カイロスロケット初号機打ち上げ失敗から感じたこと

3月13日11時1分、民間宇宙企業スペースワンの開発したカイロスロケット初号機は、空高く舞いあがったように見えた。だが、その5秒後、機体は突然爆発し、四方へ飛び散った。搭載していた衛星を軌道に投入するという目的は達成されず、打ち上げは失敗に終わった。

打ち上げ後、スペースワンが記者会見をし、ロケット自身が何らかの異常を検知して、自律的に爆破スイッチを入れたと報告した。スペースワンには、日本の固体ロケットの製造に長年関わってきて、現在、JAXAと共に固体ロケットのイプシロンSの開発を進めているIHIエアロスペースが参加しており、固体ロケットのカイロスにもその技術やノウハウが取り入れられていると見られる。

カイロスは全長約18mと、全長約27.2mのイプシロンSよりも小さいが、両方とも3段の固体ロケットモーターに小型液体推進系(RBS)を組み合わせた構成になっている。カイロスは打ち上げ準備作業などを自動化し、少人数で打ち上げられるシステムとなっていて、短期間での打ち上げを実現するという思想もイプシロンSとよく似ている。

スペースワンは新興企業でありながらも、固体ロケット開発の経験豊富なIHIエアロスペースの技術やノウハウも取り入れ、カイロスの開発をしているはずなので、スペースワンも技術には自信をもっていたのではないかと思う。だからこそ、初号機でも小型衛星を搭載して打ち上げに臨んだのだろう。

カイロスが打ち上げ5秒後に爆発したのは、ロケットに何かしらの異常が発生したことによって、ロケットに備えられた自律飛行安全システムが作動したためであると発表された。だが、考えられる異常の原因などは明かされず、「まずは原因究明に取り組む」という言葉だけが繰り返された。

実際、第1段に異常が発生して、ロケットのシステムが自律的に感知し、すぐに飛行停止措置として爆破したのであれば、システムがしっかり働いたことになるので、まずはよかったねという感じだ。ただ、自律飛行安全システムが誤作動した可能性もあるので、そこも含めて原因を究明する必要があるだろう。

記者会見を見ていて、僕が感じたのは、スペースワンとしては詳しい情報を出したくないのだなということ。想定される事故の原因、原因究明の態勢、どのくらいのスピード感を持って解明用しようとしているのかといった質問に対しては、ほとんど何も答えなかった。

ロケットの新規開発は難しいので、失敗は当たり前だし、失敗したことをクローズアップしてもしかたがないことだけど、情報を出さない姿勢なのはどうかなと思う。民間企業だから、企業秘密もあるし、必ず情報提供をしなくてはいけないということはないけれど、ここまで情報を出したくない姿勢が強いと、周りも応援しにくくなる気がする。

「私たちは失敗という言葉は使わない」という社長の言葉は、次に向けた前向きな姿勢だと受け取りたいけれど、記者会見でのやり取りを見ていると、単にネガティブな印象を広められたくないだけのように思えてならない。これは僕の偏見かもしれないけれど、メディアには会社にとって都合のいい情報やイメージだけ扱って欲しいのかなと思ってしまう。

もちろん、スペースワンには、早く次の打ち上げにチャレンジしてもらって、カイロスを成功させて欲しいし、ビジネスも軌道に乗ればいいなと思う。ただ、秘密主義が過ぎると応援のしがいもないなと思ってしまうのも否めない。

打ち上げの映像を公開してもらえているだけでもすごいことかもしれないけれど、事故原因が究明できたら、公表できるところだけでも公表して欲しいし、もう少しロケットの情報をオープンにして欲しいなと思います。

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