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#ネタバレ 映画 「チルソクの夏」

「チルソクの夏」
2003年作品
カラオケ
2004/6/19 8:03 by 未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

評判が気になっていた作品だ。近所ではなかなか上映されなかったが、最近やっと観ることができた。

物語は日韓高校生の淡いラブ・ストーリーである。今流行の純愛ドラマと言ってもいいだろう。

ここでは主人公の少女(日本の高校生)の父に注目する。

彼は毎夜ギター片手に飲み屋を回る流しの歌手である。しかしカラオケが登場し始めると急速に仕事を失う。時代遅れだと言われ、仕事だけでなく彼自身が否定される様な哀しみを味わう。

その父には差別心が有る様で、娘が韓国の男子高校生と文通しているのをやめさせようとする。

一方、相手の男子高校生も母親から日本人との文通を邪魔される。

そのほか日本の歌を歌う事がまだ許されていなかった韓国の事情も紹介される。

それに仲良し四人組の少女の中にも失恋する人がいた。

どうやらモチーフとなるキーワードは「否定」らしい。それに、ほろ苦いがハッピーエンドになるので「肯定」もある。つまり、この映画は「否定されることの哀しみと、肯定されることの喜び」を描いているようだ。

でも、もう一つ隠しテーマではないけれど面白い発見があった。映画の冒頭で、韓国の男子高校生が少女に会いにきた時は外出禁止令の夜である。そして映画の終わりには、少女は夜遊びを先生に注意されている最中にもかかわらず、先生から学校から逃げ出して帰国する男子高校生に会いに行く。

この二つもモチーフである「否定」を描いているのかもしれないが、さらに、この様にも聞こえた。「ここ一番の時には国や先生の言うことなど聞いていてはいけない。大儀の前では個人的な特殊事情などいちいち考慮される事は少ないから」と。

映画は妙に奇をてらわず背伸びせず、木綿の様な素朴な味わいがある。そのつもりで観ればラストの「なごり雪」の頃には、たぶんハンカチが必要になるだろ。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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