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3 休講もしくは私(たち)の位置

 学生の頃、私が属していた学科は比較的メジャーで(進級が楽で)、一学年25人位の同級生がいた。彼らは、講義への態度により大きく二つに分けることができた。真面目にゼミに取り組み、主に院を目指すグル-プと、全く学校に顔を出さないグル-プの二つだ。
 そして多分、私はそのどちらにも属していなかった。前者の会話と付き合いは、なんとなく英会話や演劇の練習のように気恥ずかしく、団体行動の苦手な私向きではなかったし、かといって、雀荘に入り浸る忍耐力も他人のノートを解読する趣味も、私は持ち合わせていなかった。
 それはたしか、期の最初か最後のゼミだったと思う。特に深い考えもなく、私は教室に顔を出した。そこにはもう一人、私と同じようなスタンスを取るTがいるだけだった。一般的なものかどうかわからないが、私たちのル-ルでは、30分たっても教授が現れれない場合は休講とみなしてかまわないということになっていたので、とりあえず、二人は休講成立までの時間を教室で過ごした。
 結局、私たちの他には誰も教室に現れなかった。真面目グル-プには休講の連絡が廻り、残りの麻雀組はハナから来るはずもなかったからだ。
「俺たちの学科での位置を象徴する出来事だな」Tが言った。
「確かに」

 私たちは、生協食堂のビ-ルで乾杯をして別れた。

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