できても出産できるまで安心できず、母子手帳をもらいに行くことや産院の予約をすることさえ躊躇し、どちらもギリギリのタイミングで行動に移したのだった。

妊娠がわかってから、幸いなことにつわりはなく、体調も比較的良好なほうだったので週末もこれまでのように働くことができた。
しかし、会社のメンバーや株主への報告が悩みの種だった。ついこの間までは不妊であることが悩みだった私からは想像ができない、贅沢すぎる悩み。

突然の妊娠報告によって、事業に与える影響や私の役割に対する期待などに不安が生じないだろうか……。
妊娠をした女性起業家から、事業にコミットできなくなるのではという不安感や、罪の意識が芽生えたと聞いたが、まさにその感覚。

着痩せするタイプなのか外見からも妊婦であることが分かりづらかったため、自分から話を切り出すしかなかった。
悩んだ末、会社のメンバーへは妊娠5ヶ月のタイミングで報告したものの、前澤さんには一向に報告する勇気が出なかった。MTGのたびに報告しようと決意していたが、いつも通り事業の話をするだけでいっぱいいっぱい。
妊娠8ヶ月でついに報告できたとき、前澤さんは驚きとともに温かい祝福の言葉をくださった。その瞬間、ホッとして気が楽になり、むしろなんでもっと早く報告しなかったんだろうとさえ思った。
周囲の理解と激励の言葉を受け、仕事と育児の両立を頑張ろうと決意したのだった。

不妊治療7年目、念願の妊娠・出産

妊娠7ヶ月頃から、お腹がぐっと目立つようになり、顔や足のむくみもひどくなってきた。でも、体調は比較的良好だったので、結局入院する前日まで働き続けた。周囲からは「休んでゆっくりしてほしい」と言われたが、起業家の私にとっては仕事が生活の一部であり、休むことがむしろストレスになるため働いた。

そして出産予定日当日に、無事、第一子となる娘が生まれた。予定日ちょうどに生まれることは、初産の場合にはわずか5%ほどの確率とも言われていて、珍しいことらしい。子宮の中にいるときに「12月13日(予定日)に生まれるんだよ」と何度も言い聞かせたからかもしれない。産後のスケジュールを仮確定していたため、生まれて早々親孝行をしてもらった気分である。

出産は、これまで生きてきた中で最も激痛で、耐え難いものだった。
先輩ママから「出産後すぐにパソコンを開いて仕事のメールを返した」というエピソードを聞いて、私もそうなるだろうと思っていたが、現実は全く違った。出産が母体にあたえるダメージは、交通事故レベルと表現されることがあるが、まさにその通り。脳内がぼんやりし、ふわふわする。そんな中、産後1週間ほどで取締役会が開催されるため、仕事に復帰したものの、いつもの自分の10%程度の思考力で無力感に襲われた。

産後2ヶ月経って

産後の生活は、これまでと一変し、まるで新しい世界に飛び込んだかのよう。最初のうちは、授乳やおむつ替えなどにも慣れず、夜間授乳の睡眠不足もあり、心身ともに疲労。
娘がなぜ泣いているのか理解できなかったり、ちょっとした異変があると、すぐにネットで情報を検索。さらに睡眠不足が加速するというループ。
SNSを見ていると、月齢ごとに貴重なイベントがあり、その都度ディレクション業務も並行せねばならず大変だなぁ〜と実感。

現在、産後2ヶ月が経過した。無事、娘の1ヶ月検診やお宮参りも終え、ひとまずはほっとしている。家族や会社のメンバーが支えてくれているおかげで、新しい生活に少しずつ余裕が生まれ、育児と仕事の両立を楽しめるようになってきたところだ。
妊娠・出産・育児を経験する中で、世の中の課題に対する視野がより広がった感覚があるため、新たな事業アイデアに生かしたいなと強く思う。

仕事に関しては、組織が拡大する中で、私が社長として担うべき役割について深く考えるようになった。社長は現場から離れた方がいいという声もあるが、メンバーへの信頼、権限委譲のバランスを考慮しながら、現場主義でありたい。これまでのように定期的にクリニックに足を運び、オンライン診療のサポート業務を行い、ユーザーさん一人一人の声を大切に、サービスの質を向上させていきたい。

mederiのこれから

私だけでなく、mederiも新たなステージに進んでいる。この4年間の挑戦から得た経験や成果を生かし、さらなる進化を目指すフェーズに突入している。

より女性が生きやすく暮らしやすく、働きやすい社会にむけて。
メデリピルを通して、女性が健康に関して正しい情報を得られること。自分の身体に興味を持つきっかけとなり、満足のいく人生を築く一助となるよう、サービスを更に発展させていきたい。

そして、産後ケアや更年期症状のケアといった領域にも進出し、どのライフステージにおいてもmederiのサービスがあることに安心感を与えられる存在になりたい。

最後に

起業してからの4年間を振り返ってみると、改めて自分は大した人間でないことに気付かされます。
どんな時も、諦めず、自分の想い主張し続け、早く行動した。そんなシンプルな連続が、現在に繋がっています。
自分の選択を正解にし続けるために大切にすべきことは、きっとすごくシンプルなのだと思います。

それから、私の人生は、全ての女性の正解ではないです。
結婚する・しない、子どもを産む・産まない。自分の人生は、あなたがどんな選択をしても正解にできます。

ただ、知識の欠如から、あなたの人生の選択に後悔が生まれることがありませんように。さまざまな選択肢から納得できる選択をできますように。

私、そしてmederiが創り上げていくサービスが、女性の人生にポジティブな変化をもたらせるよう、全力で取り組んでいきます。

もっと誰かを愛でる。もっと自分を愛でる。そんな社会を目指して。


【最後の最後に…】
会社は5期目を迎え、起業家として、働く女性として、一児の母として、常に新たな悩みや壁と直面しては、もがきながら乗り越えている日々です。そんな日常の中で得た情報や、働く女性の悩み解決のヒントとなるような情報発信をXで積極的にしていきます。ぜひフォローしてくださると嬉しいです!

坂梨亜里咲 X ▶︎ https://twitter.com/aricherababy


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