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日本維新の会とロシアの関係

ウクライナ危機を受けて、各国においてロシアとの付き合い方は外交・安全保障上の最重要テーマとなっています。本稿では、日本維新の会のウクライナ危機発生後からのロシア外交に関する公式見解をまとめました。

1 日本維新の会の公式見解

1.ロシアのウクライナ軍事侵攻に対するコメント【日本維新の会代表声明/令和4年2月24日】

ロシアのウクライナ侵攻が始まった直後に、維新としては「一方的な独立承認と、これに続く軍事侵攻は、ウクライナの国家主権と領土の一体性等を侵害する露骨な侵略行為である」と明確に断定しました。

その上で、ロシアの暴挙は、欧州地域ひいては世界の平和と安定を揺るがし、ウクライナ国内に甚大な人的被害をもたらしかねない事に関し、深い憂慮を示しました。

そして、国際法や自制を求める各国の外交努力をかえりみず、力による現状変更を重ねるロシアの不法な行動は断じて容認できないとし、ロシアのプーチン大統領に対しては、即時に軍事侵攻を停止し、ウクライナから撤退するよう強く求めました。

2.ウクライナを巡る憂慮すべき状況の改善を求める決議【衆議院決議/令和4年2月8日】

日本維新の会は、いかなる国であろうとも、力による現状変更は断じて容認できない、というロシアに対する強い非難を含む衆議院の決議に、全議員一致で賛成しました。

3.ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案【衆議院決議/令和4年3月1日】

続く衆議院決議にも、日本維新の会は全議員一致で賛成しました。ここでは、ロシアの行動は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反であることが明記されました。

また、力による一方的な現状変更は断じて認められないことに加え、この事態は、欧州にとどまらず、日本が位置するアジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがしかねない極めて深刻な事態であることを確認しています。

その上で、日本の衆議院として、ロシア軍による侵略を最も強い言葉で非難する。そして、ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求めました。

4.ロシアによるウクライナ侵略に関する緊急提言【日本維新の会/令和4年3月3日】

上記のとおり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国家主権と領土の一体性を侵害する露骨な侵略行為であり、力による現状変更を重ねるロシアの不法行為は断じて容認できない、という認識を明確にした上で、具体的に日本が採るべき政策について提言を行いました。

5.国家安全保障戦略等の改定に対する提言書【日本維新の会/令和4年12月7日】

ウクライナ危機だけではなく、それを受けて今後の日本の外交・安全保障体制の抜本的な見直しについて、国家安全保障戦略等のいわゆる三文書改定の議論に合わせて提言を行い、国会とは別に岸田総理との意見交換も行いました。

6.ロシアによるウクライナ侵略から1年を迎えて【日本維新の会 代表声明/令和5年2月24日】

ウクライナ侵略から1年を迎えた節目には、改めて代表声明を発出し、ロシアは国際法で禁じられた市民や生活インフラを標的とした攻撃を重ねており、和平はおろか停戦への道筋すら見えてこない状況について深い憂慮を示しました。

その上で、武力によって国家の主権を一方的に侵害する行為は断じて容認できないことを改めて確認し、プーチン大統領に対して、国際社会の規範を順守するとともに、即時に軍事侵攻を停止し、ウクライナから撤退するよう強く求めました。

2 ロシアを非難する理由

以上の通り、日本維新の会はウクライナ危機が始まった当初から、国際社会及び日本政府の方針と協調しながら、ロシアに対する厳しい立場をとり続けてきました。

一方、こうした外交姿勢に対し、「ロシアを非難し続けていても戦争は終わらない。対話をすべきではないか。」というご意見もあります。

戦争が続き、ウクライナで無辜の生命が奪われ続けている状況下、停戦が第一優先課題であることは誰の目にも明らかです。

しかし、問題は、ロシアは国際法違反による軍事力で一方的な殺戮を行った上、主権国家の領土を奪ってしまっており、その状態を国際社会が認知する以外にロシアが停戦に応じないという現状にあります。

ここで国際社会が妥協すれば、第二次世界大戦以降築き上げてきた世界の平和を維持する国際秩序は完全に崩壊します。日本への影響としては、中国の台湾や尖閣諸島への軍事侵攻や北朝鮮の周辺国の威嚇が許され得る国際環境ができてしまいます。

一方、これまでの国際法違反の数々の残虐行為を謝罪し、賠償し、その上で奪った領土を手放して停戦せよと言っても、ロシアは聞く耳をもちません。今のステージでは話し合っても無駄であると、交渉当事者の国々が判断しています。

現状、国際社会が結束してウクライナを支援し、ロシアを非難・制裁し続けることが、ロシア側の態度を変えさせる唯一の手段といえます。話し合いを否定しているわけではなく、合理的に考えて、苦渋の最善策を採り続けているだけです。

なお、外交というのは断絶させたり復活させたりすることも含めて交渉の一環です。常にこれまでと同じ外交関係を保っておくのが正解というわけでもありません。

「ロシアを非難すると北方領土が返ってこない」といった主張もありますが、戦後何十年も進展しておらず、今まで通りの外交交渉の中で返ってくる見込みは薄いと言わざるを得ません。

今回のウクライナ危機を受け、一度断絶に近い状態となり、再度復活する際の象徴的な交渉材料と考えるくらいの強かさが必要ではないかと思います。

3 よくある指摘への回答

ここまで党の立場を説明しても、「そうじゃない、鈴木宗男議員が親ロ的発言を問題視しているんだ!それを放置する維新が問題なんだ!」という個別の議員の件で厳しいご意見をいただくことがあります。

これについては国会議員団副代表も務める議員の個人的見解であり、私自身は党を代表して回答や対処をする立場にはありません。しかし、国際局長や外交部会長として政策上の関係や責任はありますので、私見とこれまでの経緯を明らかにしておきたいと思います。

まず、一般的に同じ政党に所属している議員は、同じような政策的志向を持っています。しかし、あらゆる個別の政策において、全ての議員が同じ意見になる事は稀です。党の方針と議員の意見が異なるという事は他の政策テーマでもあり得ることです。

他方、党内論議を経て、最終的に党の方針としてまとまれば、そこには党議拘束もかけられますし、外で別の意見を主張し続けるのは反党行為と見做されます。

その前提でまず申し上げたいのは、個々の所属議員の意見がどうあれ、日本維新の会としてのロシア外交に関する基本方針は明確であり、最初から全く変わっていないということです。

その上で、所属議員による党方針と異なる対外発信について、これまで放置してきたわけでもありません。

私自身で言えば、1)政務調査会外交部会、2)代表・幹事長を入れた個別協議、3)役員会と計3回、党の方針を明確にした上、ご本人と直接議論させていただきました。結果的に共通理解には至れませんでしたが、お互いに冷静な話し合いを続けることが可能であれば、引き続き何度でも議論をしたいと考えています。

第1回目の政務調査会外交部会での協議(2022年3月3日)については、以下のオープン政調のYoutubeでアーカイブをご覧いただけます。

2回目、3回目以降はクローズだったので記録はなく、また、激論になってしまい、外部公開できるようなものにもなりませんでした。1回目のYoutube動画をご覧いただければ、更にヒートアップするとどんな議論になるか、ある程度ご想像いただけるのではないかと思います。

なお、ロシアの人脈を活かして要人に会い、停戦するよう説得工作を行えるのであれば、政党・議員外交を通じてロシアにアプローチする事も一定の利があると思っています。しかし、現状、その見込みは全くないため、積極的に党の方針を変える状況にないと判断しています。

それを踏まえて、このタイミングでのロシアの渡航についても、反対の立場を表明させていただきました。

こうした党内のやりとりは、全てを公の場で詳らかにはできません。しかし、ある程度は見せていかないと、「維新は親露である」といった根も葉もない陰謀論や、「維新は地域政党で外交は素人なので政権を任せられない」といった偏見を助長してしまいます。支持者・関係者の方々も不安に思われるため、可能な範囲で発信することにしています。

外から見ていると分かりにくい部分もあるかと思いますが、日本維新の会の基本方針はご理解いただいた上、引き続き正しい方向に向かうよう、厳しいご意見もいただけたらと思います。

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