読書感想文(366)孫泰蔵『冒険の書;AI時代のアンラーニング』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回はオススメされて読んだ本です。
著者は孫正義さんの実弟だそうです。

この本は先月読んだ本ですが、感想文を書くのをサボっていて12月になってしまいました。

感想

読書案内としてはいいなと思いましたが、筆者の主張はあまり参考になりませんでした。
言葉を選ばずに言えば、金持ち視点の発想だなぁと思いながら読みました。
具体的には学校の在り方に関する話で、教育格差の視点が抜け落ちていることなどです。

著者の言うように、色んな立場から色んな発想を得るというのは確かに大事なのですが、一方で素人(そこまでの議論の前提を知らない人)が既に終わった議論を蒸し返し、それを改めて説明していたらキリがありません。
やはりある程度専門家を信用することも大切だと思います。勿論、権威による論証のみに陥ってしまうのはよくありませんが、それこそ最近はインターネットで複数の人が監視している状態なのですから、複数の専門家による反論があれば問題無いと思います。
このように考えるのは、著者と専門家に対する考え方が違うかもしれません。
例えば最近読んだ『人間の建設』という本の中で、数学者の岡潔は1930年以降の数学を理解するための体系を学ぶ為に修士までの勉強時間がいる(即ち小学校から18年間)と言っています。
逆に言えば、専門家の考えを素人に説明しようと思えば、素人に何年も時間を割いてもらう必要があるわけです。これは現実的ではないでしょう。

以上のような反論がいくつも出てきたので、本書の内容はそれほど深いものとは思えませんでした。
一方、筆者はこのように自分自身で考えることの大切さを本書の中で説いています。
とすれば、筆者は読者の能動性を喚起するためにあえて思いつきのような粗の多い主張をいくつも書いたのでしょうか。
素人の私ですら色んな事を考えたのですから、もし専門家がこの本を読んだら黙っていられないはずです。
もしそれが筆者の意図なのであれば、その試みは(少なくとも私に対しては)成功していると言えます。
ただ、せめて主張の根拠くらいはもう少し論理的に述べてほしかったなぁと思います。

おわりに

もう一度じっくり読む気にはなれませんが、教育史などの名著の話は読み直してまとめてもいいなぁと思いました。
そういう意味では読んで良かったです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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