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夢を叶えるための鍵は『火花』にある

「現実を見ろ」って、めちゃくちゃ嫌な言葉ですよね。
頭ごなしに夢を否定する人とは関わりたくないし。

ですが、これから紹介する小説『火花』を読めば、その言葉の本当の意味が分かると思います。

作者はお笑いコンビ・ピースの又吉直樹さん。
「芸人さんが書いた芸人さんがテーマの小説でしょ?お笑いあんまり興味ないんだよな〜」
と思うかもしれません。正直わたしもそうでした。

ですが、お笑い芸人という夢を掴んだ又吉さんが書くからこそ、現実を見ることへのリアリティを感じ、心に深く刺さります。

生き方に正解のない現代に戸惑う反面、大きな夢や目標も描きやすくなりました。
そして、叶えられない夢はないとわたしは信じています。

ただ、わたしたちは現実の中で生きていく必要があります。この社会で暮らしていく以上、衣食住を守るためにお金を稼がなければいけません。

この小説では、二人の登場人物がそれをはっきりと提示しています。

ネタバレあり!物語の内容

主人公の徳永は売れないお笑い芸人。
ある舞台で神谷という先輩芸人と出会います。
神谷は自分のおもしろさを貫き、徳永はそれに憧れと恐れを抱きます。

徳永は神谷の素直な生き方を羨ましく思いながらも、この社会で生きていくという現実からは脱せずにいました。自分の面白さを伝えるためには、人から求められる形を取らなければならないことを理解しているからこそ、そんな自分をもどかしく感じ、そこに縛られない神谷に憧れを抱きつつも、この社会に生きる一人の人間として恐怖を感じているのです。

「現実を見ろ」というのは嫌な言葉ですが、おそらく「ちゃんとみんなに良さが伝わるように伝えろ」という意味が含まれている場合もあるのかもしれません。
芸人を画家に例えた場面では、それが分かりやすく説明されていました。
神谷は自分が描く絵に魂を注ぎますが、徳永は絵を飾る額縁のデザインも、自分の絵の価値を決める重要な要素だと知っています。
自分の世界観を守るためには、社会が評価する額縁を選ばなければならないのです。

最後に、神谷は自分が面白いと思っておこなったことを、唯一仲が良かった社員に引かれてしまいます。
徳永は「自分は神谷がどんな人か知っているけれど、神谷を知らない人から見たら、それは人をバカにしている行為だと思われる」と怒ります。
この世にはモラルがあり、それを無視することはできないのです。

自分の信念を守るために

読んでいる途中で何度も笑ってしまう小説は芸人さんならでは。
涙が出たり、世間に受け入れられないもどかしさを切なく思ったり、いろんな感情を一度に味わえる一冊です。

どんなメッセージを受け取るかは、その作品を読む人によって異なります。それが小説の面白いところだと感じます。
物語の本質としては、ここ数年で笑いの幅が狭くなったことを嘆いているのかもしれません。テレビのコンプライアンスなどもあります。
ただ、わたしは「社会から受け入れられる形で自分を貫く」ということの重要性を説いていると感じました。

「自分の理想を追求する。他人に分かってもらえなくてもいい。」
かっこよくて憧れる心意気です。
でもこの本は言います。
「自分の信念を守るためには、大前提この社会に生きる人間であれ」と。

自分のスタイルを貫きながらも、相手の立場や考え、社会の空気にも気を配り、適切な言葉やアプローチで伝えることを心がけていきたいと思います。

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