山﨑福也獲得の話
11月25日の15時、北海道日本ハムファイターズはオリックス・バファローズからFA宣言して6球団で争奪戦となっていた山﨑福也と入団合意に達した事を正式発表した。
04年オフの稲葉篤紀・17年オフの鶴岡慎也・22年オフの伏見寅威に続いてチーム史上4人目、そして投手としては史上初のFA獲得選手である。
報道によれば読売が4年10億超・ソフトバンクが4年12億超を提示していたにも関わらず4年8億程度の日本ハムを選んでくれた様で、ファンとしてはこんなに嬉しい事はない。
ご存じの方も多いだろうが、簡単に彼の事を紹介していきたい。
山﨑は21年に殻を破りオリックスのリーグ3連覇に貢献した左腕だ。まだ規定投球回に到達した事はないものの、3年連続で「20登板/110.0回/防御率3.60」をクリアしている。
あまり意味のない比較ではあるが、これを継続しているパの投手は彼を除けば7人しかいない。日本ハムの上沢直之・加藤貴之・伊藤大海、そして楽天の岸・則本、オリックスの山本・宮城だ。
もちろん規定投球回未到達の山﨑が彼らと同格だとは全く思っていないが、その継続性は評価すべきだろう。トミー・ジョン手術などの長期離脱が無ければ最低限の仕事はしてくれるという安心感はある。
そして、よく指摘されているクオリティスタート率(QS%)が39.1%しか無い事だが…これに関しては今季23先発して100球以上投げたのがたった3試合しかないので、ブルペンが厚いというチーム事情も大きく関わっているだろう。
日本ハムでは伊藤が24先発のうち15試合、かつて「3巡目には掴まる」と言われていた加藤貴も今や24先発のうち9試合で100球以上投げている。山﨑にも“6回の壁”を越えて欲しいところだ。
さて、ここで注目したいのが今季のFIPだ。過去2シ-ズンから投球回を10%増やしつつも内容を良化させたのは素晴らしい。FIPだけ見れば伊藤(2.82)・加藤貴(3.05)・上沢(3.10)の三本柱よりも上である。
FIPを構成する奪三振・与四球・被HRを見ると、奪三振と与四球はバラつきがあるがK/BBは3.13→3.37→3.33と安定している。やはり目立つのは今季半減した被HRの数だろう。
となると、昨日投稿した黒木優太と同じ様に「ゴロが増えたのでは?」と思い調べてみたが…山﨑に関してはGO/AOは1.01→1.39→0.92とむしろフライの割合が増えていた。
球種割合を見ると、21年にはほぼ使っていなかった平均球速130キロ前後のカットボールとスプリットを今季は10%近くまで増やしている。痛打を浴びなくなった原因があるとすればこれだろうか。
ストレートが平均142キロなのに対してスライダーとチェンジアップが120キロ前後、そしてスローカーブが90キロ台だったので、新たな球速帯のボールが(2つも)増えたのは大きいはずである。今季9年目の31歳ではあるがまだまだ成長している様だ。
さて、最後に今季の主に先発投手陣として投げた投手達を一覧にしたが…「上沢のポスティング移籍&加藤貴のFA移籍&FA補強失敗」という可能性もあっただけに、その3つ中2つを回避出来たのはとてつもなく大きい。
今季後半は三本柱に見劣りしない投球を続けた上原健太は来季やって貰わなければいけない投手ではあるものの、彼が開幕2番手でスタートするのと4番手でスタートするのではプレッシャーが全く違うだろう。
それに北山亘基や金村尚真も一軍で素晴らしいパフォーマンスを見せたがコンディション不良の期間が長く、根本悠楓も(早生まれなので)来季開幕時点でまだ20歳だ。若い投手達を焦って投入しなくて済むのは長期的に見てもプラスである。
ローテが固まれば先発中継ぎ両睨みの鈴木健矢や黒木優太・北浦竜次・(獲得が噂される)パトリック・マーフィーらが後ろに回ればブルペンの運用も楽になるので良い事しかない。
オマケに即戦力投手をスルーして野手をかき集めた今年のドラフトも(元々評価は高かったが)より一層光り輝いて見える。数年後に優勝した時には間違いなく「あの山﨑福也獲得がターニングポイントだった」と言われる事だろう。
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