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kuma kuma寮に入ってみた! 第2話

みなさんお久しぶり!熊野入る子です。

クマ子、とか、クマとよく呼ばれます。

今日は京都大学の学生寮であるk寮の入寮オリエンテーションの日。


3日前は入寮選考の当落発表の日だった。

当落の連絡は当落のいずれに関わらずその日のうちに電話連絡する、と言われていた。

しかし連絡は来なかった。


なのでその翌日にこちらからk寮に電話をかけて入寮選考の関係者を呼び出してもらった。

「えっと、すみません、レポートが忙しくて誰を当落させるかといった分別の作業、まだやってないんです」

と言われた。大事な仕事をさぼったってことか。

「熊野入る子さんは特に問題なさそうだし、当選ってことにしときます。おめでとうございます」


えっと、こう言われたってことは、私はk寮に入寮できるってこと?

多分そうなのだろう。

そんなこんなで今日の入寮オリエンテーションに来るように言われ、そして来た。


k寮の受付前で新入寮生と思われる人たちが大勢待っている。

「新入寮生の方々、ただいま入寮オリエンテーションの準備をしています。手の空いてる方は椅子を並べるのを手伝ってください」

そう放送がなされた。


私も含めて新入寮生の人たちは食堂に入り、一緒に椅子を並べるのを手伝い始めた。

今日は休日だから食堂の営業はないようだ。そこでこの場所を使ってオリエンテーションをしようとしているのだろう。


食堂の隅に畳の上でお酒を飲まれた様子があり、眠っている人がいる。

「新入寮生の方!この人起こすの手伝ってくださいー!」

在寮生の人が声を上げて言った。

大丈夫か、この寮は。


椅子を並べ終わったら、プロジェクターの設置や配線など、在寮生の方から指示を受けて、新入寮生が入寮オリエンテーションの設営の大部分をやった。

最初少なかった在寮生も、そうしてる間に集まってきた。オリエンテーションがようやく始まりそう。


「お待たせしました。これより入寮オリエンテーションを始めます」

司会の人がマイクでしゃべった。やっと始まるようだ。


オリエンテーションの資料が配布された。

寮生の義務や寮費の支払い、仕事内容が書かれている。


「寮生の義務は、かくかくしかじか

寮費の支払いは、かくかくしかじか」

内容はすでに入寮面接で聞いたのと同じだ。


眠いな。退屈だ。

(司会の人)「次に寮の仕事の紹介です。まずは文化部から」

文化部は数ある専門部の一つ。他には庶務部、厚生部など。人権擁護部というのもある。


寮生はどれか一つの専門部に入らないといけない。

そして新入寮生はどれか一つを選ぶ、というわけだ。

そして文化部の説明が始まる。文化部の人にマイクが渡された。


(文化部の人)「寮生は貧しい」

いきなり何いってんだ、この人は。


「おれは仕送りをもらっているが、毎月300円だ。なので寮で最低限の文化的な生活がないと死んでしまう」

なんつーシビアな。

「文化部のおかげで我々は生きていられるんだ」


うーん、確かに文化は大事だと思うが。

「例えばおれの仕事は、丸太町通でギター持って一人で歌い、ストリートライブをすることだ」

やっと具体的な活動の説明が始まった。


「歌いながら投げ銭をもらっている。昨日は『手のひらを太陽に』を歌い、215円を獲得した」

在寮生の人たちが拍手喝采をした。


そんなこんなで文化部の説明は終わった。

お昼の時間になった。

一人の寮生が寮でタコ焼きを作っている。

タコ焼きが今日のみんなのお昼ごはんになるようだ。


タコ焼きはとてもおいしかった。

作っている人は京大を中退してタコ焼屋としてやっていくらしい。

みんなおいしいタコ焼きをたべて幸せそうだった。


お昼が終わり、続いて厚生部や庶務部の説明がされた。

厚生部は寮の設備の管理、例えば大学から支給された電球などの備品の管理をする。

庶務部は寮の会計の管理をする。


ふむふむ。こうやってみんな寮の運営をしていくのか。

(司会の人)「続いて人権擁護部です」

人権擁護部の人にマイクが渡された。


(人権擁護部の人)「アルハラはぶっころす」

いきなり過激なのから来た。

「寮でハラスメントは死を意味する。この寮では…」


しゃべってる際中に他の寮生に取り押さえられた。

引きづられて奥に連れて行かれた。

「表現の自由じゃー!」

という声が聞こえた。


(司会の人)「これ以外は特にないよね?よーし!おわり!新歓コンパをやろう!」

眠そうにしてた在寮生も、寝てた在寮生もうれしそうに跳び起きた。

「コンパだー!!」


わかりやすいな。でもわたしもコンパと聞くと正直ワクワクする。

k寮のコンパは少なくとも見てみたい。


通常ゴミ箱に用いられるような大きいポリバケツに水と氷が入れられて、その中に缶ビールなどのいろいろなお酒が入れられている。

ビールは苦いし苦手なんだよな。ワインが飲みたい。

お酒だけでなくノンアルコールの飲み物があって、CCレモンで乾杯しようとする人もいる。

何も持たない人もいる。


まずは見だ。乾杯のタイミングでは何も持たずに、ただニコニコしていよう。

その後、場に少しなじんだら飲めそうな飲み物を頂くことにしよう。


「かんぱーい!」

オリエンテーションにいたみんなで乾杯をした。

オリエンテーション中に眠ってた人が別人のようにハイテンションだ。


となりに私以外にも飲み物を手に取ってない人がいた。

胸元にガムテープが貼られていて「岸田素子」とマジックで書かれている。

(岸田素子)「何も飲まれないんですか?」

話しかけられた。


(わたし)「いえ、ビールとかが苦手で。あとで何かいただきます」

(岸田素子)「わたしも、お酒を飲むとすぐ酔っちゃうんで。苦手なんです笑」


おとなしくて清楚な人だ。この寮にはめずらしいかも。

(岸田素子)「あ、わたしは在寮生の、きしだもとこ、というんです。はじめまして」

(わたし)「はじめまして。新入寮生の熊野入る子です。クマ子と呼んでください」


(もとこ)「父が攻殻機動隊の大ファンで、それでこの名前にされたんです笑」

なんと。現実とSFの区別がない父親なのか。

(わたし)「でも良いお名前だとおもいます」

(もとこ)「けど父はよく、草薙という苗字の男性ばかりをお見合いに連れてくるんです笑」


かなり気合の入った攻殻機動隊のファンだな。

そうして会話がはずんでるうちに楽しくなってきた。

するととなりにいた男性の方がわたしの紙コップにビールをついでくれている。


「さ、熊野さんもどうぞ」

まあコップ一杯なら飲んでみようかな。

(わたし)「いただきます。ありがとうございます」


ビールをちびちび飲んでみた。あ、いけるかも、と思った。

もとこ先輩は、お酒は遠慮する、とのことだ。酔いやすいからやめておくとのこと。静かな人だ。


マイペースでビールを飲んでいると人権擁護部の人たちが集まってきた。

(人権擁護部の人たち)「熊野さんが飲んでいる!」

たかが紙コップのビールを飲んでるだけで、わたしは注目の的になった。


(人権擁護部の人たち)「なーに持ってんの?どーして持ってんの?飲み足りないから持ってるのー!」

歌い始めた。なんつーイメージチェンジ。テンションが高い。

でも一気飲みコールではないようだ。安心できる。ゆっくり飲もう。


紙コップのビールをちびちび飲んだ。ビールは悪くはない。

良いコンパでは?と思った。


いやー、うん。たのしい。ふと廊下の方を見ると、小鳥の鳴き声が聞こえる。

行ってみた。おお、セキセイインコだ。カゴにいる。かわいい。誰かが飼ってるんだ。


わたしはセキセイインコと遊んでいた。指を近づけると噛んでくる。かわいい。

「おらー!クマ子ー!もっと酒飲めやー!」

後ろからいきなり絡まれた。誰?びっくり。

あ、もとこ先輩だ。片手に酒瓶持っている。飲み始めたのか。

酔っぱらって完全に豹変している。


わたしは抱きつかれ、お酒を飲んでいた席に強制的に戻された。

もとこ先輩は大声でインターナショナルを歌い始めた。

すると人が集まってきた。左翼っぽい人たちだ。


(集まった人たち)「いーざたたかわん、いーざー、ふるいたていーざー」

みんなで歌ってる。


(わたし)「もとこ先輩、お酒は飲んでも飲まれるな、ですよ笑」

(その場にいる人)「ハイセンス!」


当たり前のことを言っただけだが、ハイセンス、と言われた。

(他の人)「ハイセンス!」

(さらに他の人)「座布団一枚!」


(わたし)「気持ちだけいただいておきます」

(もとこ)「関西人はおもろいこと言ったら座布団に座らんとあかんねん」


わたしは頂いた座布団に座った。

それにしてもみんな本当に楽しんでいる。こうして社会に出る前に学生時代を満喫するんだろうな。


すると全寮LINEから苦情が来た。

全寮LINEとは、全寮生が参加するグループLINEだ。そのLINEにコンパに参加していない寮生から苦情のメッセージがきた。

「コンパしてる方々、もう少し静かにしてください。何時だと思ってるんですか」


あちゃー。やってもうた。

あ、となりのコンパ中の人が返信している。

「だまれ、この陰キャども」

これが送信された。過激すぎる。


(その場にいる人)「記念写真をとるぞ」

10人くらいの男女が集まって舌を出して中指を立てている。

かなりヤンキーっぽい記念写真が仕上がったようだ。

そしてそれは全寮LINEに投下された。


(コンパの人たち)「野郎ども!酒をのむぞー!」

強行的にコンパが続行される。

(他の人)「酒が足らんぞ!酒が!」

(別の他の人)「誰か買ってこい!」


そしてコンビニの買い出しにもとこ先輩がいくことになった。

わたしもついて行こう。いろいろ話を聞けるかも。

ついていった。こうして一緒に近所のファミマでお酒と飲み物と食べ物を購入した。


買い物が終わって帰り道を歩いていると私は警官から職質をされた。

警官はわたしに氏名と生年月日を聞いてきた。

わたしは普通に答えていたのだが、突然もとこ先輩が警官をぶん殴って吹っ飛ばした。


わたしは即座にもとこ先輩の腕をつかんでk寮まで引きずって帰った。

「うっせえうっせえうっせえわ」とかさけんでるけど、構わず無理やり引きずって歩いた。


寮に戻ったら、酔っ払いたちがかくれんぼしたり追いかけっこしたり、クラブミュージックかけてダンスしたりしてる。

寮生がわたしたちに気づくと走って集まってきた。

(寮生たち)「酒じゃああ!酒がきたああ!」

みんな目が輝いている。


コンパが過熱していく。

けど一人の寮生がスマホを見てビビった表情をしていた。

(寮生)「やばい!自警団がくるぞ!」

その人はLINEを見てわたしたちによくわからん警告をした。


自警団ってなに?突然言われても。

(その場にいる人)「新入寮生を逃がすんだ!」

(もとこ)「クマ子!早く逃げて!わたしたちのことはいいから!」

(他の人)「出来るだけ遠くに逃げるんだ!挽き肉にされるぞ!」


(左翼っぽい人たち)「我々は弾圧に屈しないぞ!」

(その界隈の人たち)「反権力!団結だ!」


言ってることが謎だ。けどどうやら緊急事態らしい。

とにかくわたしはコンパから逃げた。


そのとき、黒色の特攻服を着た10人くらいの人たちとすれ違った。

背中に『常識を尊ぶべし』という赤い文字の刺繍が入っている。

そしてみんな竹刀をもっている。


(特攻服の人)「おまえら、夜中にやかましいんじゃあ!!」

どうやら特攻服の人たちが、自警団と呼ばれる人のようだ。


自警団は竹刀でコンパにいる人たちをボコボコにし始めた。

「ギャー!」 「許して!」

悲鳴が聞こえる。

フルボッコだ。冷酷非情な働きを仕事人たちが見せつける。


(自警団)「制裁!制裁!」

(左翼っぽい人たち)「痛い!団結無理!帰りたい!」

(もとこ)「クマ子!助けてー!」


どうやら自警団というのは夜中に過熱しすぎたコンパを鎮圧する部隊のようだ。

コンパもこれまでか。楽しい時というのは過ぎるのが早い。

しかしボコボコにされてる人たちはかわいそうだ。


食堂のコンパの場に戻った。全員、返事のないただの屍になっていた。

このままここで寝たら風邪ひくだろうな。

そう思ってたら、だれかが毛布を死体の人たちにかけていた。


毛布がたくさん食堂の隅に重ねられてあった。

わたしも毛布をかけるのを手伝った。けど数が足りないようだ。

「毛布の数が足りないから、一つの毛布を二人にかけるんだ」

そのように指示された。


毛布を全員にかけおわった。すると毛布の取り合いが所々で始まっていた。

「おれの方がおまえより偉いんだ!」

とか言っている。


さて。帰るか。自警団はこわかったがコンパはとても楽しかった。

明日からは自分の身を案じつつ寮生活を楽しんでいこう。

名残惜しいが死体の人たちに、おつかれさまを言ってそれから帰ろう。


食堂へむかってテクテクと歩いていた。

「制裁!制裁!」

後ろから突然きこえた。誰も人がいないのに。いったい何?。

「制裁!制裁!」

あ、セキセイインコの声だ。セキセイインコが「制裁!」と発音してるんだ。


かわいい~。インコちゃんにもお別れをして帰ろう。

(わたし)「インコちゃん、バイバイ」

(セキセイインコ)「おまえら、夜中にやかましいんじゃあ!!」

(わたし)「…」


こうしてわたしの一日は終わったのだった。


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