読書感想文(311)湯本香樹実『夏の庭―The Friends―』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は夏らしい本の再読です。
この本は確か中学生の頃、クラスメイトにオススメされて初めて読みました。
とても良かったことは覚えていたのですが、10年以上ぶりだったので流石に細かい所は結構忘れていました。

感想

とても良かったです。
この本は小学六年生が主人公ですが、なんというか、こう、子供の成長というと安易ですが、濃密でありながらも確かに過ぎ去ってゆく時間を感じてふっと寂しくなります。
私は中学受験をしたので小学校の同級生とは卒業を機に別れたのですが、正直全くと言っていいほど寂しくなかったのを覚えています。そんな自分に対して、「自分って冷たいのかなぁ」と思っていたくらいです。

この本を読んでいて、越谷オサム『金曜のバカ』に収録されている「この町」という作品を思い出しました。
こちらは(確か)中学生主人公がそれほど仲良くないクラスメイト達に対して、「ああ、こいつらはもう居場所があるんだな」なんて感じるシーンがあります。あとは東京に憧れる主人公に対して、「この町も意外と良い所だよ」と先生が言ったり。

今書いてみて、どういう所が共通して思い出したのかははっきりとわかりません。
でもいつか、この三人が再会して、懐かしい昔話で盛り上がれたらいいなぁ、と思います。
と、書きながら、自分の友人について思いを馳せてみました。
中高の友人はもう10年以上の付き合いで、大学の友人ももう5年以上の付き合いです。中高、大学、社会人ではそれぞれ友達と会う時間はどんどん減っていきますが、今後ますます減っていくのだろうと思います。
これを初めて感じたのは大学在学中で、ああ卒業して数年経ったらほとんど会わなくなるんだろうなと思うと、結構寂しく感じました。今はまだなんだかんだで時々会っていますが、例えば結婚や出産があれば、より一層会いづらくなりそうです。この辺り、5年後にはもっとはっきりしているんだろうなと思います。

ホースの角度をちょっと変えると、縁側からも小さな虹を見ることができた。太陽の光は七つの色。それはいつも見えないけれど、たったひと筋の水の流れによって姿を現す。光はもともとあったのに、その色は隠れていたのだ。たぶん、この世界には隠れているもの、見えないものがいっぱいあるんだろう。虹のように、ほんのちょっとしたことで姿を現してくれるものもあれば、長くてつらい道のりの果てに、やっと出会えるものもあるに違いない。ぼくが見つけるのを待っている何かが、今もどこかにひっそりと隠れているのだろうか。

P97

今回は殆ど一気に読み終えてしまったのですが、ここだけは「あっ」と思い、立ち止まってメモを取りました。
とても素敵な表現だなと思います。
小学生ってまだまだ未知でいいなと思いつつ、自分もまだまだ若いんだ、と自分を鼓舞してみたり。
とはいえ言っているうちに中年に突入してしまうので、そろそろ隠れているものを見つけたいところです。

おわりに

昔読んだ本を読むと、思い出補正も相まって、グッときます。
中高時代に何度も読み返した『図書館戦争』も数年ぶりに読み返したいと思いつつ、他にも読みたい本が多すぎてなかなか手が回りません。

そういえば、この本は今年99冊目となります。つまり、次が100冊目です。
節目に読む本は既に決めていますが、こちらも再読本です。残り半年、自分の心の灯火としたい本を読むつもりです。

ということで、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。


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