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8 オクラホマミキサー

 多分この辺りだなと思いながら、まっすぐそこには向かわずに、周りをうろうろしてから、核心を最後に残すというようなことがないだろうか?私にはその癖がある。例えば釣りをしているとき、いかにも獲物がいそうな淵は後回しにする。可能性の低そうなところから試していき、最後にそこに向かう。いそうなところから当たればよさそうなものだが、そうしないのは、単純に楽しみを最後に残しておきたいからなのだろうか?それだけではない気もするが、ともかくそうした癖は時に思わぬ喜悲劇を招く。

 クラス会は20年ぶりだった。当時憎からず思っていた彼女も出席していて、直ぐにでも話をしたかったけれど、先ずは男同士の話。何しろ20年ぶりだ。ひとしきり近況報告などをしながらグラスを傾け、席がばらけてきた頃を見計らって女性陣の席へ。その時も、まっすぐ彼女のところへは行けない。それでは、あまりにも見え見えで現金すぎる。自分に言い訳しながら座ったのは、よりによって彼女から一番遠くの席。そこからまた一人一人、近況報告をしながら距離を縮めていく。一人一人の話に意外な展開がある。当然だ、何しろ20年ぶりなのだから。時間がかかる…。

 ようやくたどり着いた彼女の隣。                 「やあしばらく、元気そうだね」                  「やっと来たわね」                          これからゆっくり話をしようと腰を下ろしたその瞬間、会場に響き渡る幹事の一声。                             「え~、宴もタケナワではございますが~」                エっ!?

 思い出した。あの頃、オクラホマミキサーはいつも、次はいよいよ彼女というその一人前のところで終わっていたんだっけ。


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