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静物画と家とギャルと自然

白白庵での大槻香奈個展『死んじゃいけない星』が終了して間髪入れず、アートコンプレックスセンター(以下ACT)で大槻さんによるキュレーション展が始まった。
五つの部屋で構成されるACTのうち三部屋での開催。
それぞれ『静物画といっしょ』『こわれてない家』『ギャルと自然』、総勢15名参加の大規模グループ展。
『死んじゃいけない星』というタイトルからのこの流れ。勢いが良すぎて大笑いしてしまった。

『日本現代うつわ論』でお世話になっている方々も多数参加、いろんなところで作品を拝見したり、SNS上でずっと気になっていた皆さんですので初日からお伺いした。(そもそもこの展覧会の会期中の僕の休みが今日しかなかった)

https://actgallery.theshop.jp/


出展作品はACTのオンラインショップで確認できるし購入も可能、とはいえ、この展示は確実に会場で体験すべきものだった。
それぞれの部屋のテーマ「静物画」「家」「ギャルと自然」(ギャルと自然は何回書いてもわけわかんないな)が有機的に絡み合う構成。

全体像からの感想をざっくりと。

『静物画といっしょ』
それぞれ全然「静」物ではなかった。
物に対する作家の眼差しがダイレクトに現れるのが静物画だとするならば、その物たちに対する動的な視線だったり、奇妙なアングルだったり、そこに向けられた感情(あるいはそれに対する距離感)だったり。「静物画」という概念をアブストラクトに再構成してみたり。各作家の眼差しとたくさんの物が交差するんだから全然「静」のわけもなく。すごい導入。
画面として大きな作品はなくとも、賑やかでかつ画面の向こう側に繋がる奥行き、その物が置かれている不思議な空間のことも意識させられる。

『壊れてない家』
物が置かれるには家が必要、ということで器のレイヤーが外側に拡張されるわけだけれども、「壊れてない」が大事な視点だな、と。
各作家の画面上にはそれぞれの見つめる世界がある。家というよりも世界があって、その画面の向こう側にはその世界の住人がいる。世界観があるのとは違って、実際に世界がある。絵画というフレームが、あるいは作者の眼差しが「壊れてない家」としてその住人たちを存在させていて、そこにコミュニケーションの可能性が多様に示されていた。

『ギャルと自然』
とてつもなくエネルギッシュな空間。この三部屋で一番広く、中心に置かれた稀晶石オブジェが「ギャル」と「自然」のシンボルのようにそびえる。
静物から家、そしてこの部屋に足を運ぶことで開放感とカタルシスに包まれる。ギャル的な精神的自由と自然的な在り方への精神と眼差しへの放流、作品と描かれたモチーフの強靭さに、よるべなくとも強く生きるエネルギーみたいな何かをガンガンぶつけられる。笑ってしまうくらいに心地よくて元気が出る。
そこで得たエネルギーを抱いて『静物画』と一緒に戻ることで、この世界に在る物たちへの愛情をさらに強く感じながら作品と向き合うことが可能となる。そんな風に何周もできてしまう。

『死んじゃいけない星』の上には『ギャルと自然』が広がっていて、そこには『こわれてない家』があり、その家には『静物」として描かれる大切なものやそこに生きる人々の眼差しがある、全部繋がっているんだな、と思い耽ってしまった。

この展覧会はACTという空間そのものを活かした展示構成となっていて、体験として非常に楽しめた。同じフロアで横並びになっている部屋だからこその感覚だった。
例えば白白庵だと三階建の縦方向の空間構成となるため、テーマ設定をするとそこにある種の天地上下的な感覚がどうしても生じてしまう。
横並びの空間だからこそ、視点の切り替えやあるいはフォルダの切り替えのような並行移動的な感覚でそれぞれの展示を行き来できるのはこの空間の強みだな、と感じた。

本当は各作家全員の感想を書きたいくらいだけれどもそれをやっていると本当に終わらないのでぜひ会場で。

https://www.gallerycomplex.com/

会期が短いのが勿体無い。
お時間のある方ぜひ。



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