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タイサル!第45話「タイ長期滞在開始!タイサル第二章、波乱の幕開け」

みなさんこんにちは、ついに在タイ民になって1ヶ月くらい経った豊田です。
2023年4月から、3年半のタイ長期滞在生活が始まりました。
今までは主に過去のタイ生活の思い出を振り返ってきたタイサル!ですが、今後はリアルタイムに日々の暮らしを書くことができそうです。
いわば「第2章」の開幕です。

note記事を書くのはけっこう大変なのでついつい他の仕事を優先してしまいがちなのですが、記録をきちんと残していくことや、継続して一定量のまとまった文章を習慣的に書き続けることのメリットを本の執筆作業で実感したので、タイサル!も本格的に再開していこうと思っているところです(このセリフいつも言っている気がする…)。

もともと陰キャで出不精な私は、下手をすると長期滞在期間中ほとんど調査地から出ないということも十分にありえます。今回は滞在期間が長いので、研究も余裕を持って進めつつ、せっかくなのでたまにはタイサルのネタを求めてちょっと外出するきっかけにもなればなー、と期待しています。

今回のタイ長期滞在の背景

冒頭にも書いたとおり、今回は3年半のタイ長期滞在となります。
これは、私が昨年度から日本学術振興会の特別研究員CPDに採択されたことによるものです。この特別研究員CPDには、「国際競争力強化研究員」という名前がついています。この制度の概要は、ざっとこんな感じです。

独立行政法人日本学術振興会(以下、「本会」という。)は、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資するため特別研究員制度を実施しています。
この特別研究員制度の一環として、優れた若手研究者に海外の大学等研究機関で長期間研究に専念する機会を与えること、若手研究者が海外の研究者とのネットワークを構築することは、研究者として更なる成長を遂げる上で極めて重要です。
このため、本会は、優れた研究能力を有し、日本国内及び海外の大学その他の研究機関で研究に専念することを希望する者を「特別研究員-CPD(国際競争力強化研究員)」に採用し、長期間研究に専念できるよう支援します。

日本学術振興会特別研究員-CPD募集要項

わかりやすくまとめると「海外に長期派遣したるから向こうで研究頑張ってなー。あ、ちゃんと日本の役に立つコネも忘れんと作ってくるんやで!」という制度です。

このCPDに採択されると、最低でも3年間は継続して海外で研究の従事することになります。日本への一時帰国は、研究遂行上の用務がない限り、基本的には認められないみたいです(例外あり、要相談っぽい)。

ということで、私は3年半のタイ滞在計画で申請書を書いて提出し、採択されました。その派遣期間(CPDでは”主要渡航期間”という名前がついています)が、この4月から始まったというわけです。

今回でタイ渡航も28回目。

手慣れたもんやで!と言いたいところですが、実は、今回はいつもの渡航とは全く違う、嫌な予感しかしない、史上最低の渡航でした。

3年半の渡航とは思えない荷物。もはや必要なものは一通り調査地に揃っているので…


波乱の幕開け①調査許可が降りない!

実は今回の長期調査再開を前に、年明け早々に新しい調査許可を申請しました。研究内容が変わるためです。通常、調査開始の60日前くらいを目処に申請するのですが、私は念の為余裕を持って90日前に申請を出したのでした。

ところが、3月になっても許可が降りた旨の通知が来ず。

3月半ばになってようやく現地カウンターパートから「役所からメールが来たので対応せよ」との連絡。ようやく許可がおりたか…と思ったら、まさかの内容でした。全部タイ語で書かれていて、その時点で外国人に読ませる気がなくて謎なんですが、内容はざっと以下の通り。

「調査許可申請書類のフォーマットが変わりました。メールに添付の新しいフォーマットに、申請内容を全部記入し直して、改めて送ってください。このメールを受け取ってから15日以内に提出がなければ、あなたの申請は却下します。じゃ。」

なんじゃこりゃー!
しかもこのメールが送信されたのは3月9日、カウンターパートから転送されてきたのは3月19日。その時点でもう10日が経過しています。残り5日。無理ゲーだろ!ふざけるな!

そもそもなんでこんな事になってんの?と思って転送メールを見たら、宛先に入っていた私のメールアドレスにまさかのタイポ。どうりで私のところに届いてないわけだ…こんなミス、学部生でもせぇへんやろ…

っていうか、申請途中でフォーマット変わったから新しく書き直せ、っておかしくない?それも1月に出した申請ですよ?なんなら2月くらいに一回修正要求あったやん?3月にはとっくに許可降りててもおかしくないやん?それを調査開始の1ヶ月前に、フォーマット変更を理由にふりだしに戻すんですか?なんなの?

その頃私は日本で出国前準備で大忙しでした。海外転出届、渡航中の年金や税金納付代理人の届け出、海外旅行保険の契約、タイでの銀行口座開設申請…
おまけに今年度から国内の所属先が異動になったこともあり、書類仕事が山積み。

あぁ、もうダメだ…間に合わない…

ということで、お役所には「メアドが間違ってて僕のところに届いてなかったです。締切にはとても間に合いません。そもそも全部タイ語だから時間かかります。いろいろと無理です。タイに行ったらやるから申請却下せんといてください、お願いします…」と返事をして、タイに行ってから申請手続きをすすめることになりました。


波乱の幕開け②渡航タイミングのミス

そんなわけで珍しく気が重ーーーーーいタイ渡航となった今回。
4月10日にタイ入国。
翌日から現地銀行口座の開設等々やりながら、現地大学に出向いてカウンターパートと書類の準備作業を開始。カウンターパートはお役所の傍若無人っぷりにブチギレ。やれやれ…

一通り書類の準備が終わったところで、衝撃の事実が発覚します。

タイは13日からソンクラーン休み。
大学もお役所も16日までお休み。
大学で関係各所のサインを貰えるのは17日以降になってから…
そこから手紙を役所に郵送して再審査だから、5月1日で間に合うかどうか…

当分何もできない!!

「どうすんの?」というカウンターパートの質問に、「水かけて遊んどる暇があったらさっさと印鑑押してくれ!!!!」という心の声を押し殺し、「マイペンライカップ…」と返事をし、トボトボと大学をあとにしました。


秘技!時間を遡る魔法

調査許可がないということは、研究ができないということです。
正確には「データを取っても許可期間外のものは使えない」ということですが。

しかし、ここはタイ。
なんとこの国では、時間を遡ることができる場合があります(意味不明)。

例えば。
6月1日に「はい、調査許可降りたよー」という通知が届くとします。
日本の感覚でいくと、調査開始が6月1日から認められた、という解釈になりますし、書面上もそういう意味です。
当たり前です。

しかしタイでは、6月1日に通知が届いたとしても、承認が降りた許可証の発効日が”5月1日”になっている、ということがあります(意味不明)。
ことがある、というか、過去全部こんな感じです(意味不明)。
許可が降りてから通知が出るまでに数週間から1ヶ月位のタイムラグがあるのです(意味不明)。
この場合、調査開始が5月1日から認められた、という意味です(意味不明)。
ただ、通知が届くのに時間がかかった、というだけです(意味不明)。
つまり、許可の効力は時間を遡ることができます!!(マジで意味不明)

なので、こういう場合、とりあえずデータ収集を始めることが賢明な判断になります。もっとも、申請すらしていないのにデータを取り始めてはいけませんが、許可が降りる時期がおおよそわかっていてあとは通知を待つのみ、という段階では、現地大学からはGOサインが出る場合がほとんどです。発効日が若干ずれていれば、あとからその期間分のデータを捨てればいいだけです。5月1日付で通知が来なかったからといって、通知が届くまでデータを取らずにただボーーっと待っていると、後で結構な時間的損失を被る羽目になります。

今回も役所からは「5月1日発効を前提に処理進めとくよー」という確認が取れていたので、とりあえず調査地に入って、準備を進めておくことが最善。現地カウンターパートからもGOサインが出たので、調査地の保護区長さんに話を通し、連休明けの4月20日、ようやく調査地に入ることができました。

連休中何をしていたかって?

ソンクラーン(という名のコロナ拡散行事)には参加せず、ホテルに籠もって原稿書いていました!

ではまた次回!

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タイサル!シリーズ過去の配信アーカイブはこちらから↓

連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n28a1dc0c9402
第1話「海外調査の生活拠点」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n985accf6fef3
第2話「調査地で楽しむタイ料理!食事編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5444528ab0bb
第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5bcd9a17bc1
第4話「シャワーも命がけ!?お水事情その②」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7c4f68bf12d1
第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n56d26d529251
第6話「泥水との激戦を終えて」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n375ca4ab7be2
第7話「調査生活のオトモ!タイの犬たち」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7968f75aea75
第8話「その日のことはその日のうちに!調査の1日のルーティンワーク」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfdac8fac1ec6
第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n4fef7eb2e320
第10話「写真へのこだわり」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na4da37e13e8d
第11話「誰だ誰だかわからない!個体識別の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1648bde20bab
第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n24c3478ea661
第13話「サルたちの名前の付け方の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nb6a8e6119ced
第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9a7a6814730d
第15話「タンブン行為で私が心配していること」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd1360f5568af
第16話「タイ生活の必需品、プラクルアンとは?」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n6bcc5b875bb5

タイ南北調査特集はこちらから↓
第17話「南北調査シリーズ開始&YouTubeチャンネル開設のお知らせ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ncab1c13b6bf9
第18話「南部調査その①:Puckerを拝みに...キタブタオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5d3df0969439
第19話「南部調査その②:白いメガネが印象的!ダスキールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na32091a5b055
第20話「南部調査その③:見慣れたサルのはずなのに...ベニガオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n3488e5942c1a
第21話「南部調査その④:アナタどこにでもいるわね!カニクイザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n219720155be3
第22話「北部調査その①:黄金の赤ちゃんを求めて〜ファイヤールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndeb079c8825c
第23話「北部調査その②:ガイコツの隣でうんち拾い...アッサムモンキー編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/naf23f701a677
第24話「南北調査おまけ:噂のココナッツモンキーを求めて−モンキースクール編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfb50e551aa1a

第25話から調査地シリーズに戻ります↓
第25話「年に一度の風物詩!コウモリ集団飛翔の撮影秘話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n0b4911b372e2
第26話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n264fade216ea
第27話「思い出いっぱい!タイで購入したmy冷蔵庫の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n071966d6f39a
第28話「クリスマスにひとりで死にかけた話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nead29459b1db
第29話「調査地での同居人・チンチョッとの日々のあれこれ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nab48db873ca1
第30話「30回更新記念:タイサル!シリーズの振り返りと今後について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd7f4df7fdc46
第31話「雨の日の定番!カエルの唐揚げができるまで」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n46e0aa051425
第32話「ベニガオザルの噂の真相」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndde380f51a93
第33話「担当イラストレーターさんとnoteコラボやオリジナルグッズ誕生について対談してみた」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n2d34def8697b
第34話「調査地を思い出すタイの歌ー独断と偏見で選ぶ私的25選」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n95cddb7e6dfb
第35話「11月といえば!タイの恒例行事、ロイクラトンの話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n2999bc1434a5
第36話「調査地の山に眠る黄金の仏陀像を拝みに行った話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5f6521ee811
第37話「第2の調査地開拓なるか!?お隣さんの視察調査の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n913898fb06a2
第38話「あくびシリーズの隠れミッション:ベニガオさんの犬歯サイズを記録せよ!」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne3dcefbabb72
第39話「謹賀新年!2021年の振り返り&調査地で過ごした年越しの思い出」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n70a15e661168
第40話「調査地で出会った憧れの奇蟲スペシャル※蟲警報再発令!」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nc0b490d76cf7
第41話「ついに完了!コツコツ骨計測&オンラインガイド振り返り」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9aa1341b7e13
第42話「2年ぶりのタイ調査!出国準備〜隔離ホテルチェックイン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9c016553d1a8
第43話「2年ぶりのタイ調査!隔離生活編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n93252e195940
第44話「2年ぶりのタイ調査〜調査地生活編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1f6a88ccac30

番外編の過去の配信アーカイブはこちらから↓
私論:「ココナッツモンキー」は動物虐待なのか?
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne6add28fc064
遺跡の街ロッブリーに住むカニクイザルの歴史
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1679cb4029b2
執筆後記:「白黒つけないベニガオザル」発売!
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nbdaac5411f19

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