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住民感情っていうやつ。

福田村事件(2023年/日本)【監督】森達也
【キャスト】井浦新,田中麗奈,永山瑛太,東出昌大,コムアイ, 松浦祐也,向里祐香,杉田雷麟,カトウシンスケ,木竜麻生,ピエール瀧,水道橋博士,豊原功補,柄本明

1923年9月1日11時58分、関東大地震が発生した。
そのわずか5日後の9月6日のこと。千葉県東葛飾郡福田村に住む自警団を含む100人以上の村人たちにより、利根川沿いで香川から訪れた薬売りの行商団15人の内、幼児や妊婦を含む9人が殺された。行商団は、讃岐弁で話していたことで朝鮮人と疑われ殺害されたのだ。逮捕されたのは自警団員8人。逮捕者は実刑になったものの、大正天皇の死去に関連する恩赦ですぐに釈放された…。これが100年の間、歴史の闇に葬られていた『福田村事件』だ。行き交う情報に惑わされ生存への不安や恐怖に煽られたとき、集団真理は加速し、群衆は暴走する。これは単なる過去の事件では終われない、今を生きる私たちの物語。

まず映画館がいつもになく混んでいた。一時間前に行ったのにロビーの椅子に座れなかった。いつもはひとり寂しくいるような映画館なのに。次々と客が入ってくるが補助席しかないということだった(わいはネット予約していた)。TVでもやったということだからいい宣伝になったのか。近所でもやっていたのだが、そっちもソールドアウトとネットに出ていた。ミニシアターではめったにないことだ。

映画は千葉県の「福田村」で関東大震災後に村の自警団らに香川の薬売りの集団が朝鮮人と間違わられて惨殺されたという事件。ほぼ事実だと思われるが不倫ドラマの部分はいらなかったかな?そこはちょっと退屈した。隣もいびきかいていたし。

ラストの30分ぐらいの展開がテンポ良く画面に釘付けになった。虐殺のシーンだけど。ちょうど、角田房子『甘粕大尉』を読んでいるので大杉栄事件と重なるところがある。大杉栄のような人物も出てきた。流言は関東大震災の混乱と総理大臣もまだ就任してない頃で、それで軍部がデマを流して混乱させたというような。政府発表も最初は鮮人に注意というようなことを言っていたのだ。新聞社も政府のアナウンスを流すだけで事実を見ようとはしなかった。実際に最悪の事態になってから政府は抑え込もとするのだが、すでに一度住民感情に火がついてしまうと押さえられるものでもなかった。

今も新聞報道を鵜呑みにする報道への危機感を持っているのだと思う。女性ジャーナリストが事実を明らかにしようとするのだが、上から指示で止められていた。今もそういうニュースは入ってくるし、明らかに日本の報道はおかしいと海外ニュースを見ているとわかる。

そしてデマも作られることがあるということだ。例えば軍部が実権を握るためにというのは、『甘粕大尉』にも書いてあったが憲兵隊の陸軍が企てたということだった。それに甘粕大尉も利用されたということだが、国士とか天皇主義者は個人より国の方を見るから、明らかに憲兵隊のリーダーはそんな感じだった。村長がデモクラシー主義者でも一度住民感情に火がついたら止められない。われわれ一人一人の判断力がないとこういうことは起きる可能性は大いにありうるだろう。例えば国民の半分以上は選挙に行かないのだから他人任せになるのだった。そんなときに村や国家を守る言い出す政治家のなんと多いいことか。事実そういう輩が当選しているのだ。だからそういう危機感を持った人が映画を見にくるのだが、そういう人は大杉栄が殺されたときも陸軍に対する非難とか新聞にでたそうなのだが、すでに住民意識は主義者(国家転覆者みたいな)という言葉当たり前になっていたのだ。鮮人もそうだけど、そういう差別用語が一般的に流通してしまうといくら異議(村長や大杉栄のような人はいたのだ)を唱えようとも住民感情は差別的な言説が蔓延しているのである。そういう恐ろしさを少しでもこの映画を見て体験してもらいたい。

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