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宮崎県日南市油津で、日南デジタル漫画ラボを立ち上げたときの話

どうも、ナンバーナインCOOの荒井です。

最近トヨタがリモートワークの距離制限を撤廃しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b4251584c10fb0157607bf52d93a4eb41c359646

今後は、リモートワークはもちろん、色々な会社のサテライトオフィスが立ち上がり、多様な働き方が加速していくと思います。

そんな中、弊社はコロナ前からサテライトオフィスを運営してきました。今回は、立ち上げの責任者や、検討している人の参考になればと思い、私の経験をしたためます。

読んで欲しい人


・新たにサテライトオフィス立ち上げを検討している小規模〜中規模の企業(数人〜30人くらい)の人
・サテライトオフィスの責任者になった人

サテライトオフィスの立ち上げ背景


現在ナンバーナインは東京と宮崎の2箇所に拠点があります。

立ち上げを決めた当時は、主力事業であるデジタル配信サービス「ナンバーナイン」が急成長していく中で、電子書籍の制作が追いついていないことが課題でした。弊社の場合デジタルデータだけでなく、紙の原稿を扱うため、原稿管理やスキャナーを複数台置くスペースなどとにかく「広さ」が必要になっていました。ただ、まだ立ち上げの段階で都内で必要な広さを確保することは難しく、ソリューションとして辿り着いたのがサテライトオフィスでした。

場所については、全国を隈なく比較したわけではなく、もともと弊社代表の小林と縁があった宮崎県というのを決め打ちで進めていきました。複数箇所の検討が正しいフローかもしれませんが、スピード感を担保するためにも、代表や責任者のゆかりの地がオススメです。
そして、宮崎の中でも日南市油津にしたのは、もともと油津ではベンチャー誘致が盛んで、すでに10社以上の誘致実績があり、宮崎市中心部と比較して、喧騒が少なく、電子書籍制作に集中できる環境だったからです。

立ち上げ自体は私が中心になりつつも、1名は東京から新卒を連れていきました。彼はインターンのときに制作を経験していたため、業務の教育を中心に対応してもらいました。完全に1人だけでの立ち上げは、やることが多すぎて困難を極めます。責任者は置きつつも、立ち上げ期だけでもサポートしてくれる人を配置するのが成功の鍵だと思います。

立ち上げるときのタスク


実際に立ち上げ始めたときに出てくるタスクについて、キーマン探し→物件探し→採用活動→オフィス設備 の順番で解説していきます。補足ですが、立ち上げ時は、私と連れてきた新卒を含めて7名での立ち上げ計画でした。7名程度の事業所という規模感で以降を読んでいただけますと幸いです。

キーマン探し

まず、最初はとにかく現地のキーマンの皆様に挨拶に行きましょう。何かしらの縁があれば紹介していただける可能性も高いです。ベンチャー誘致に積極的な自治体は発信も盛んで、担当者の皆さんもベンチャー企業のスピード感に慣れていることが多いので、直接、県や市役所に問い合わせてみてもよいと思います。キーマンを起点に、地元の人を紹介いただいて、物件選びや採用を進めていくと驚くほどスムーズに立ち上げが進んでいきます。

日南市のキーマンの皆様や担当者はとにかくレスも早く、こちらから聞かなくても「提案」の形でお話いただけたので、とても助かりました。今思えば、日南市自体に立ち上げの環境が整っていたので大きなトラブルなく立ち上げられたのだなと感謝の気持ちでいっぱいです。

物件探し

さて、キーマンとの繋がりを得たとして、最初に直面するのが物件選びです。

地域にもよりますが、油津は商店街があるため、大きいオフィスビルというよりは、個人経営の店舗サイズの物件がほとんどでした。人数としては10人も入らないサイズです。

ここは私の失敗なのですが、サテライトオフィスをどのくらいの規模にするのかを見据えておく必要があったなと思います。当初は数人から徐々に拡大する規模を想定していたのですが、想像よりも早く採用がうまくいき、事業が拡大したため、オフィスが手狭になってしまいました。

今後の調達や急成長が見込まれるのであれば、立ち上げ段階で大きめの物件を探しておくとよいと思います。また、これは地域差だと思うのですが、東京だと十分と思う広さでも、現地のメンバーからは狭いという声も上がりますので、東京基準の1.5〜2倍くらいの広さを確保するのがオススメです。

また、古い物件だと光回線が通っていないことも多いため、物件が決まったらとにかくネットの工事及び計画を立てることが重要です。東京と同じ感覚で、2週間くらいで回線は通りませんので、なるべく前倒しでネット工事も進めておいてください。

採用課題

採用は宮崎県のインタークロスさんにお願いしました。

担当の方がめちゃくちゃ優秀だったのと、宮崎県でエンタメ系の仕事が珍しいのもあって、5人の募集枠に80人くらいの募集がきました。また、説明会会場の調整、告知、面談設定まで対応いただき、面接に集中する環境を整えていただきました。

弊社はインタークロスさんにお願いして本当に大成功でした。地域ごとにハブになっている採用支援の会社があると思いますので、そういったところと連携するとスムーズに進むと思います。

当時はリモートの発想もないため、面接をリモートでやるという考えもなく、採用基準からすべて自分で現地で進めていきました。採用以外の部分についてもですが、基本的に責任者にほぼすべての権限を渡していくべきです。東京からでは絶対にわからない現地の感覚がありますので、下手にあーだこーだ言うより、上限の予算や要件を決めたら後は「任せる」というのがベストだと思います。

選考時に注意いただきたいのですが、正直言えば、即戦力という高いスキルのある人材はなかなかいません。そういった人材が不足しているのは、単純にベンチャー企業が求めているような仕事内容が少ないためだと私は考えています。

そのため、基本はポテンシャル採用になります。中途半端なスキルマッチを考えるくらいなら、カルチャーマッチに全振りしようと決めて選考を進めたのですが、これが大成功でした。

ナンバーナインの場合は、とにかく「漫画は好き?」ということを聞きました。書店員、コールセンター、学生、百貨店店員など経歴は全員バラバラでの採用になりましたが、結局そのときに採用したメンバーは今も働き続けてくれています。カルチャーマッチと本人たちの頑張りの相乗効果だと思います。

オフィス設備

最後に重要なのが、オフィス設備です。PCやWi-Fiルーター、机、椅子などですね。もちろん、掃除用具、トイレ備品なんかも必要になってくると思います。この辺はリストにしてAmazonで購入するのがオススメです。ある程度の規模の会社なら総務の方にお願いしてしまうのがいいと思いますが、当時のナンバーナインはそんな余裕はなかったので自分で対応していました。ただ、Amazonのおかげでとても楽に進みました。

購入は簡単なのですが、開封作業、組み立て、設置が大変です。そんなときは、新人が入社する日に一緒にオフィスを作るのがオススメです。最初にオフィスを作ると一気に仲が深まります。入っていきなりオフィス作りからだと大丈夫か?と不安になる人もいると思うので、面接のときから軽く頭出しはしておきましょう。

立ち上げた後軌道に乗せるためのタスク

どうやって新人を育てるか

ここは意識して欲しいのですが、PC、特にMacで仕事をしたことがある人はあまりいません。というかほぼゼロでした。ナンバーナインの場合は基本的にMacですので、全員PC操作から始める必要があるという状態からでした。

新人として採用した5人全員に、つきっきりでMacの使い方を教えていたら、時間がいくらあっても足りません。そのため、一般的なPC操作などはYouTubeの動画をうまく活用しておりました。また、社内独自の内容については、動画を作ることで、5人がそれぞれのペースで学習を進めることができるようにしました。

また、人数が多い場合は質問を細かく受けていると他の作業が一切できなくなるため、タイミングは1時間に1回でまとめてもらうなど、質問する時間と作業する時間を分けることで、新人研修と他の作業の両立を実現しました。

最初に高い水準を設定する

立ち上げメンバーの仕事へのスタンスで、そのオフィスの基準が決まってきます。難しいのですが、最初から高い水準での仕事のスタンスを見せることで、それは伝わると思います。ナンバーナインでは価値観を重視しているので、それを繰り返し伝えていきました。例えば「ベターではなくベストを目指す」ということであれば、「各種作業でショートカットがあるのにショートカットを使わないのはベストではない」と口を酸っぱくして言っていました。その結果、現在では、私よりも日南メンバーの方が電子書籍でのショートカットを使いこなしています。

また、言っているだけで行動しない責任者にメンバーがついてくることは絶対にないので、誰よりも仕事にコミットして仕事ができる姿勢を見せていける人が立ち上げの責任者にふさわしいです。そういう人を責任者に据えることで、次に続く人も高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

今抱えている問題

拡大範囲に上限がある

規模がある程度になり、複数回採用を行うとどうしても募集の反応が悪くなってきているのが現状です。発信するメディアを変更するなどして工夫をし、幸い漫画関連の仕事が県内でも少ないため、宮崎市内からの募集などもあり計画どおり採用はできています。一定の規模以上を目指すときは、人口がある程度いる地域からのアクセスも加味しないといけないと思います。幸い日南市は宮崎市からもアクセスできるため緩やかに規模拡大はできると考えています。

会社全体の人数が増えるにしたがってコミュニケーションが課題に

立ち上げ当初と比較して会社全体で人数が増えてくると、互いに顔を知らない人が増えてきます。これはワンフロアで働いている場合、50〜100人くらいまでは大丈夫だと思うのですが、サテライトオフィスだと早いタイミングで生じます。

もちろん、人数が増えてくればそれだけ関係が希薄化していくのは仕方がないと思います。ただ、一緒に働くのに顔と名前が一致していないと、どうしても連携が取りにくくなってしまうと思います。

コロナ次第では研修などもやりたいのですが、現状ではオンラインでZOOMでブレイクアウトルームを作って話したり、意図して仕事の質問を遠くの人に聞くように指示するなどして関係を作れないか工夫中です。いいやり方があったら教えて欲しいです!

作った結果

結論、日南デジタル漫画ラボ(オフィス)がなかったらナンバーナインはここまで成長していません。おそらく漫画家さんからの需要はあったと思いますが、制作が追いつかず、配信しない限りは売上も立ちませんので、事業として成り立たせるのは厳しかったと思います。当時まだ小さかったナンバーナインにジョインして、まったく経験がない中で仕事を学び、当事者意識をもってブラッシュアップしてくれたメンバーには感謝しかありません。成功しているのは採用でいいメンバーが集まったからに尽きます。

皆さんが思っている以上に地方には可能性があると僕は思っています。キラキラした地方創生スキームばかりが目立ちますが、本当に地方を盛り上げたいなら、仕事を生み出し、その仕事を通して育った人材が次の仕事を生み出すサイクルを作るしかありません。たとえ、移住後に永住しなくても、自分のキャリアの中の2〜3年そういった活動をすることは十分できると思います。私はとても良い経験ができたと思いますし、勝手に宮崎を第二の故郷みたいに思っています。

人口減少社会において、若い人にミライある仕事、スキルを少しでも身に着けてもらうことが今後の日本社会のためにもなると本気で思います。

地方でオフィス立ち上げを考えている皆様はいつでもご相談ください。現場ならではのぶっちゃけをお伝えします。

k_arai@no9.co.jp

ナンバーナインでは様々なポジションを積極採用中です。興味がある方はぜひお気軽にご応募ください!

【積極採用中のポジション】
企画編集 / 漫画制作ディレクター / エンジニア / WEBTOON編集者 / 学生インターン / 日南デジタル漫画ラボスタッフ

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