見出し画像

火山地震学から見る、噴火災害の今【日記2022/11/11】

実は昨日の授業だが、今後の参考になりそうなので…。突発災害に関するオムニバス形式で、今回は地震学の先生の授業だった。授業でまとめた要約と、私の感想・考え(▶)を記載する。

火山地震学はそもそも観測をベースとした研究分野である。そのため、気象庁や自治体との関係が密接である。私の研究するジオパークにも今回の授業担当の先生は関わっており、また所属する学会は日本ジオパーク委員会とも関りが深いため、今後の研究対象者としても考える必要がありそうだ。

自然災害のひとつとしての火山災害

過去300年における日本の火山災害において、犠牲者数が多い事象は、「山体崩壊」「泥流」「土石流」といった土砂災害である。自然災害は、毎年何件も発生しているが、噴火だけに特定してみると、その頻度は低い。かつ、犠牲者の規模も他の自然災害と比べて小さいと言える。

火山爆発指数を示すVEIは0~8の9段階あり、数値が大きくなるほど噴出物の量が多くなる。阿蘇山の9万年前噴火、鬼界カルデラの7300年前噴火はVEI7に相当する。史上最大のタウポ湖の26500年噴火がVEI8である。

VEI6レベル以上となるカルデラ噴火は、過去の発生頻度から考えると、6600年に1度の割合である。前回の噴火が7300年前のため、いつ噴火が起きてもおかしくない状況に今ある。カルデラ噴火は影響範囲が広く、VEI6レベルでも数年は地球環境に影響を与え、VEI7レベルだと阿蘇火山灰が北海道でも見られたように日本全体で火砕流の影響があると予想される。

噴火様式と火山現象の多様性

火山災害は火山現象の結果として生じるが、その現象を知ることが大切であり、また各噴火様式で火山災害が想定されるのか知ることが必要となってくる。

▶ これまで噴火様式を覚えるために図をよく見ていたが、先生は各噴火様式における有名な動画を準備していた。全く違う噴火のため、動画を見て勉強するほうが理解が早い気がする。ただ、それ等の違いを学術的に見分けられるような解説があったらなおよい。

噴火に関連する火山災害は、気候変動や、津波、溶岩流、火山ガス、噴石、衝撃波など様々である。それらを時間と空間の時空間スケールで表すことができる。スケールにおいて、高速短時間で起こる災害は、破壊力も大きく、直接人命にも関わる災害である。また、広域的な災害ほど影響を受ける範囲や経済損失が大きい。

現代のインフラが整った社会では、大規模噴火が実際に起きたことがないため、これまでは社会基盤への影響に関して公的な対策が取られていなかった。しかし、2020年3月内閣府により富士山の宝永噴火を想定した首都圏の大規模降灰による社会基盤への影響取りまとめが公表された。

▶これまで取りまとめがなかったことに驚いたが、それまで火山について分かっていなかったというのもあるのかもしれない。しかし、それの取りまとめが2年経った今、一般市民に広まっているかと言うとあまりそうだとは言えない現状があるのではないか。ドラマなどで取り上げられることはあっても、少々科学的所からずれた取り上げ方をされるし、日常生活からほど遠いものだと捉えられてそうだ。科学技術コミュニケーションの観点から考えると、東京で地震が起きた倍を想定して描かれた「東京マグニチュード8.0」のように親しみやすい映像で、更にしかるべき組織が監修しているモノを出すべきなのではないだろうか。調べてみると、宝永噴火を想定したシミュレーションも現在あるようだ。学術的に世に出すのも大切だが、多くの命がかかわっているため、より分かりやすいハードルを下げた周知手法が必要になると考える。

火山噴火災害の軽減に向けた国や自治体の取り組み

今後の火山活動を予測するために、火山内部の「現象を理解すること」、火山の活動状況を素早く正確に把握し、「活動を科学的に評価すること」、そしてそれらの「情報を発信すること」が必要となってくる。大学等の観測研究機関の使命は現象の理解の部分が大きい。

▶2000年の有珠山噴火で活躍された岡田先生は観測期間の研究者でもあったが、情報を発信する側でもあった。確かに組織化された場合、研究者は現象を理解することが第一の仕事であるが、それだけにとどまる必要はなく、寧ろ情報を発信する側にも回る姿勢が大事なのではないかと考える。なぜ、岡田先生は研究者であるにもかかわらず、情報を発信する側になったのかが気になる。

火山噴火予知計画に関連した機関、研究及び業務に関する成果や情報交換、火山現象についての総合的判断を行うことを目的として発作された火山噴火連絡会がある。これまでの火山噴火予知計画の成果から、活火山の十分な観測を行えば、ほとんどの噴火は短期的な前兆をとらえられることが分かった。ただし、全国111の活火山のうち、50火山が現状観測対象になっているが、対象外の活火山の異変を噴火前に知ることは難しいといった現状もある。

▶噴火前の前兆について自分は前兆地震しか知らない。噴火様式によって前兆が異なるなら、知る必要がある。また、ハザードマップには噴火後の対応については言及されているものの、前兆の傾向についてはなにも記載されていなかった覚えがある。観測データも大切であるが、体感で異変を感じるのはそこに住む地元住民である。そのため、住民が前兆について知れる機会や記載が必要なのではないか。

火山災害はし以前災害の中でも稀であるため、社会的な知識の共有や減災対策が遅れている現状がある。噴火警戒レベルを取り入れたり、活火山を抱える自治体の態勢を整えるといった取り組みがなされている。

防災協議会で協議される「噴火シナリオ(気象庁作成)」では、限られた数パターンの仮想シナリオに基づいて、噴火警戒レベルの上げ下げや行政の対応を時間順に並べてある。それに対して、火山専門家が考えている噴火シナリオでは、想定される火山現象を禍根事例に基づいて確率的に表現し、分岐を観測から判断するための方法を探る、全ての推移パターンが含まれている。このように、行政サイドと研究者サイドでは噴火シナリオの作成ひとつとっても異なるようである。

▶気象庁は情報を発信する第一人者である。そのため、この噴火シナリオでは、正直準備不足だと言えるのではないか。単純化することによって、専門家でなくてもわかりやすいというメリットはあるかもしれないが、現段階で出しているシナリオ通りに災害が進むということは、自然を相手にするため絶対とは言えない。対応に当たるのは、素人ではそもそもなく火山を専門としている人である。現在の私の立場が研究者サイドだからというわけではなく、一市民として、行政(ここでは気象庁)の対応についてもう少し多義的に考える必要があると考える。いくら噴火災害の被害が過去300年で少なかったとしても、影響範囲は広域に長時間にわたる。災害が起きた場合、刻々と事態は変化していくため、実際には具体的な対策について時間をかけて協議している暇なんてない。早急な決断に迫られる中でも、初期対応を素早くしていくためには、災害が起こる前にどれだけ準備しているかに関わってくるのではないだろうか。


今日のひとこと

科学者サイドと行政サイドの齟齬はどうして生まれるのか、
闇は深そうだが、そこが面白そう





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?