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幻の歌人

『短歌ムック ねむらない樹 vol.3』 (編集)大森静佳 , 佐藤弓生 , 染野太朗 , 寺井龍哉, 東直子, 田島安江

巻頭エッセイ
東直子「私は……」

特集1
映画と短歌

対談
木下龍也×町屋良平
「映画だからできること 短歌と小説にしかできないこと」

尾崎まゆみ×門脇篤史
「歌人が映画を観に行く」

アンケート
歌人の好きな映画
浅野大輝
牛尾今日子
田中槐
林和清
藤原龍一郎
フラワーしげる
石井辰彦
奥田亡羊
佐々木遥
濱松哲朗
盛田志保子
春日いづみ

座談会
杉田協士×矢田部吉彦×東直子×寺井龍哉
「映画『ひかりの歌』をめぐって」

論考
寺井龍哉
「映画の中の短歌、その感動」

特集2
短歌の言葉と出会ったとき

高野公彦「短歌の様式について」
永田紅「比喩、植物名」
寺井奈緒美「笹井さん」
黒瀬珂瀾「教室に短歌を置くということ」
梅内美華子「メモの言葉を超えるとき」
天野慶「現代短歌をおみやげに」
岩倉文也「空白でまた逢いましょう」
小津夜景「母語と外国語」
山川創「注ぎ込む」
ユキノ進「寺山修司から始まる長い旅」
白井健康「短歌の言葉と出会ったとき」

作品

尼崎武「見えない虹の話」
今橋愛「なにもせざりき」
魚村晋太郎「破船」
内山晶太「目のごみ」
小佐野彈「甘い火」
紀野恵「還らむとすも」
國森晴野「髪を切る」
駒田晶子「平成後半、ごく個人的な。」
鈴木加成太「浜風とオカリナ」
田口綾子「輪」
中山俊一「誕生日」
西村曜「灯々」
初谷むい「わたもふ」
花山多佳子「一日」
屋良健一郎「しとりとてん」

柴田葵「さよなら」
阿波野巧也「シャープ」
井村拓哉「大丈夫」
谷川由里子「愛は凡なり」
浪江まき子「運動」
八重樫拓也「膝に砂利」

コラム
川上まなみ「せせらぎ街道」
惟任將彥「さびしかつた」
飯田彩乃「ぐ」
貝澤駿一「ワールドカップあれこれ」
涌田悠「短歌は踊る」
山川藍「ひだる神とジム」
小黒世茂「照葉樹の森から」
川谷ふじの「短歌の効能」

特集「映画と短歌」は歌人が映画を観に行って感想を言ってもそれほど面白いとは思わない。むしろそれを短歌にして並べるとか。感想のあとに短歌というのはあったのだが。そういう歌をもっと紹介して欲しかった。

特集としては短歌映画『ひかりの歌』の宣伝が目的なのかなと思った。『ひかりの歌』は動画サイトで探したのだが観られないので内容はわからない。ちょっとした短歌映画ブームなのか?短歌というよりカルタ映画として、『ちはやふる』があったし、東直子春原さんのリコーダーも最近公開された。映画としては『ちはやふる』は別にして短歌好きじゃないと厳しいかもしれない。

そんなことで過去の短歌映画が紹介されたが、寺山修司『田園に死す』は面白かった。あの映画を観て寺山修司の短歌に惹かれたという人も多いと思う。私もその一人だった。そのぐらいのインパクトのある短歌映画はないものだろうか?

短歌映画の紹介で吉永小百合主演の『華の乱』を観た。この映画は吉永小百合が与謝野晶子を演じているのだ。寅さんシリーズで「サラダ記念日」篇があるとか。寅さんシリーズは全部観たけど印象は薄い。その頃は短歌に興味もなかったから。


特集「短歌の言葉と出会ったとき」
むしろこっちの特集の方が初心者には面白い。歌人(歌人でない人もいるが)どのへんから短歌にのめり込んだのかという話は興味深いのだ。それぞれの歌人の出自が伺えて興味深かい。

高野公彦「短歌の様式について」は現代短歌の変遷について、啄木~茂吉・雅子~塚本邦雄と紹介している。

寺井奈緒美「笹井さん」は自身の言葉と思い出と笹井宏之の短歌との出会いを綴った好エッセイ。

土岐友浩「学生短歌からはじまった③」は大学の歌会で出会った友人のエピソード。無名の人なんだが、その短歌になぜか惹かれるところがある。觜本(はしもと)なつめという名前だけでも魅力的だ。幻の歌人みたいだな。

いまいちど声をあたえよのどもとに架空の鳥をよびもどすとき  觜本なつめ

風消えぬ与謝野晶子の恋歌を女が女を恋ううたとして  觜本なつめ

その論の器用大胆かつ不敵名もなきようだ異端か果ては  觜本なつめ

『短歌ムック ねむらない樹 vol.3』


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