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ミッションインポッシブル 最終話

時計台キャンパス前の東一条通をあやしげな黒色のバンが走っていく。

時計台占拠の日は、キャンパスに車が入るときには警備員が入口でドライバーの身分証明書を確認することになっている。

しかし警備員は黒色のバンをまったく確認なしで通過させた。


警備員は偽装マスクをぬいだ。正体はイーサンだ。

イーサンが警備員に偽装して正門に立ち、黒色のバンをキャンパスの中に通させたのだ。

元々いた本物の警備員は、イーサンに缶コーヒーを渡されて「休憩していいすよ」と言われて休憩している。


先ほど日大生たちに寮生が吹っ飛ばされていた最中に、イーサンはひっそりと背中でスマホをポチポチして連絡をとっていたのだ。

イーサンから連絡を受けてやってきたのが、黒色のバンだ。

バンの中にいるのはk寮の戦闘部隊、Special Combat team、略してSCだ。


ルーサーは全てを知らず、役員たちから見えやすいところで明白に動揺していた。

イーサンがそうさせていたのだ。役員たちを完全に油断させるために。


SCが乗っているバンはキャンパスに侵入後、アクセルを踏み一気に加速し、時計台の前に向かった。

それを追うようにイーサンも時計台に向かって走っていく。

イーサンの最後の戦いが始まった。


(役員)「な、なんだあれは?」

役員の人が、走ってくる黒色のバンに気づいた。

しかしバンは時計台の前に止まらず、そのまま通過して時計台記念館の裏側にまわっていった。

消火器を一本だけ地面に置いて。


イーサンが走ってきて時計台前に着き、その消火器をひろった。

安全ピンをぬいてホースを時計台の上へのぼった役員たちに向けて、レバーを握ってぶっかけた。

(役員)「うわっ!何だこの白い粉は?消火剤ではない!何だ!?」

(イーサン)「味の素だ」


学生部の建物からドアが吹っ飛ばされる音がした。

中にいたイノシシがドアを吹っ飛ばしたのだ。

興奮状態のイノシシ30匹が味の素の臭いに反応し、時計台まで走ってきた。

イノシシは時計台にかけられたハシゴをのぼり、味の素をぶっかけられた役員たちに突撃した。


(イノシシ)「フシュッ!フシュー!(怒)」

(役員)「Holy shit !!」

役員の人たちはイノシシの猛攻撃を受けている。

イーサンはイノシシが全部ハシゴにのぼり時計台の上に上がったのを確認して、ハシゴを外した。


(イーサン)「ルーサー、寮に戻ってあれを持ってきてくれ」

(ルーサー)「ああ、まかせてくれ」

イーサンはルーサーに鍵を投げて渡した。

パシっと受け取った。ママチャリの鍵だ。ルーサーはママチャリで寮に向かった。


(役員)「ハシゴを戻してくれ!時計台降りるから!」

役員の人たちはイノシシに攻撃されながら必死に頼んだ。

一方イーサンはスルーしてスマホで黒いバンに乗ってるSCの人たちと連絡をとっている。


役員の人たちは時計台記念館の入口の上にいる。建物でいうと2階の高さだ。

一方SCはそこよりもっと10mくらい高い、時計台記念館の屋上にのぼり時計台を占拠する作戦なのだ。

時計台記念館は入口の上だけでなく、屋上も時計台占拠のスポットなのだ。

そして当局側に誰も守る人がいない今、時計台記念館の裏口から堂々と入り、屋上に出て時計台占拠すればいいのだ。


当然、そのためには裏口に入るためのドアのロックの4桁の暗証番号が必要だ。

いまイーサンと総長の人が対峙している。

イーサンの任務の中で、最後の敵との戦いだ。


(総長の人)「イーサン、我々の負けだ。ハシゴを元に戻してくれ」

(イーサン)「4桁の暗証番号を言うんだ」

(総長の人)「1224だ」


イーサンはスマホでSCに暗証番号を伝えた。

(総長の人)「ハシゴを戻してくれ!」

(イーサン)「また今度!」


SCの人たちが暗証番号を入力すると裏口のドアが開いた。時計台記念館に駆け込んだ。

イーサンは全ての状況を把握している。

時計台占拠は確実に寮生側が勝利する。

イーサンの残る仕事は後ひとつ。


生協でカツカレーをたくさん食べてきた日大生が時計台前に戻ってきた。

(役員)「日大生!時計台の裏口に入っていった寮生たちを追え!」

日大生はキャンパスの道がわからずチンプンカンプン、迷子だ。

しかし20人のうち1人が地図の看板を発見して把握。

最強の部隊、日大生20人がSCの人たちを追った。


SCの人たちはすでに裏口へ入ってから時間が経つ。

時計台の建物の階段をのぼっているところだ。

しかし、とうとう最強の部隊、日大生が裏口までたどり着いてしまった。


(ルーサー)「よう!おつかれさん!」

ルーサーが日大生のいる目の前まで来て、クイックターンでママチャリを止めた。

ルーサーはリュックサックからファミマのレジ袋を取り出した。

ファミマのレジ袋の中にはk寮のネズミがたくさんいた。

ルーサーはネズミをレジ袋から開放した。


(ネズミたち)「チューチュー」

(日大生たち)「キャー!」

ネズミを怖がる日大生たちは、ネズミがいる裏口を怖くてとおれない。


イーサンが走ってきた。消火器を持ちながら。

(イーサン)「ミッションコンプリート!」

消火器のホースを日大生の足に向けた。レバーをにぎる。

ホースから味の素が日大生の足にぶっかけられた。


(ネズミたち)「チューチュー!!」

(日大生たち)「キャー!!」

ネズミたちは味の素に反応し、日大生を追いかけ始めた。

日大生はネズミがこわくて全員パニックになり、北大路通まで逃走した。


こうしてSCたちは無事に屋上に出て誰にも邪魔されることなく、時計台を占拠した。

SCの人たちは、いま役員とイノシシがいる所である時計台の入口の上より、10mくらい高いところにいる。

イノシシがあばれているので、SCたちは10m下の方向にイノシシにむけて睡眠ガスを噴射した。

こうしてイノシシは眠り、役員たちも眠った。


時計台占拠はk寮の、奇跡的な逆転勝利。

寮祭期間中のもっとも長い一日だった。


時計台占拠の日の夜にk寮で総括が行われた。

時計台占拠への寮内の士気が近年落ちつつあるが、任務遂行力そのものはとても高いことに寮生は気づいた。

今後は、今回の時計台占拠の戦いでPTSDになった寮生を回復させることが課題となった。


後日。寮食堂の夕食時。

(ルーサー)「松屋が値上げしたってのに、値上げしない寮食はありがたいな」

(イーサン)「ああ、まったくだ。IMFは時給50円だしな」

(ルーサー)「働く気がなくなるぜ。今後はどうやってくんだい?」

(イーサン)「もう潮時さ。IMF情報でyoutubeをやるよ。ルーサーは?」

(ルーサー)「当分は偽札でチャージした生協のプリペイドカードで食いつなぐさ」


イーサンがお部屋に帰ると、10日前にメルカリで購入した中古のセーターが届いていた。

開封すると、画面が割れたスマホが入っていて、勝手に動画メッセージが再生された。


「おはよう、ハント君。今回、君に与えられた任務は敵国のスパイの情報の奪取だ。

現在A3には北朝鮮の諜報員が潜伏しており、君は彼に接近し…」


ミッションインポッシブルのあの音楽が流れる。

(終)


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