猫の銀河鉄道
その年老いた猫は
夕方から家の屋根の上にのぼり
ずっと空を見ていた
屋根の下ではいつものように
夕ごはんをあげようと
仲のいい少年が
その猫を探し回っていたけれど
一番星が顔を出し
街に灯りがまたたきだし
いつしか空には
満天の星が輝いて
少年は猫を探すのをあきらめ
家の中に入った
やがて少年が眠りにつく頃
遠い銀河のかなたから
とうめいな夜行列車がやってきて
列車は猫のいる屋根へと
静かに停車した
その晩からもう誰も
その猫の姿を見ることはなかった
ただその夜の
少年の夢の中でだけ
銀河へと旅立ってゆく
夜行列車の汽笛の音が
かすかに
かすかに響いていた
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