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学芸員になるまえに

突然ですが、4月から建築系の学芸員として働くことが決まりました。学生時代に建築と博物館学の両方を学び、建築系の学芸員になることが目標の一つだったので、思いのほか早くに目標に辿り着きました。

いまの会社に辞めることを伝えたときや、仲のいい友人に報告したとき、自分が働く館にみんなが良い印象を持っていることで安心しました。というのも、私自身が学芸員という職業になることに対して、漠然とした不安を持っているため、周りの声に励まされたということがあります。

学芸員資格を持っている人や、いま現在学んでいる人はよくご存知かと思いますが、学芸員資格は学芸員になるためのアドバンテージにはならない資格です。あくまでも、学芸員になるために最低限のスキルを持っているという証明のひとつにすぎません。実際に、私もひと通りの課程を修め学芸員実習を経験した身ですが、何かが身についているという実感があまりにも薄いのです。

日頃から学芸員の求人をチェックしていましたが、それらの多くは学芸員資格は必須とした上で、学芸員としての職務経験が求められていました。つまり、新卒から学芸員になるというのは、とても狭い門なのです。また、業界全体で学芸員の人材が飽和状態にあると感じています。その中で、学芸員になれる私はラッキーなのかもしれませんが、自分に資質が足りているのかどうか悩む瞬間があります。

学芸員と一口に言っても、所属する館や組織の性質や、その中での担当分野も考慮に入れると、活動内容は千差万別です。さらに、収蔵資料の質によって、その取扱い、保存、IPM、展示のそれぞれのレベルは変わってきます。私の所属する館がどの活動を重視しているのか、まだ見えてきていませんが、活動内容が資質に合う、合わないというのは大いに存在していると思います。

今の職業は展示系の企業で、博物館のプロデュースを専門に取り組んでいます。つまり、現職では学芸員は「お客さま」にあたることになります。今の立場から、お客さまの立場になる感覚はまだ掴めていませんが、現職で得た経験が役に立つこともあるかも知れません。そう言った意味では、学芸員に採用してもらえたのは現職のおかげかもしれません。

これから学芸員になる前に、少しばかり自分の不安を整理してみました。これから私にできることは、着任までに学芸員、そして建築について学び直すことですね。

追記
「学芸員」という言葉を繰り返し使いましたが、学問の総称として良い言葉がないのに気付きました。「博物館学」という言葉もありますが、やや不足するような気がします。こう言った点も、学芸員という職業の専門性の幅広さを示しているような気がします。

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いま読みたい本ですが、土居義岳『空想の建築史』です。

書店で見かけた時に、ハードカバーとその厚さに一旦買うのを控えてしまいました。Kindleでも読めるみたいなので、そちらでも検討したいと思います。

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