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雑記 23 / 音楽の聴き方、サブスク、長い前置き

このところ、サブスクで新譜を追いかけるのをやめた。「これぞ」という音楽を丁寧に聴き込むようにしている。Apple Musicのサジェストは無限に新しい音楽を提示してくれて、遥か遠くの国の、ほとんど誰にも聞かれていないような音楽も教えてくれるし、月に2000円も払わずに過去の名盤から最新のインディーミュージックまで聴き放題だなんて、岐阜の片隅で近所のTSUTAYAとたまに名古屋のタワレコに入荷する輸入盤に頼って音楽を聴いていた頃からすると夢のようだ。

昔々は限られた資金から手に入れた音源をとても大事に聴いていた。少ないお小遣いをやりくりして手に入れたCDなんだから、「全然良くねえな」って思っても気にいるまで徹底的に聴き込んで良さを見つけて元を取らねば、と思うことも多々あった。名盤と言われているからには何か絶対にすごいところがあるはず。そうやってノイバウテンはかっこいいのだと自分に教え込んだのだった。

などと書いてみて思い出したけれども、僕が中高生だった2000年代前半はMyspaceで各国のインディー音楽に出会っていた。平和な時代だった。YouTubeで見られる音楽動画も少なくて、Napstarもあったし、インターネットの可能性と悪い側面が表出し始めた時代でもあった。「若い奴らですげえのがいる!」とArctic Monkeysがネットで話題になって、アルバムが出る前に試聴音源を落として聴いたことを今でも覚えている。

音楽を好きでいると知らないうちにお金がなくなる。大学生の頃はバンドもやっていたのでとにかくお金がなく、限られたお金でいかに多くの音楽を聴くのか、そしてどうやって新しくて誰もその魅力に気づいていないような音楽に出会うのか、貪欲に過ごしてきた。

iTunesの時代からAppleに全ての音楽的嗜好を把握されているので、当然Apple Musicはその時々の僕の興味に合わせて適切な新譜を、メジャーどころから何の情報も出てこないような新人まで、毎週聴ききれない程に提案してくれる。昨年の前半くらいまではそれを片っ端から聴いていた。このシステムを駆使して新しいものを聴き続けないと、何か世界に取り残されていくような感覚があった。カルチャー全体に対する音楽のスピードは比較的速い。あるいはこのマッシブな情報量を受け入れ続けることで、この先の未来のスタンダートとなるような感覚が芽生えてくるのでは、という思いもあった。何よりあらゆる新譜を聴き放題というのが嬉しくて聴き続けていた。

けれどある日疲れてしまった。

やってるうちにディグる楽しみの片隅に義務感が湧くようになり、純粋に音楽を楽しんでいる時間が少なくなってしまっていた。
情報の摂取が目的となり、音楽を聴く喜びを噛み締める機会も減っていた。

それで趣向を変えて今までノーマークだったクラシック音楽を体系的に聴きながら、音楽の楽しみ方を別の方向へとシフトさせたのが2023年後半だった。

そんな中で、これは別格と心の底から楽しみにしていたのがworld's end girlfriend "Resistance & The Blessing"だった。
なんとありがたいことに『日本現代うつわ論2』ではwegインタビューを掲載させてもらったり(信じられない)、暗闇爆音強制視聴会を経て年単位で楽しみにしていた。当然めちゃくちゃ聴き込んだ。そして先日の『抵抗と祝福の夜』。この時代にこんな遠回りなやり方で、ヴァイナルも購入してじっくりと音楽を楽しんで、そして深く体験できるなんてすごいことだ。
前置きが長くなってしまって、何がどうすごいのか、大事な話に辿り着けなかった。続きはまた別の日に書く。

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