超磁場活水器「コスモス」続報:JR東は一体何をやっているのか
JR東のトイレの排水管再び
一つ前の記事「販促資料が怪しすぎる:超磁場活水器「コスモス」」で、JR東日本に持ち込んでトイレの排水管の尿石付着が抑制できるという結果について、排水管の写真がおかしいという指摘をした。その内容は売り込みを受けているマンション住民の方から野火止製作所まで伝わり、訂正した説明の図が送られてきたとのことで、住民の方から再び情報提供を受けた。
追加の説明によると、磁気活水器を通った水が流れる排水管(フランジの穴が8個,図の左側)のものと、磁気活水器を取り付けず水道水をそのまま流し続けた排水管(フランジの穴が4個,図の右側)のものを時間をおって観察し、尿石の付着の違いを調べた。磁気活水器をつけた方は、最初は別の磁気活水器をつけて、2ヶ月経過後、9ヶ月経過後に観察し、その後「コスモス」に付け替えて8ヶ月後の写真とのことだった。
しかし、よく見ると、再提出された資料で、図と説明が食い違っている上に、毎回同じ場所で観察していない写真が並んでいて、時間的に変わったという説明を信じるわけにはいかないものだった。
写真をよく見ると……
写真で注目すべきところを書き込んでみた。また、写真の識別のためにA〜Gまでアルファベットを振った。
まずAとBは配管の色が全く違う上に、フランジと管の取り付け部分も管の肉厚も違うので、全く別の管である。ところが業者の説明では2ヶ月後にA
になって、さらに9ヶ月が経過するとBになったという説明である。この説明が意味を持つには、少なくともAとBは同じ管の同じ場所を観察しなければならない。全く別の管の写真をもってきて、9ヶ月後にAがBになりましたと言われても、それ全く別の場所だから違って当たり前では、ということにしかならない。
AとCは同じ場所、BとDは同じ場所のように見えるので、ますます意味がわからない。
また、時間経過の正確なところもはっきりしない。もし、最初に磁気活水器をつけた時を0ヶ月とし、Aが2ヶ月後、Bが設置から9ヶ月後、コスモスに変えて8ヶ月後がCとDだとすると、CとDは設置から1年5ヶ月後になってしまい、1年9ヶ月後という図の説明と時間経過が合わない。時間の起算が共通の0からではなく、設置2ヶ月後にA、その時点からさらに9ヶ月後(開始から11ヶ月後)にB、(コスモスに変えて)8ヶ月、だとしても、観察を続けた期間は開始から1年7ヶ月である。やはり1年9ヶ月にはならない。
比較のために水道水を流したという右側の管も、EとGは別ものである。Eのフランジ部分をよく見ると、数字や、直交する線の模様が入っている。フランジは水とは(空気ともそれほど)接触しないので、入っている線が腐食や摩耗でそうそう消えることはない。F,Gのフランジを見ると何も模様がない。Fは暗い感じなので模様がはっきりしなからなんともいえないが、明るく写っているGのフランジには明らかに模様がない。こちらも、時間経過を追って観察したとされる管の写真として別物の写真が並んでいるので、時間経過を正しく見たものとはいえない。
勝負データの筈が杜撰すぎる
おそらくJR東のトイレで結果を出し、JR東に買って貰うことで権威付けして他所で宣伝するというのがヤングトラストの戦略なのだろう。ということは、JR東で出した結果はヤングトラストにとって「勝負データ」の筈である。
ところが、再説明で出てきた写真に写っている管がばらばらの場所と考えるしかなく、時間経過を追って観察したら効果があったという証拠になっていないのである。写真の並びがおかしいと突っ込んだら、これが正解だとして出してきたものが、やっぱりおかしいままだったということである。
JR東に売り込むときは当然こういった結果を提出したのだろうが、経時変化と称して出された写真の撮影場所がバラバラであることをJR東はチェックしなかったのだろうか。
結果のまとめと説明がここまでお粗末だと、一体JR東にどんな報告書を出したのかとか、JR東がちゃんとチェックしたのかが謎である。
JR東に対してまともなレポートを出したのであれば、売り込み用の資料にもJR東に出したのと同じ写真を同様にまとめたもの出せば済むのだから、わざわざ別の管の写真をそれらしく並べて時間経過も合わないものを出してくるというのは意味がわからない。逆に、JR東に対してこの写真レベルのレポートしか出していないのであれば、これを見て効果があると判定したJR東の目は節穴かという話になる。
物作って売るレベルじゃない
こういうデータのまとめ方を見ていると、「コスモス」を作っているヤングトラスト内部の状況についてなんとなく想像がついてくる。
磁気活水器の効果を経時的に見るには毎回同じ場所で観察しなければならないということに気づいてないか、そんなことはどうでもいいと思っている。
同じ場所で観察しているつもりで違う場所で管を外した。つまり前回どこを外したかの記録ができていない。もし担当が変わったのであれば、引き継ぎがまともにできていない。
写真の撮り方がまちまち。前回どういう状態で撮ったか記録してないか,同じように撮影するということを気にしていない。
写真は(多分)たくさん撮ったが,どれがどの写真かをまともに管理できていない。
撮影箇所の違う写真を並べて同じ場所であるかのような説明を加えることを、間違いだとも捏造だとも思っていない。
資料を見直す機会があるのに時間経過があやふやなまま記載して気づかない。
(以上のことから)こういったことをきちんと管理できる訓練された人材が社内に一人もいない。
「勝負データ」を出すはずのJR東の試験が既に、上記のいくつか或いは全て、という状態と考えられる。
どうも、会社側は、私が、磁気活水器について科学的根拠がないという理由で否定しているということにしたいらしいのだが、前回の記事も含めて私はそんな高尚なことは全く言っていない。ただただ記録の付け方まとめ方が杜撰過ぎたりデータ操作や流用という不正の一種をしているようにしか見えないために、科学的根拠を議論できるレベルにすら達していないと言っているだけである。
観察の仕方や記録の付け方まとめ方があまりにも雑で杜撰だと、この会社が別のことを調べた結果を出されても,そちらも信用するわけにはいかないだろう。
今から約20年前に、磁気活水器の心ある(志もある)業者が、活水器の性能評価の業界標準を作ろうとしていた。JISにまでするのは難しいとしても、循環系で使う場合に限っては業界標準が決められるのではないかと私も思っていた。しかし、今「磁気活水器 性能評価 標準」で検索しても、それらしい情報は何一つ出てこない。20年経っても磁気活水器の性能評価の標準を決められなかったということだ。
ところで、我々が冷蔵庫やエアコンを買うときにどうしているか思い出してほしい。デザインやメーカーはどこかといったことや製品の独自機能にも注目するが、どれだけエコな製品か、つまり消費電力はどうか、といったことも考慮に入れるだろう。いろんなメーカーのカタログをもらってきて、どれだけ省エネ可能な製品かを比べたりして,機能も比較して選ぶ。これが可能なのは、たとえば家庭用冷蔵庫の場合だと、「JIS C9801-3(家庭用電気冷蔵庫及び電気冷凍庫の特性及び試験方法-第3部:消費電力量及び内容積の算出)」が決められているからである。どのメーカーもJISに従って試験をした結果をカタログに載せているから、メーカーが違っても掲載されている数値は比較可能で、消費者は違うメーカーの製品を見比べて選ぶことができるのである。
磁気活水器には、JISに相当するような、標準的な試験方法が存在しない。
性能評価の試験方法の標準が無いということは、製造業者が改良した製品を作っても、当社比でさえ何が何%変わったかを評価できないことを意味する。また、製造販売している業者がそれぞればらばらに思いついたものを測っているということになる。消費者が、磁気活水器を買う前に、違う業者の製品のカタログを取りよせ,性能とコストを比較して検討することが全く不可能ということである。これではまともな買い物はできない。
磁気活水気は,異なったメーカーの製品の値段や性能を比較検討して購入するということが不可能な,そもそも工業製品として成立していない商品である。一般消費者が手出しできるような代物ではない。こんなものは商品として一般に売るレベルに達していない。
ここで疑問になるのは,JR東の姿勢である。ヤングトラストはJR東が買ったことを宣伝材料にしてあちこちに売り込んでいる。宣伝にのせられて買ってしまった人も続出している。JR東は,性能評価の標準すら存在しない,工業製品と呼べないようなものに予算をつけて調達しても社内的には無問題な会社ということになる。これ,下手するとJR東の技術的信用が落ちかねない状態なのだが,わかってやっているのだろうか。
どなたかJR東の株主の方,この投稿が目にとまって同意してくださるなら,是非株主総会で追及してみてほしい。性能評価の試験法の標準がない工業製品とは呼べないようなものに対して一体何を根拠に金を出しいるのか,そのことが宣伝に使われて結果的に一般のマンション住民などに誤認を引き起こすことに加担する結果になっているが,社会的責任は感じていないのか,というツッコミをお願いしたい。
※20年経っても試験法の標準の提案も皆無で何も決められなかったということは,きちんと試験法を決めたら結果が出なくなるとか,効果があることを要求したら大部分の業者が脱落するので標準の決定を拒否したまま今に至っているのではないかという推測も成り立つ。つまり効果があるという主張がいつまでたっても体験談レベルで客観性はどこにもないということである。20年待ってこの状態なら,そろそろ,磁気活水器という製品に効果は期待できず,売り物にするレベルのものは出てこなかったと判断してもいいのではないか。
追記:JR東の回答
販促資料に登場する観察結果が,再提出でも同じ場所で観察したものが出てこなかったので,JR東の問い合わせ窓口から問い合わせてみた。およそ次の内容を伝えた。
「コスモス」が都内某マンションに売り込まれようとしている。
販促資料の一部に,以前,公取の排除命令の対象となった別会社の表示がほぼそのまま使われている。
東京駅の標石除去の実績の写真が,同じ配管を継続的に観察したものとはいえず,結果が捏造されている可能性がある。
磁気活水気の性能試験の標準が存在しないので,そもそも異なった製品の性能比較が不可能な商材である。
製造元のヤングトラストが出してきた水質検査の結果は,別会社の株式会社エッチアールディが分析会社に依頼したものを流用している。それで宣伝を行っている。
活水器を入れたのは事実か,それで結局どうなったのか?
これに対するJRの回答は次のようなものであった。
つまり売り込む側はJR東に入れて効果があったと主張し,JR東も効果があったことを認めたかのような印象を与えているが,JR東側は試行的に入れただけで定量評価はしていない,ということである。つまり,効果があったか無かったかについて結論が出せるような調査を,JR東は行っていないということになる。
定量的な分析で結果を確認していないのなら,効果があるから追加購入するための根拠も無いことになる。というか,効果の有無を定量できないのに追加で料金払ったりしたらJR東はタダのアホである。まさかそんなことはしていないんじゃないか。
この手の装置を売るときの常套手段に,官公庁や大学,有名な大企業に,試させて下さいなどといって,無料にして入れてもらうというのがある。予算措置をしなくて済むなら,と思ってうっかり受け入れると,後から,「〇〇で効果があった」という宣伝に使われてしまう。 JR東が効果も詳細も定量的な分析をしていないということは,販促資料の裏付けになるような試験にJR東は関わっていないということだろう。
販促資料のクオリティのレポートをJR東の技術者が見たら即突っ返して受け取らないだろうと思ったので,案の定というか予想の範囲の回答ではある。ただ,この先もずっと捏造まがいのデータとともに名前を出されるのは会社の信頼にも関わるので,対応していただきたいところである。
追記:対応はあったようです
この売り込みの件,問題のマンションに再度野火止製作所の社長を呼んで説明をしてもらったそうだが,その時に,JRや日赤からやめてくれという連絡があったとのこと。JRはネットで知る限りでは私ともう一人別の人が問い合わせていて,日赤に対しては私はなにもしていない(というか日赤ってコスモスじゃなくてNMRパイプテクターに浸食されてたのでは?)のだけど,誰かが連絡し,それぞれ,名前使うなのクレームは入れてくれたようである。
また,群馬大の論文を含む,販促資料を公開したことは道義的に問題があるといって野火止の社長が怒っていたらしい。
まず,販促資料について,売り込み先との間に秘密保持契約は無かったわけだから,売り込み先の誰かが資料を他に持っていって相談することは自由のはずである。さらに,それを受け取った私が,私の判断で公開してツッコミを入れたわけだから,クレームを言うなら私に直接言えば良いはずなんだけど,2023年7月26日までにはどこからもクレームは来ていない。
なお,消費者に対して,販売時のセールストークを録音禁止にしたり,渡した販促資料を他に見せるなと言ったり(時には回収したりして)秘匿しようとするのは,大抵の場合,悪徳商法をしている業者である。まっとうな商売をしているつもりなら,悪徳業者と間違われかねない言動は慎んだ方が良いだろう。
群馬大の論文については,論文として公開されたものなので,誰が読んで批判してもそれは自由である。でもって,1つ前のnote記事に書いた通り,私は群馬大の論文の内容そのものについては全く否定していないどころか,論文の内容が正しいという前提でしか話をしていない。論文の内容がコスモスの効果の根拠に使えないものになっている,と指摘しただけである。
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